『スカッとジャパン』を支える「ムカッと」と「スカッと」の2つのピーク

『スカッとジャパン』を支える「ムカッと」と「スカッと」の2つのピーク

「緊張と緩和」理論で考察


かつてTBSが『水戸黄門』を放送していた月曜20時の枠で、「自称!ポスト水戸黄門」を掲げ『痛快TV スカッとジャパン』が始まったのは2014年秋のこと。「ムカッとする出来事を撃退した“スカッと”する体験談」を再現したショートドラマ、という体裁であるが、その神髄は「キャラコント」にある。





■悪役キャラは「悪」を全うする





部下にネチネチと嫌みを繰り返すイヤミ課長(木下ほうか)、関西弁のドケチなおばはん(濱田マリ)、無茶なクレームをつけるダメ男(津田寛治)、ぶりっ子で男子に媚びる女子大生(中村静香)……。



『スカッとジャパン』には番組名物の「悪役キャラ」がたくさん存在する。番組初回から登場しているイヤミ課長から人気に火が付き、以降次々と悪役キャラのシリーズを増やし続けてきた。福澤朗や蛭子能収など役者以外の芸能人も起用して、クセのある悪役を作り続けている。最近では、特番で悪役キャラ同士がコラボレーションする遊びも増えてきた。



しかし、作られているのは「キャラ単体」であって「ストーリー」ではない。ショートドラマ自体は単発作品であり、シリーズ化といっても話が続いているわけではないのだ。「あの悪役にはこんな一面が」「あの悪役の知られざるプラーベート」などのサイドストーリーは“スカッと”するには邪魔でしかない。



悪役は「悪」というレッテルを貼られた「役」として、その役割を全うするよう作られている。悪い顔で悪さをして、撃退されてうろたえる。2つのピークだけを過剰に見せることで、視聴者は心置きなく“スカッと”することができる。


■イケメンを過剰に作り込む福山雅治


『スカッとジャパン』には悪役とは別に「善人」側のキャラもいる。マナー違反をぴしゃりと注意するマダム(ジュディオング)、目をひんむいて威嚇するチンピラ(竹内力)、機転を利かせて悪役を撃退するおばあさん(笹野高史)など、こちらもあくまで「善」サイドに特化したキャラたちだ。



通りすがりのイケメンがスマートにトラブルを収める「神対応スカッと」に至っては、福山雅治がビジネスマン“宇賀神圭吾”として過去に2度出演したことがある。2017年9月11日放送では、階段を転がり落ちるキャリーバッグを滑り込んで止め、商品名を忘れた女性店員の耳元で「パニーニ」と囁き、『ガリレオ』を彷彿とさせる冷静沈着な立ち振る舞いで神対応をしてみせた。完全にイケメンを「わかっていて」作りこんでいた。



ただでさえイケメン扱いの福山雅治が、さらに「イケメン」を劇画化した姿での登場である。福山雅治自身もノリノリで撮影していたらしい。悪役も善人役も、通常の芝居よりもキャラに特化した過剰な演技は楽しいのかもしれない。


■ムカッとからスカッとに通じる「緊張と緩和」





『スカッとジャパン』がキャラコントに通じるのは、「ムカッと」から「スカッと」に至る構成にもある。かつて二代目桂枝雀は、笑いとは「緊張と緩和」だと説いた。不安や戸惑い=緊張が、解決や理解によって緩和する、そこに笑いが生まれるという。偉い人(緊張)がコケる(緩和)という場面や、ボケが訳の分からないことを言い(緊張)ツッコミがそれを正す(緩和)という構造など、笑いが生まれる多くの状況を説明できる理論だ。年末に「笑ってはいけない」と言われると笑ってしまうのも「緊張と緩和」だろう。



『スカッとジャパン』は、悪役が悪事を散々繰り返し、改心の一撃で撃退される。悪事をはたらく「ムカッと=緊張」の状態があり、撃退される「スカッと=緩和」がある。「ムカッと」と「スカッと」の2つのピークが高いほど、より面白い展開となる。キャラが特化されたショートドラマは、ムカッとからスカッとの展開にも笑いの源があり、キャラコントとして輝きを増すのだ。



一方、「緊張と緩和」理論では、「緊張」のピークが高くても、それに見合う「緩和」が無ければ、消化不良となって笑いは生まれないとされる。これは『スカッとジャパン』も同様で、とてもムカつく出来事なのに反撃が足りないと消化不良になってしまう。



「反撃が足りない」と感じるかどうかは、受け手の寛容さに委ねられている部分もある。「これくらいで勘弁してやろう」と手打ちにするのか、「まだまだ制裁が足りない」と憤るのか。SNSでの炎上騒動など、過剰な怒りを目にする機会も増えたこの頃。『スカッとジャパン』で笑えるかどうかは、己の寛容さを図るバロメーターになるのかもしれない。


文=井上マサキ


■<番組情報>


『痛快TV スカッとジャパン』


<放送>



毎週月曜19時57分〜


<出演>



【MC】内村光良


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