『健康で文化的な最低限度の生活』原作が伝える、生活保護「不正受給」の実態

『健康で文化的な最低限度の生活』原作が伝える、生活保護「不正受給」の実態

『ケンカツ』原作の読みどころとは


「生活保護」という言葉を聞いて、いいイメージを抱く人はどれだけいるのだろう。生活保護とは、困窮するすべての国民が、健康で文化的な最低限度の生活を送る上で必要な額を受給する権利であり、国による公的扶助制度である。



しかし、近年はその不正受給や、生活保護受給者のギャンブルや飲酒が叩かれるなど、当事者ではない人々からの批判を受けやすいのが現状だ。叩くまでではなくても「働かずに国からお金をもらって暮らしている」という捉え方をしている人は、やはり多いのではないか。


■『健康で文化的な最低限度の生活』その原作の魅力


8月からフジテレビで放送中のドラマ『健康で文化的な最低限度の生活』は、柏木ハルコ氏が「ビックスピリッツで」連載中の社会派漫画が原作だ。





舞台は、生活保護を扱う、区役所の生活課。主人公はこの生活課に新卒で配属された義経えみるだ。社会福祉制度に対しての知識も関心も薄かったえみるは、様々な生活保護受給者との関わりの中で、自分なりに「生活保護」という存在とどう向き合い付き合っていくのか、試行錯誤していく。



作品の中では、様々な生活保護受給者の事例が扱われ、そこには当然だが、それぞれの人生ドラマがある。たとえば作品の中では、生活保護を受けている家庭の息子がバイト代を福祉事務所に申告していなかったことが発覚し、「不正受給」として取り上げられる話があるが、果たして読者は高校生だけを責める気になれるのか?というと疑問である。



彼には、知識がなかっただけで、悪気はない。それなのに今まで自分で稼いだバイト代を全額取り上げられてしまう、そんな局面で彼が放つ「バカだから!!オレがバカだから罰金取られるってことなんスね!!」というセリフに対して、どう返すことができるだろう。えみるは、マトモに説明することができず、落ち込んでしまう。


■白か黒では割り切れない、生活保護“不正受給”の実態


この作品の魅力の一つは、そういった「不正受給」といった問題を扱いながらも、決して「不正受給はやめましょう!」とか、はたまた「生活保護を受けている人にも人生があるんだから責めてはいけない!」といった単一のメッセージを押し付けるのではなく、読み手にそれを考えさせようとしているところだ。



「生活保護」というテーマを一つの軸に、あくまで受給者それぞれの「人生ドラマ」にフォーカスする。正直、かわいそうだと感じる人たちもいれば、同情の余地もないほど自立する気のない人たちもいる。しかし、彼らにも等しく生活保護を受給する権利はあり、そういったジレンマの中でえみるは日々葛藤する。


■多種多様なケースワーカーたちが、作品に深みを与える


えみる以外に登場する、新人ケースワーカーたちも、彼らなりの信条や価値観をもって生活保護に取り組んでいることが、この作品をより多面的かつ深みのあるものにしている。テキパキと仕事をこなしながらも、独善的で容赦なく生活保護を打ち切る選択もできる栗橋千奈。熱心だが相手の気持ちを察する能力が低く、無意識のうちにプレッシャーをかけてしまう七条竜一。訪問客にも穏やかかつ温和に接する、後藤大門や桃浜都。



ドラマでは井浦新さんが演じている、えみるの先輩ケースワーカー半田も、人生訓ともいえるような的確なアドバイスを与えてくれる存在として印象的だ。その一方で、不正受給を厳しく取り締まるため冷酷な発言をする係長・京極のようなキャラクターもいる。



作者である柏木ハルコ氏が徹底的に調査をし、その上で実際のケースワーカーが監修している当作品は、フィクションながらもかなりのリアリティと切迫感をもって我々にせまってくる。「生活保護」というものに対してあまりいい印象をもっていない人にほど読んでほしい。そこには普段当事者ではない人々には可視化されづらい、「受給者たちの生活」と「ケースワーカーたちの仕事」がある。



文=園田菜々


■番組情報


『健康で文化的な最低限度の生活』


<放送>



毎週火曜21時~21時54分


<出演>



吉岡里帆 井浦新 川栄李奈 山田裕貴/田中圭 遠藤憲一 他


<原作情報>



『健康で文化的な最低限度の生活』

柏木 ハルコ/小学館

既刊6巻




※最新巻・7巻が8月30日(木)に発売決定!




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