円谷プロ、ディズニー流ブランド戦略の狙い「プロデュース集団のスタジオをめざす」

円谷プロ、ディズニー流ブランド戦略の狙い「プロデュース集団のスタジオをめざす」

 日本を代表する特撮ヒーロー『ウルトラマン』とそれに続く一連のシリーズを世に生み出した円谷プロダクションが、作品ブランドのフランチャイズ化を目指し、新戦略に乗り出している。ディズニー流の手法を取り込んで主導するCEOの塚越隆行氏に、その狙いと見据える未来を聞いた。『ウルトラマン』とディズニー『マーベル』ヒーローの違いについても語る。



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■世界に向けて仕掛けていくCEOとCOOの新執行体制



――17年8月にトップに就任以来、ファンサービスの充実、ファン層の拡大、新ブランドの構築という3つの柱を打ち立て、新たな戦略を進めてきました。

塚越 戦略という言葉は、あまり使いたくないんです。というのは、円谷プロにとって、作品がすべてだから。ビジネスライクにするのは、本来の円谷プロが目指す形ではありません。ただ、ここにきて、ようやく新作『かいじゅうのすみか』や新たなファンイベント『TSUBURAYA CONVENTION(ツブコン)』などの内容をお伝えできるようになり、IPの打ち出し方をしっかりご説明したいと思い、それを戦略という言葉を使いご説明しているところです。



――前職では、ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパンを統括する立場でした。円谷プロでのIP展開では、ディズニー流を用いている?

塚越 円谷プロは創業以来、60年近くの歴史のなかで制作プロダクションとしての立ち位置で活動してきたわけですが、これからはそれに加えてコンテンツホルダーとしてのブランドに基づいたフランチャイズ展開を推し進めていきます。



――ディズニーから円谷プロへ来られた意図をうかがってもよろしいでしょうか。

塚越 仕事人生の終盤に差し掛かり、日本の作品を世界に届けたい、そのために貢献できることがあるのではないか。そんなことを考えていたときに、20年来の知り合いの円谷プロの親会社であるフィールズの山本英俊会長から、「円谷をディズニーのような会社にしてほしい」と相談されました。フィールズは10年に円谷プロを買収して以降、再建を図っていた時期でもありました。当時のディズニーでの仕事もあり、迷いもありましたが、これは私に与えられた最後のチャンスかもしれない。業界で26年にわたり学ばせてもらったことを活かして、日本の作品で世界展開をめざす仕事ができるならば本望と決心し、現在に至っています。



――今年4月には、自身は会長 兼 CEOに就任し、社長 兼 COOに永竹正幸氏を迎え入れました。新体制への移行の狙いとは?

塚越 これまで円谷プロは株主であるフィールズとバンダイのサポートを受けながら事業を成立させてきましたが、成長戦略に乗って、決裁のスピード感を出すための体制作りに株主も理解を示してくれました。ブランドに基づいたフランチャイズモデルをめざし、世界に向けて仕掛けていくためのCEOとCOOの執行体制になります。COOの永竹は運営と実行役、私は風呂敷を広げる役回りです(笑)。ここからドライブをかけてさまざま展開を進めていきます。



――IP開発に注力していく方針を打ち出していますが、クリエイティブ部門など組織全体の強化も図っているのでしょうか。

塚越 クリエイティブ部門のハブになってもらおうと、円谷プロの遺伝子を熟知する隠田雅浩に2018年1月1日付で円谷プロに戻ってきてもらっています。その穏田を4月1日付で製作本部長に任命したところです。製作部門に加えて、国内営業、海外本部も充実させ、110人いる社員の組織力を高めるとともに、増員もしていきます。また、社内の人材だけでなく、外部のクリエイターの方々と一緒に制作していくことも計画しています。これからの円谷プロは、制作プロダクションの仕事に加えて、プロデュース集団としても機能していきます。



■女性層をターゲットにする『ウルトラマン』ブランドの可能性



――『かいじゅうステップ』『かいじゅうのすみか』『DARKNESS HEELS』と立て続けに発表した新たなIP群は、ファン層の拡大を目的とした戦略でしょうか?

塚越 円谷プロは子どものためのヒーローを作る家元のような存在だと自負しています。これまで築き上げてきた資産は、ブランドであり、認知をもっともっと深めることによって、ファンの方々により喜んでいただける活動になっていくと考えて進めています。結果、コア層から裾野も広がっていくのではないでしょうか。『ウルトラマン』は誕生当初から特撮映像シリーズとして人気を誇りました。それを糧に広げていくことにもこだわっていきたい。創業者の円谷英二がもしまだ生きていたら、いろいろな作品を出したかったはずです。実際に円谷英二が残してくれた、まだ世に出ていない企画もあります。『ウルトラマン』のテレビシリーズから広げたこの3作に続く新しいコンテンツをもっとたくさん作っていきます。『かいじゅうのすみか』はひとつのコンセプトであり、作品です。1つひとつの怪獣たちの魅力を作品を通じて届けていくことが最終的なゴール。ファンの方々に楽しんでいただきながら、映像やアトラクション、ゲーム、VRなどに広げていきます。



――今年12月に東京ドームシティの各種施設にて開催予定のファンイベント『ツブコン』は円谷プロにとって初の試みです。

塚越 『ツブコン』は、円谷プロの過去と未来を繋ぐものになります。つまり、ウルトラマンワールドと円谷ワールドを体感していただき、これまでの円谷プロの作品を楽しんでもらうのと同時に、これからの円谷プロの可能性を感じてもらえる場にしたい。総じて、ワクワク感をお伝えできたらと思っています。オープニングでは、21年以降に発表する作品の一部紹介も予定しています。BtoC向けに発表する機会は、2年に1回くらいのペースで継続的に実施していくつもりです。『ウルトラマン』はアジアをはじめ海外の方々にも人気ですので、海外からも注目されるイベントへと育てていきたいと考えています。



――イベントを含め、円谷ブランドをさまざまなプラットフォームで発信していくのですね。

塚越 ブランドを作ることを第一に考えています。ファンの方々の期待にしっかりと応え、どのように展開していったら楽しんでもらえるのかを考えていくことで、作品がドライブしていくと思います。『ウルトラマン』はこれまで50年以上、子どもを対象としたブランド作りを行ってきました。私も小学生の頃、『ウルトラマン』を楽しんだひとりですが、そんな中高年に向けたリブートや、20~30代に向けた『ウルトラマンティガ』のスピンオフなど、これからはいろいろな可能性を広げていきます。例えば、女性層は『ウルトラマン』ブランドにとって一番遠い存在に思われてきましたが、ファッションアイテムやスイーツ、生活小物などから『ウルトラマン』ブランドに興味を持ってもらえる可能性は十分にあります。それを具現化するための商品化も計画しています。それも円谷英二のビジョンを伝える手段のひとつ。映像作品だけを作るのではなく、ブランドを作り上げることで、あらゆる機会を拡大させていきます。



■『ウルトラマン』とディズニー『マーベル』ヒーローの違い



――有料のデジタルメディア『TSUBURAYA・GALAXY』もスタートしました。今後、映像配信なども手がけていくのでしょうか。

塚越 まずはコアファン向けのメディアとしてスタートしています。『ツブコン』開催の理由や、『かいじゅうのすみか』『DARKNESS HEELS』特集など、コンセプトの説明やこれからどのような展開を進めていくのかなど、作品の背景をしっかりお伝えする場として活用していきます。要望次第で、映像配信なども提供したいと考えています。



――映像作品の海外展開もさらに広げていく考えはありますか?

塚越 Netflixオリジナルの『ULTRAMAN』が全世界配信されましたが、これは世界展開の第1弾です。今後、日本だけでなく、海外のクリエイターにも参加してもらいながら作品を制作していくこともめざします。クリエイティブをコントロールしていくことは、難しくも一番大事なこと。円谷プロがやりたいことを理解してくれる海外のパートナーと組み、仕込んでいきます。これも、『ツブコン』で発表できる作品があれば、お伝えしたいと思っています。



――塚越さんが考える、日本を代表する円谷ブランドの誇れる点とは? ディズニーの『マーベル』作品に登場するヒーローとはどのような違いがあると思いますか?

塚越 『マーベル』はストーリーづくりがおもしろい。単なる勧善懲悪のヒーローものではなく、ヒーローが悩み葛藤し、そのなかから自己を見つけていく人間ドラマとしても深い話になっています。『ウルトラマン』のオリジンは、キャラクターの造形・デザインと脚本、そして合成操演などの特撮技術・演出が秀逸で優れていたことにあると思います。その点で言えば、『マーベル』も『ウルトラマン』も同じです。違いがあるとすれば、そしてそれが『ウルトラマン』の一番の特徴になると思うのですが、キャラクターとストーリーの視点だと思います。『マーベル』は個人に立脚した展開をしています。それに対して『ウルトラマン』は、自然を含めた世界のバランス、調和に立脚した展開になっています。言い換えると、グローバルとローカルの魅力の違いだと思います。今は世界的に多様化の時代で、グローバルのローカル化、そしてローカルのグローバル化が起きています。そのなかで、『ウルトラマン』はグローバルに展開できるローカルとしての普遍的な魅力を持っていると思います。それが『マーベル』との違いになると思います。円谷プロの遺伝子を大事にして、ローカルからグローバルに発信するレールをつくっていくことも自分がやるべき仕事です。

(文/長谷川朋子)
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