「はじこい」最終回 想いが交錯した四角関係の着地点は?

「はじこい」最終回 想いが交錯した四角関係の着地点は?

 いよいよ最終回を迎える『初めて恋をした日に読む話』(TBS系/3月19日放送)。アラサーの塾講師・順子(深田恭子)が、従兄弟の東大卒エリート・雅志(永山絢斗)、教え子の高校生・匡平(横浜流星)、元同級生のバツイチ教師・山下(中村倫也)に想いを寄せられる物語は、高い女性視聴者人気に支えられ、回を追うごとに盛り上がりが加速してきた。



【写真】最終回に登場した教師・山下(中村倫也)のメッセージとは



 オリコンの満足度調査「ドラマバリュー」を見ると、少女漫画原作ならではの胸キュンシーンへの反響はもちろん、「心に刺さる」「泣いた」という声も多い。ラブストーリーでありながら、登場人物に人間として共感し、応援しながら観られる作品であることもヒットの一因になっている。そこには同じく火曜21時枠(TBS火曜ドラマ)で少女漫画のドラマ化に何度も関わってきた吉澤智子氏の脚本がある。



■全員が“しくじっている”キャラクターであることが魅力



 本作の視聴者の心を打つポイントとして挙げられるのは、まず第1に、人間のコンプレックスや情けない部分がキャラクターの魅力になっていること。ガリ勉の末に東大受験に失敗し、婚活にも挫折したアラサーの順子は、自らの人生をどこか自嘲している。



 不器用な雅志は順子への片想いに右往左往し続け、匡平はエリート官僚の父との確執から不良に。元ヤンキーで一見ガツガツ系男子の山下ですら、順子とのデートの段取りにことごとく失敗し、「オレは何をやっているんだ」とうなだれるシーンがある。



 順子には“しくじり女子”というキャッチフレーズがついているが、ほかのキャラクターも基本的に同じなのだ。そんな彼女たちの人間味と愛嬌、そして泥まみれでも一歩進もうとする姿が視聴者に愛されている。



■成長と恋愛が地続きになっているから年齢差の恋が説得力を持つ



 第2のポイントは、東大受験に挑む匡平と、彼を支える順子の二人三脚の挑戦が感動的であること。“主人公が恋愛以外の部分でも成長する”という設定は多くの作品で見られるが、単に恋愛を盛り上げるためのオマケのように見えてしまうことも少なくない。



 その点、本作における受験の描写はかなり本格的で、いわゆる“お受験ドラマ”にも劣らないほど、2人で勉強するシーンを丁寧に描いている。また、第1話で匡平に「私のようにつまらない大人になるな!」と言い放った順子は、血の通ったアドバイスで匡平を導きつつ、自らも人生の輝きを見出していく。



 2人の人間としての成長と恋愛が地続きになっているからこそ、年齢差15歳の恋が説得力を持ち、視聴者は胸を熱くするのではないだろうか。



■中盤以降に描かれたのは“恋”というよりも“愛”



 さらに第3のポイントは、とくに中盤以降、“恋”というよりも“愛”が描かれていること。20年間にわたって順子を想い続けてきた雅志は、順子に頼まれれば恋敵の匡平に勉強法を教え、官僚である匡平の父が失脚したと知れば、すぐに駆けつけて力づける。



 その理由を「好きな人を悲しませたくない」と話す雅志の想いは、エゴや利己心を超えた大きな愛だ。もうひとりの恋敵・山下もまた、匡平の父親を救うために、離婚した元妻の父である政治家に助けを求める。そして、その交換条件として元妻とよりを戻し、義父の跡を継いで政治家になる道を選んだことで、恋を愛へと昇華させた。



 一方、順子と匡平も、現時点では恋と愛の間をさまよっている。第9話では、18歳になった匡平が順子を抱きしめ、ついに「好きです」と告白。匡平の背中に回した順子の手と、「絶対、合格して」という言葉からは、恋と愛がないまぜになった愛おしさがあふれていた。



 登場人物が全員、“恋の相手”や“恋のライバル”という記号的な関係性ではなく、人間同士として向き合っているのが本作の特徴。その愛の蓄積を丁寧に描いてきたため、匡平のハグやイタズラっぽく舌をペロッと見せる表情、雅志の突然のキス、山下の頭ポンポンなどの胸キュンシーンが、ただ視聴者をときめかせるだけの表層的な装置にならず、視聴者にとっても愛おしいシーンになっているのだろう。



■吉澤智子氏オリジナル脚本の着地点への高まる期待



 脚本を手がけているのは、同じくTBS火曜ドラマで少女漫画のドラマ化に何度も関わってきた吉澤智子氏。『ダメな私に恋してください』では、主演・深田恭子の愛され力を活かした癒し系ラブコメを、不倫がテーマの『あなたのことはそれほど』、依存的な恋愛を描いた『きみが心に棲みついた』では、人間のダーティーな部分を徹底的にえぐり出すシビアな恋愛劇を描いた。



 今回の『はじこい』が、キャラクターを独立した人間として描きつつ、少女漫画のエッセンスもたっぷりの絶妙なラブコメに仕上がっているのは、おそらく吉澤の手腕によるところが大きいはずだ。



 原作はまだ未完のため、第8話からはドラマオリジナルの展開が増えている。たとえば、山下が政治家の道を選んだエピソードは、原作にはない展開。そこでは、順子への強引なアプローチが目立った山下が持つ、本当の意味での男らしさを提示したといっていいだろう。



 さらに第9話のラストで、匡平の東大受験の朝に順子が交通事故に遭った展開もオリジナルだ。衝撃的な展開に驚く声も多かったようだが、ここまで丁寧に人間の心情に寄り添ってきた作品だけに、試練を与えられた順子と匡平の新たなポテンシャルが見られる最終回につながりそうだ。



 そして、順子にプロポーズした雅志は最後にどう動くのか。稀に見るほどの熱気で愛されたキャラクターたちが迎える着地点に、ドラマファンの期待が集まっている。
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