美術デザイナーが語る「コーポラティブハウス」セットのヒミツ

美術デザイナーが語る「コーポラティブハウス」セットのヒミツ

『隣の家族は青く見える』の美術デザイン


■美術デザイナー・宮川卓也さんインタビュー





ドラマ『隣の家族は青く見える』の主要舞台となっているのは、入居希望者が集まり、自分たちで土地の取得から、設計者、建設会社の手配まで行う集合住宅「コーポラティブハウス」。ドラマの中では、妊活中の奈々(深田恭子さん)&大器(松山ケンイチさん)の五十嵐家、結婚式を控えた川村亮司(平山浩行さん)&杉崎ちひろ(高橋メアリージュンさん)のカップル、自ら設計も手がけた建築士の広瀬渉(眞島秀和さん)と彼の恋人・青木朔(北村匠海さん)のカップル、真一郎(野間口徹さん)と深雪(真飛聖さん)がふたりの娘と住む小宮山家の4家族が話し合いを重ねて建設したコーポラティブハウスに住んでいます。このスタジオセットを手がけた美術デザイナーの宮川卓也さんに、今回の美術セットについてお話をうかがいました。





――コーポラティブハウスのセットをデザインするにあたって、どういうリサーチをされたのですか?また、その過程で感じた、コーポラティブハウスのメリット・デメリットがあれば教えてください。



コーポラティブハウスをメインでやられている住宅会社が何社かありまして、そこを監督たち演出サイドと一緒に回って下見をしました。実際に建てられたものも見学しています。その中で感じたメリットは、やっぱり自分たちで空間自体を考えられるということですね。床材から壁紙だけでなく、どこに窓をつけるか?といった構造部分まで自由に考えることができる、という部分ですね。デメリットであり、メリットでもあると思ったのは……マンションに住んでいると隣に誰が住んでいるのかわからないこともありますけど、ゼロからみんなで話し合うために集まって話をする機会も多いということで安心感がある。そういう過程で、連帯感が生まれるそうなんです。逆に、それはデメリットにもなり得る部分で、ドラマの中で言えば深雪さんのような人がいるとトラブルも起きたりするわけで(笑)。ただ、コーポラティブハウスをやられている会社の方によると、普通のマンションのように距離感を保って住むこともできるようなので、その辺は住む人次第なのかな、と思いました。





―テレビドラマのセットとしてはかなりの大きさですね。



このセットで他のドラマと変わっているのはひとつの塊になっているところなんです。いま、そういうセットってほとんどないんですね。(4戸)全部を合体させているので、撮りにくくはなっているんですけど、その代わりに一連で撮れるんです。例えば、共有スペースにいるところを窓から見たりだとか、そこから出たり入ったりだとか、何だったらカメラがそれを追いかけていって、玄関から部屋の中までという動きも撮れるんです。それがこのセットの強みかもしれないですね。役者さんたちも、位置関係がはっきりわかりやすいと思うんです。目線を送ったり指をさしたりするときでもすぐにわかるので。





――美術デザインの視点から、各部屋のおすすめポイントを教えてください。



まず、全体的なところで心がけていたのは、それぞれのキャラクターが生活してきたバックボーンのようなものがあるので、それを想像して広げて、部屋の中に配置していくという部分です。五十嵐家は……いまの職業が大きな部分を占めていると思うので、ダイビングスクールで働いている奈々さんと、おもちゃ会社に勤めている遊び心がある大器さんが住んでいるのはどういうところだろう、というところから始めました。そういうものを映るところに置こうと思ったんですけど、個人的に好きなところはすべり台の横にある棚です。そこに寄せ書きがあったり、大器さんが作ったお気に入りのおもちゃがあったりして。ふたりとも他人から好かれている人なんだな、ということを表現したのがこだわりポイントのひとつですね。



――他の3戸に関してはいかがでしょうか?



小宮山家に関しては、周りの建物がおしゃれな感じで攻めている……まあ、五十嵐家はおしゃれではないんですけど、ふたりの趣味を合わせたら品が良い感じになりましたし、川村家はド直球におしゃれな感じ、広瀬家は建築士ということでさらにおしゃれな感じになっているんですけど、小宮山家に関しては、ベースとしての建物はマンションっぽい感じに作りまして、そこにインスタ映えしそうなものなど、虚栄心が分かり易く感じられるようにしています。小宮山家に飾られている写真のスペースは、監督が凄くこだわったもので、よく海外のドラマで(写真を見せて)子どものころからの成長した姿を追っていくようなシーンがあるじゃないですか。そういう狙いですね。



川村家に関しては、見たまんまの感じなんですけど、ふたりだけで生活する、ということで、裏テーマとしてはちょっとエロティックな感じにしています。奥の方にダブルベッドが見えたり……。よく見ないとわからないかもしれませんが、ベッドの脇にガラスのL字部分があるんですけど、あれはシャワールームになっているんです。海外のホテルにはよくあるんですけど、ちょっとシルエットが見えたりして。色も、全体を深い色に落としてシックな雰囲気の中で話し合ったりするというのも狙ってやっています。

広瀬家は、構造が結構変わっているんですけど、段差を多めにつけていて、アイランドキッチンがあって……。複雑な作りなんですけど住みやすい、というのを建築士が自分で作った、というイメージです。川村家との違いを出すために、グレートーンで全部まとめています。僕もデザイナーなので実際にやっているんですけど、棚を多めに配置して、そこにデザイン本などを並べています。











――一番苦労したことは?



お金ですね(笑)。規模が大きいので、なるべくお金をかけないように作らなければいけなかったので。コストを落とした状態で、どこまでリアルに見えるか、という部分ですね。今回のスタジオは広いんですけど、共有スペースを含めて4戸を作るとなるとはみ出してしまうんです。だから出来る限り小さくして……。それに加えて、カメラスペースだとか、照明、音声さんのスペースも考えなければいけないので、それを踏まえてどう形作るか、どう広く見せるか、というのは苦労しました。



――セットを広く見せるコツは?



空間を仕切らないことですかね。今回は、いろんな理由で扉をつけていないんです。みんなで話している奥にベッドが見えたり……。本当はベッドルームには扉をつけるんですけど、抜けを大切にすると、ある程度狭くは見えないかな、と思います。





ちなみに、「もし宮川さん自身が住むならどの家がいいですか?」と伺うと、「やっぱり広瀬家ですかね。もっと棚をたくさん置いて、そこにデザイン本などをたくさん入れて作業しやすいスペースを作ると思います」とおっしゃっていました。





宮川卓也



フジテレビ美術制作局デザイナー

バラエティ『クイズ!ヘキサゴン』、アナウンサーの深夜番組『カトパン』~『ミカパン』、ドラマ『ほんとにあった怖い話』『問題のあるレストラン』『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』、映画「暗殺教室」「暗殺教室~卒業編~」、報道番組『スーパーニュース』、リオ五輪現地スタジオセットなど多岐にわたる番組をデザイン。


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■番組概要


<タイトル>



『隣の家族は青く見える』


<放送日時>



毎週木曜22時~22時54分放送


<出演者>



深田恭子

松山ケンイチ



平山浩行

高橋メアリージュン

北村匠海

眞島秀和

真飛聖

野間口徹



須賀健太

伊藤沙莉

前原滉

寿大聡

橋本マナミ



春海四方

伊藤かずえ

高畑淳子



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