深田恭子主演ドラマ「はじこい」、ヒットの背景に四角関係のもどかしさを演出する“音楽”の妙

深田恭子主演ドラマ「はじこい」、ヒットの背景に四角関係のもどかしさを演出する“音楽”の妙

 深田恭子主演のTBS系火曜ドラマ『初めて恋をした日に読む話』が、放送のたびに盛り上がりを見せている。本作は、深田演じる“残念なアラサーしくじり女子”の主人公・春見順子を巡り、タイプの異なる3人の男性が熱心にアプローチしていく様子を描いたラブコメディドラマ。『コンフィデンス』誌が実施する視聴者満足度調査「オリコン ドラマバリュー」では、第5話(2月12日放送)で今クールの全ドラマの中で最高値をマークするなど、高い評価を得ている。個性豊かな登場人物たちの想いが複雑に交差する「四角関係」が本作の最大の魅力だが、そのなんとも言えない四角関係を描き出せているのには、劇伴(音楽)による効果も大きい。ポップカルチャー研究者の柿谷浩一氏(早稲田大学総合人文科学研究センター)が、劇伴の視点から「はじこい」の魅力を解説する。



【写真】主人公・順子にハグをしたのは…3月12日の第9話シーン写真



◆応援したい気持ちに? 20年間の「片想い」を表すタンゴ風のクラシックギター



 「作品の大枠を飾るのは、明るく華やかなポップ全開のテーマ曲。流れた瞬間のインパクトあるギターが、恋をした時の高鳴る“ウキウキ感”と“爽快さ”を直観的に伝えてうまい。ですが、ここまでなら劇伴的には王道。本作の巧さはその先、主人公を取りまく「周辺音楽」にあります。



 この作品の魅力は、主人公の塾講師・順子とその生徒・由利匡平(横浜流星)の恋愛を軸にしつつも、それをめぐる「四角関係」が音楽面でも実にバランスよく、分かりやすく描き出されているところ。ラブコメの肝は、メインの恋もさることながら、恋敵をどれだけ鮮明かつ個性的に描けるかも重要になってきます。その点、順子に寄せるそれぞれの恋心が、その質感も含め、異なるテイストの劇伴でしっかり描き分けているのは秀逸で、見応えがあります。



 従兄弟の八雲雅志(永山絢斗)の「片想い」を表すのは、タンゴ風のクラシックギター。20年間告白できない意気地なさと、いつまでも恋に不器用な彼を、“情熱的”なメロディーが皮肉に映しだしてユーモラス。物語が進むにつれて、この音楽が誰よりも一途で、恋にまっすぐな彼の長所をジワジワと強調してくる辺りも見所になっています。「ラブコメ」から、芯のある「純愛劇」へ。音楽がしっかりと視聴者を運んで、曲中の手拍子のアクセントに重なるように、次第にエールを送りたい気持ちに駆り立てられてきます」



◆塾講師に想いを寄せる生徒…“繊細で可憐”なピアノが「禁断の恋」を表現



 「一方、元ヤンで高校時代に順子に失恋した経験を持つ山下一真(中村倫也)の「キザな恋」を彩るのが、ピアノ曲の中のハーモニカ演奏。その“渋い”音色で大人の恋を喚起しつつ、“郷愁”漂うフレーズがバツイチの傷心と、当時の初恋が蘇ってくるさまを効果的に捉えて響きます。



 そして、生徒の由利の「禁断の恋」には、“繊細で可憐”なピアノが寄りそう。「胸キュン」なしぐさや場面も少なくないですが、あくまで初恋の初々しさ、純粋さをすくい取ろうとする音楽が印象的です。確かに作品全体はキラキラしていますが、その雰囲気に「3つの恋」が過度にのみ込まれず、交錯しながらも各々が自律している辺りが、変に押しつけがましくない作品性と、共感を呼ぶ良質で安定感のある「四角関係」を作っている秘訣のように見えます。



 昨今、恋愛ドラマも「勝ち負け」の結果以上に、いかに「恋の多様性」を描けるかが重要な時代となっています。本作はさまざまな恋模様を描きながら、恋敵それぞれの音楽が活きている。だからこそ、視聴者もそれぞれの「推し」に想いをこめながら、この作品を楽しめているのではないでしょうか。登場人物たちのキャラクター・個性も違えば、その恋も、想いのカタチも違う。それをしっかり音楽で魅せている点が、「ラブコメ」としてのこの作品の妙味と言えるでしょう」
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