アカデミー主演男優賞エディ・レッドメイン「かなり自信がなかった」作品にかける想いとは<インタビュー>

アカデミー主演男優賞エディ・レッドメイン「かなり自信がなかった」作品にかける想いとは<インタビュー>

【モデルプレス】映画「博士と彼女のセオリー」で「第87回アカデミー賞 主演男優賞」「第72回ゴールデン・グローブ賞 主演男優賞」などを受賞した英俳優のエディ・レッドメインがインタビューに応じた。

◆「博士と彼女のセオリー」とは

ひと目惚れした出会いから、お互いの存在を必要としあった愛の過程、きれいごとではすまない夫婦の現実、そして、驚きの結末。余命2年と宣告されながらも家庭を持ち、生きる意味を全うし続けるホーキング博士と、その妻ジェーン。相手を想うという、シンプルが故に深い関係で強く繋がっていたふたりの愛が描かれている。

エディは、ALS(筋萎縮性側索硬化症)という難病を発症しながらも最先端の研究に励み、現代の宇宙論に多大な影響を与えた車椅子の天才科学者・ホーキング博士を演じた。

そんな同作が、8月5日(水)にブルーレイ&DVDをリリースする。

◆エディ・レッドメインが語る「博士と彼女のセオリー」への想い

― この役を自ら望んで受けたという事ですが、自信を無くすことはありましたか?

エディ:自信を無くすにも様々な段階があったよ。実在の生きている人を演じることに対して自信はなかったけど、それ以上に、象徴的な人(スティーヴン・ホーキング)を演じるのは、かなり自信がなかった。それに、科学を理解し、科学に対して事実に基づき忠実にすることにも自信がなかった。それからこの病気のこともね。撮影準備の過程で、僕はロンドンにある運動ニューロン疾患専門の病院に行って、この病気を患っている大勢の人と会ったんだ。その上、その人たちからは多くのことを学んだよ。だから、僕は、その病気に対して忠実にならなくちゃいけないと思った。もちろん、スティーヴン・ホーキングやジェーン・ホーキング(フェリシティ・ジョーンズ)とその家族に対してもだ。そういったことがある一方で、心がけていたのはエンターテインメントな映画を作ること。だから、夜も寝られないほどのことがたくさんあったけど、僕はかなり刺激を受けたよ。それに、みんなも一生懸命になったしね。

― スティーヴン・ホーキングと実際に会うのは、どのようなものでしたか?

エディ:スティーヴン・ホーキングは宇宙に存在する本格的な問題を解くことで、かなり多忙を極めているんだ!撮影開始の4ヶ月ほど前に、僕は準備を始めた。彼とは早めに会いたかったけど、彼は忙しかったから、結局、僕が彼に会えたのは、撮影開始の5日前だったんだ。映画の撮影は物語の時系列に沿っては行わなかったから、僕は、役がどうやって物語の中で変わっていくのかを図にする必要があった。スティーヴン・ホーキングと会った際に、「役について勘違いをしていたらどうしようか?」「今まで準備してきたことが実際には正しくなかったらどうしようか?」といった不安感があったんだ。それに、その時には、僕の心の中には、彼と会うのはまるで幻想のような世界に行ってしまった象徴的な人物と会うような思いがあったので、僕はとても緊張したんだ。スティーヴン・ホーキングは、とてもユニークなリズムで話をするんだけど、意思伝達をする際にある筋肉を使っているだけなんだ。だから、彼が何かを話すまでに数分ほど時間がかかる。その長い沈黙が僕は大嫌いでね、結局、僕はスティーヴン・ホーキング自身に対して、スティーヴン・ホーキングについて僕が知っていることを45分間話し続けたんだ!そのあと、僕は落ち着いたけど、彼はとても寛大でいてくれたんだ。

― 彼はあなたについて何か知っていましたか?

エディ:彼にそんなことは聞かなかったよ。興味深かったのは彼にとって話すというのは大変なことで、彼は、テレビでインタビューを受けた際には、事前に質問をもらっていたんだ。彼は、話をする時、3時間でおそらく7つか8つの文しか言えない。だから、「僕のことを知っていますか?僕の過去の出演作についてどう思いますか?」といった質問で時間を無駄にはできないんだ。彼はとてもいい笑顔をしているから、彼を笑わせられると、世界が最高の場所になる。その顔合わせの時に、僕は彼から特徴を探り出したんだ。彼は僕に聞いてきた。僕が音声装置の前で彼を演じているのかどうかってね。僕は、演じているって答えると、彼は、「私の声はとても不明瞭なんだ」って言ったんだ。僕は、あるドキュメンタリーで、彼が言葉を発しているが、聞き取れなくて、その話の内容が全く理解できなかったことを彼に伝えた。実は、彼の言いたかったことは前から自分でも分かっていたことで、話していることが不明瞭になるくらいまで演技をしようとしたんだ。でも、プロデューサーが、字幕をつけることに少しばかり心配をしたんだ。スティーヴンは、「君は誰かに私の通訳をさせたくないかい?」って言うんだ。僕はすでにプロデューサーたちと軽いバトルをしていて、スティーヴンとの顔合わせから戻ってきて彼らに言ったんだ。「スティーヴン・ホーキングが気にしていて、厳密にしてほしいことがひとつある」ってね。すると、脚本家のアンソニー・マクカーテンは、ジェーン・ホーキングが彼の通訳をするシーンを織り込み始めたから、僕らは彼の不明瞭な話し方に近づけたんだ!

― 演じる上で、最も大変だったことはどんなことですか?話し方か?それとも肉体的な状況ですか?

エディ:最も大変だったことは、どんなことも難しく見せないようにすることだね。プロデューサーたちは、この映画は技術的なことについてではなく、キャラクターについてのことだと話した。スティーヴン・ホーキングに会えば分かるけど、彼は自分の病気にそれほど関心がないんだ。スティーヴン・ホーキングは未来に目を向けている。彼は情熱的に生きているし、僕が脚本を読んだ時、これは病気についての映画だとは感じなかった。とてもヒューマンで、繊細で、とても複雑なラブストーリーだと感じたよ。だから、僕は、彼を演じている時に、「僕の手はどうしたんだ?」って考えないように気をつけたんだ。

― スティーヴン・ホーキングは映画を見た後に、あなたの演技についてコメントをしましたか?

エディ:彼はコメントしてくれたよ。スティーヴン・ホーキングはインタビューを受けて、とてもうれしいことを言ってくれたんだ。僕は、映画を見る直前のスティーヴンと会って、「スティーヴン、僕はドキドキしているが、思ったことを聞かせてほしい」って言うと、ちょっと間があって、彼は象徴的な声でこう言った。「私が思ったことを知らせるよ。それがいいものであろうとなかろうとね!」って。

― スティーヴンは、自分自身を見ているようだと言わなかったですか?

エディ:スティーヴン・ホーキングは、自分自身を見ているように感じたと言っているよ。僕に直接ではないけど、そう言っているんだ。その言葉で、最高に安堵したよ。僕も、映画を見て、この映画は本物だと信じる人のひとりなんだ。僕はその映画の世界で仕事をしてるんだけどね!フェリシティ・ジョーンズ(ジェーン・ホーキング)と僕は、二人の物語を誠実に伝えることに対して、ものすごい責任を感じていたんだ。僕らがホッと安堵の息をつけたのも、スティーヴン・ホーキング、ジェーン・ホーキング、それからその子供たちが映画を観た時だったんだ。

― スティーヴン・ホーキングの一番有名な著書「ホーキング宇宙を語る」を読みましたか? また、彼の研究を理解していますか?

エディ:その本は読んだよ。彼が書いた本は何冊か読んでみた。そこに書かれた言葉はすべて、僕の網膜を通り抜けて行ったけど、僕がそれを理解したかどうかはとても難しい質問だね。スティーヴン・ホーキングのかつての生徒のひとりで、今はインペリアル・カレッジの教授に協力してもらって、複雑なひも理論について教えてもらうことになったんだ。そこで僕は言ったよ。「僕を7歳の子供と思って、原子の意味から教えてください」ってね。それで、僕は、難しい内容のウェブサイトを見て、astronomyforkids.org(訳注:子供向けの天文学サイト)を見た。そこで、大切なものを学んだよ。役に必要なことを学べたと思っているよ。

― 役作りはいつ始めましたか?

エディ:分からないな。でも、役作りするには、没頭できる素晴らしい世界があったんだ。僕は、配役が決まった翌日、ロンドンのクイーンスクエア神経病院に行って、そこの専門家と話し合い始めたんだ。それから4ヶ月間以上、1~2週間ごとに、その病院に行っては、その病気を患った人たちやその家族に引き合わせてもらった。中には、僕を家に招待してくれた人もいたよ。彼らからは、身体上の問題や精神的に伴った犠牲を学べた。フェリシティ・ジョーンズ(ジェーン・ホーキング)も一緒に行ったんだ。僕が段階を経て経験することになる様々な体の問題に、彼女も一緒に付き添うことになるからね。それは、スティーヴン・ホーキング(エディ・レッドメイン)が完全に人に頼っていくダンスのようなものだね。どうやって二人が一人の人間、ひとつの存在になるかということなんだ。

― 最も感動的なシーンは?

エディ:最も感動的なシーンは、スティーヴン・ホーキング(エディ・レッドメイン)とジェーン・ホーキング(フェリシティ・ジョーンズ)が別れるところだね。そのシーンの撮影時には、すでにかなり撮影が進んでいて、僕たちは自分の演じた役を過剰に守ろうとしていたんだ。ジェームズ・マーシュ(監督)とチャーリー・コックス(ジョナサン・ヘリヤー・ジョーンズ)、フェリシティ・ジョーンズ(ジェーン・ホーキング)とマキシン・ピーク(エレイン・メイソン)と僕のみんなが思ったことは、登場人物を判断するのは僕らの役割じゃないってこと。できれば、観客には、二人の並外れた人柄や欠点を感じ取ってもらって、自分ならどうするか考えて、劇場から出てきて欲しいな。でも、二人が別れるシーンは、二人がひとつの存在になる時なんだけど、そこには共存している関係がある。二人(スティーヴンとジェーン・ホーキング)とも、お互いのいない生活なんて予測できなかったと思うんだ。スティーヴンは、ジェーン(フェリシティ・ジョーンズ)がジョナサン・ヘリヤー・ジョーンズ(チャーリー・コックス)と関係を急速に深めているのに気付いていたけど、彼女なしでは自分がどうやって生きていけばいいのか分からないんだ。その後、彼はエレイン・メイソン(マキシン・ピーク)と出会い、エレインはその時のスティーヴンの姿を見て、スティーヴンに同情することになるんだ。僕は常に、この二人が別れるシーンは解放として捉えている。でも、とても面白いことに、このシーンに「なんで彼はあんなことをしたんだ」と反応する人もいれば、「いいや、あれは解放なんだ」という人もいる。おそらく、これは最もつらいシーンであり、最も感動的な瞬間だと思うんだ。

― スティーヴン・ホーキングは、もともと2年しか生きられないと言われていましたが、どうして長い間元気でいられるのだと思いますか?

エディ:スティーヴン・ホーキングに代わって、僕が話をしたいと思わないし、実際のところ、誰にも分からないことだ。僕が会った運動ニューロン疾患を持つ人たちはみんな言っているけど、彼はその死の確率を全力で覆したんだ。僕には、それが病気の特異株のおかげなのかどうかは分からない。でも、スティーヴン・ホーキングには、十分なケアがされていたんだ。12人のチームがスティーヴンの世話をしていたんだよ。さらに、彼がいつも素晴らしいのは、自分の声を失い、講義ができなくなった時、これからは自分の研究に多くの時間を割けられると語ったことからも分かるよね。スティーヴンは、書くことができなくなった時、可視化と呼ばれる新しい思考方法を作り出し、方程式を書き出すこともなく、考えることができるようになったんだ。彼は常に楽観的なんだよね。恐ろしいほどに残酷な病気にかかっていたけど、彼はそれを最大限に生かしたんだ。

― ジェーン・ホーキング(フェリシティ・ジョーンズ)はこの映画についてどう思っていますか?

エディ:フェリシティ・ジョーンズが、ジェーン・ホーキングと話をしたんだ。彼女は、映画に対してとても素晴らしい反応をしてくれたよ。自分の人生があのような形で描写された映画を見るのはとても複雑な気持ちだと思うんだ。映画は彼女の本を元にしているから、ジェーン(・ホーキング)は、映画製作にかなり密接に関わっていたんだ。海辺のシーンでは、ジェーンが感動をしていたのを憶えているよ。特定の時間に撮影された素晴らしい映像だったからね。

― あなたは観客にこの映画から何を感じ取ってほしいですか?

エディ:僕がこの映画から受け取ったものは、スティーヴンとジェーン・ホーキングの目の前に立ちはだかる障害がかなり重度であったのに、その二人はそういった障害で自分たちが特徴付けられることを拒み、それどころか、二人が障害を圧倒するパワーを持ったり、障害を乗り越えたり、または障害に取り組む姿なんだ。その生き方ができるのは彼ら(ジェーンとスティーヴン・ホーキング)に限られてしまうと思うけど、でも、僕らの人生にも限界や障害が立ちはだかり、どうやって僕らはそれを乗り越えるかによって、自分というものが定義されると思うんだ。何はともあれ、僕が病院で会った人たちやスティーヴン・ホーキングの存在は大きい。スティーヴンは、余命と言われた2年を過ぎてから、彼曰く「毎日の日々が贈り物」であり、人生の一分一秒を精一杯に夢中になって生きているんだ。僕は、日常生活のささいなことや不安で余裕のない人たちのひとりだけど、この映画で現実に目覚めることができて、僕らには、人生は一度きりしかないって気づかせてくれるんだ。

― あなたはその専門病院でどのくらい過ごしたのですか?あなたに病気のことで指導した人はいたのですか?

エディ:病院には3~4ヶ月の間、2週間ごとにダンサーのアレックスと行っていたよ。アレックスは僕に協力してくれた女性のダンサーなんだ。僕らは病院の廊下に座り、患者たちは医者の診察のために廊下を通る。そして、患者たちの診察終わりに、彼女は彼らに「あなたに会いたい俳優がいる」って伝えるんだ。ほぼみんなが好意的だったから、僕らはそこに通うことができたんだ。何人かの人には体を触らせてもらったよ。演技上、身体的な特徴を知ることが必要だからね。例えば、手を触れて、こわばっているのかどうか、硬いのか柔らかいのかを見るんだ。そういったところが重要なんだ。スティーヴン・ホーキングの場合、華奢に見えるけど、実際にはそうではないんだ。フェリシティ・ジョーンズ(ジェーン・ホーキング)はスティーヴンを優しく持ち上げて、礼儀をもって接しているんだけど、世話をしている人たちは全くそうではないんだ。それから、グレンという素晴らしい紳士が病院にいて、ウォトフォードにある彼の家に行ったんだ。彼はとても率直に物事を言ってくれた。以前は映画の研究者として仕事をしていた人で、自分の気持ちだけでなく、病気の症状に合わせて自分の家を維持していくことについて話してくれたよ。ある朝目覚めて、どこかの筋肉が動かなくなったら、自分の家をその症状に合わせて改装しないといけないんだ。それから、かつてはとても健康的な水泳のインストラクターであったエディーという男性は、声を出せなくなっていて、僕が会った多くの患者と同様に重要なテーマとしていることのひとつに、大いなる自立というのがある。一方で、30代、40代には信じられないくらいに健康的な男性がいるんだ。エディーはその後、亡くなってしまったけど、素晴らしく、情熱的な男だったね。僕はとても刺激を受けた。誰かと出会い、その人と知り合いになったのに、その人が亡くなるというのは、心が痛むよ。

― ダンサーと病院に訪問したと言いましたが、あなたのリサーチにどのような役割を果たしたのでしょうか?

エディ:ダンサーの名前はアレクサンドラ・レイノルズ。僕は配役された際に、表現する身体的特徴をひとつだけにはしたくなかったんだ。ダンスのように、いろいろな瞬間の身体的特徴を学ぶべきだと思った。というのも、撮影は時系列に沿ったものではないから、1日の間にいろいろな身体的特徴を表現する必要があったんだ。それを自分の体に刻み込めば、そのことを考える必要はなくなる。アレックス・レイノルズ(ダンサー)のおかげで、僕は筋肉を縮めて、多くのテイクに体を動かさないで耐えられるトレーニングをしたんだ。何度も同じことを撮影することになったからね。その体勢を取ると、けいれんを起こしてしまうんだ。まるでアスリートのトレーニングみたいだったね!

― ありがとうございました。

(modelpress編集部)

■映画「博士と彼女のセオリー」

<あらすじ>

1963年、ケンブリッジ大学で理論物理学を研究するスティーヴン・ホーキング(エディ・レッドメイン)は、中世詩を学ぶジェーン(フェリシティ・ジョーンズ)と恋に落ちるが、筋萎縮性側索硬化症(ALS)を発症、余命2年と宣告される。妻となった彼女の支えで研究を進め時の人となるが、介護と育児に追われる彼女とはすれ違い、病状も悪化していく。

<キャスト>

スティーヴン・ホーキング:エディ・レッドメイン

ジェーン・ホーキング:フェリシティ・ジョーンズ

ジョナサン・ヘリヤー・ジョーンズ:チャーリー・コックス

ベリル・ワイルド:エミリー・ワトソン

フランク・ホーキング:サイモン・マクバーニー

デニス・シアマ:デヴィッド・シューリス

<スタッフ>

監督:ジェームズ・マーシュ『マン・オン・ワイヤー』(アカデミー賞 長編ドキュメンタリー映画賞受賞)

製作:ティム・ビーヴァン&エリック・フェルナー『アバウト・タイム~愛おしい時間について~』、『レ・ミゼラブル』、『裏切りのサーカス』、『つぐない』、『エリザベス』

■エディ・レッドメインとは

映画『レ・ミゼラブル』マリウス役で日本でも大ブレイクしたエディ。本作で、英・米アカデミー賞、ゴールデン・グローブ賞など多くの映画賞を受賞し、改めてその実力を証明、今もっとも勢いのある俳優。イギリスの由緒ある家庭出身で、名門パブリックスクール、イートン・カレッジで学び、そこでは英ウィリアム王子と同期。プライベートでは、一般人女性と交際2年で結婚。昨年12月に結婚式を挙げたばかり。次回作は『レ・ミゼラブル』のトム・フーパー監督と再び組む『The Danish Girl』。また、「ハリ-・ポッター」シリーズ初のスピンオフの主役に正式オファーも受けている。
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