『花にけだもの』Pが語る、マンガ原作の実写化を成功させるカギとは

『花にけだもの』Pが語る、マンガ原作の実写化を成功させるカギとは

『花にけだもの』清水一幸Pに直撃


単行本累計発行部数100万部を超える、人気少女マンガ『花にけだもの」(杉山美和子/小学館)。FODとdTVの共同制作によってドラマ化、FODで限定配信されていましたが、大きな反響を集め4月から地上波でも放送が始まりました。




(C)杉山美和子/小学館(Sho-Comiフラワーコミックス) フジテレビジョン・エイベックス通信放送


その実写ドラマ化を担当しているのが、『最高の離婚』や『のだめカンタービレ』の清水一幸プロデューサーです。



今回は清水Pにインタビューを敢行。前編では、『花にけだもの』を実写化するに至った経緯から、あの名キスシーンの演出についてなど、さまざまなお話を伺いました。そして、インタビュー後編では、原作モノの実写化に必要なものや、ドラマ作りの本質について語っていただきました。


■原作、地上波、海外展開……コンテンツをどう拡充するか




清水一幸プロデューサー


――清水Pは数々の有名なドラマ作品を手がけてきたと思うのですが、企画を考える上でどのような点に重きを置いていますか?



「これは地上波でもネット配信でも一緒だとは思うのですが、『そのコンテンツが今後どう活かされるか?』というところが大事だと思うんですよ。たとえばそれを海外にも売ることができたら一番いいし、そうじゃなくてもDVD化や、今回のような地上波放送、もしくはBSやCSの放送など、ひとつのコンテンツをどういったパターンで展開していけるか、を考えるべきかなと思います」



――ひとつ作ったら終わり、ではなくて、今後どう転がしていけるかということですか?



「今後コンテンツを作っていく会社としては、そういうことまで考えないといけないんじゃないかなと思っています。ちなみに今回の『花にけだもの』はドラマ化したことで反響もあり、杉山先生に『続きを描いてみたらどうですか? 僕は読みたいです!』って提案したら、本当に実現したんですよ。『花にけだもの』は続編として『花にけだもの ~ヰタ セクスアリス~』がいま連載中です」



――物語のスピンオフ的な形で始まりましたよね。たしかに、そうやって続編ができたり別の形で展開されたりすることってファンにとっても嬉しいことです。ちなみに、ドラマ版は全10話で完結していますが、今後の展開は考えていたりするんですか?



「それはまあ、考えていないといったら嘘になりますが、お楽しみに、という感じですね」





■原作モノは“リスペクト”の有無が成功のカギ


――清水さんは過去に『のだめカンタービレ』のプロデュースをしていたことでも有名ですが、マンガ作品を実写化する上で大変だなと思うところはありますか?



「まずは、原作の世界観を崩さないことですね。マンガの実写化って、特に一話はどうしても比較から入るじゃないですか。そこで視聴者をがっかりさせない。もし世界観を崩すなら、崩した理由がわかるように崩す。『原作の方がよかった』と言われるのが作り手として一番つらいですからね」



――なるほど。



「ちなみに『のだめカンタービレ』は原作を大リスペクトして作ったもので、本筋ではないマンガっぽい表現もすべて拾うことを心がけていました。殴ったり蹴ったりする部分も、ぬいぐるみなどをはさみながら再現したり。『どう実写化するんだろう』とファンが思っていたところに、『原作そのままやります』という態度でのぞんだのがよかったのかもしれない。



ちょうど当時は『花より男子』が放送されていた時期でもあると思うんですが、あれも原作そのままの世界観を再現していてウケてましたよね。あんなお金持ち学校あるわけないだろとわかっていながらも、みんなそれを楽しんでいる。少女マンガの世界観がそのまんまでウケるようになったのはそれくらいの時期だったんじゃないかと思います」


すべてのドラマの本質は、いつの時代も同じ





――マンガ作品の実写化でいうと、FODは『南くんの恋人』や『イタズラなKiss』など過去に他局でドラマ化された作品も新たに映像化していますよね。



「そうですね、僕らの世代からしたら何度映像化したんだと思うものも、10代の世代の視聴者にとっては初めて触れるものなんです。今回みたいに映像化されていない作品をドラマ化するのもいいし、そうやって過去の作品をさらうのもありだなと思っています。結局、ドラマっていろいろな物語や設定があるように見えるけど、根本の部分は普遍的なんじゃないかなと思うんですよ」



――普遍的とは?



「男の子と女の子がいるから好きか嫌いかという恋愛の話になって、中学生や高校生がいるから甘酸っぱい恋が描かれて、大人になるから結婚や離婚、不倫がテーマになる。大きな部分は変わらないということです。たとえば僕が子どもの頃は『金曜日の妻たちへ』が大ヒットしていたけど、じゃあ今の『昼顔〜平日午後3時の恋人たち〜』はそれとどこが違うの?というくらい本質的な部分はトレースされたもののように感じるんです。でも、そこには確かに時代に合った設定やストーリーによって物語られている」



――時代によって形は変われど、コアな部分は変わらないということですね。



「『最高の離婚』を作ったときも『のだめカンタービレ』を作ったときもそうなんですが、僕にとっての原点は『東京ラブストーリー』なんです。鈴木保奈美さんが演じた赤名リカという女性が持っていた“片思いの美学”がある。女の子が相手のことをとにかく好きで好きで仕方ない姿を素敵だなと思うから、上野樹里さんが演じたのだめちゃんもそうだし、尾野真千子さんが演じた濱崎結夏もそう。とにかく片思いで、最後は都合よくハッピーエンドにはならない。完全なるリスペクトですね(笑)。



でもそれは僕に限らず、みんな同じようなことなのかなと思います。僕らが作り手の方とよく話すのが、ドラマとなりうるものはもうすべてこの世に出尽くしてしまっているよね、という話です。もとをただせばシェイクスピアまで遡ってしまうのかもしれませんが。そうなると、いかに時代と向き合って、配置換えをして、設定を決めていくか、ということを考える以外に選択肢はないんじゃないかなと思うんですよ。マンガ作品の実写化も同じことです。その作品の世界観を損なわないようにしながらも、キャストや設定などを時代に合わせてアップデートしていくんです」



取材・文=園田菜々


■番組情報


『花にけだもの』


<放送>



毎週月曜24時55分~25時25分


<出演>



中村ゆりか、杉野遥亮、松尾太陽、甲斐翔真、入山杏奈 ほか


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