映画『天気の子』新海誠×RADWIMPS野田洋次郎×三浦透子インタビュー

映画『天気の子』新海誠×RADWIMPS野田洋次郎×三浦透子インタビュー

 2016年に公開され社会現象と化したアニメーション映画『君の名は。』から3年。新海誠監督が新作『天気の子』(7月19日公開)で再び旋風を巻き起こす。音楽では、RADWIMPSと再タッグを組むだけでなく、新たな試みとして女優の三浦透子を女性ボーカルとして起用。オープニングから物語と完璧にマッチした音楽が、別次元の感動体験をもたらしてくれる。



【動画】帆高と陽菜を演じる醍醐虎汰朗&森七菜



■今の時代の気分を、今、出したいと思った(新海誠監督)



――『君の名は。』から3年で長編アニメーションの新作、それもオリジナル作品を世に出すというのはかなりハイペースでは?



【新海】おっしゃるとおり、アニメーション映画の制作には時間がかかります。でも、「3年で出したい」と思ったんです。それは、今の自分の気分を、今の時代の気分を、今、世の中に出したいと思って。やってみたら想像以上にハードでしたけど、なんとか完成にこぎつけることができました。



【野田】たしか、『君の名は。』の公開日からちょうど1年後の2017年8月26日に監督から『天気の子』の脚本(初稿)をいただいて。1年足らずで脚本を書き上げたことにまず驚きました。



【新海】『君の名は。』が半年以上のロングラン上映になって、いろいろあったので、実質、半年くらいで書き上げましたかね。一日でも早く洋次郎さんに読んでもらいたくて(笑)。



――そうしたら、野田さんから主題歌の一つ「愛にできることはまだあるかい」が返ってきた。



【新海】脚本を送ったときは音楽オファーのつもりではなかったのですが、「愛にできることはまだあるかい」を聴いて「これは作るべき映画になる」と強く思えました。洋次郎さんに脚本を送った理由を、自分自身で深く納得してしまいました。



――そこから『天気の子』の再タッグが始まったんですね。



【野田】前回とは違うことをやりましょう、でも『君の名は。』の経験があるからこそ、もっと良いものを届けられるよね、というのが共通認識としてあって。さらに、今回は女性ボーカルの歌を入れたい、と提案させてもらいました。『君の名は。』との差別化もしたかったし、劇伴を全力でやってみたいという思いもありました。



【新海】そうなんですよ、「僕が歌う必要はないと思います」と洋次郎さんがおっしゃって。『君の名は。』とは異なる手触りの作品にしたいと思っていたので、女性ボーカルはいいアイデアだと思いました。ただ、そこから透子さんと出会うまでだいぶ時間がかかった。その間、僕はずっと洋次郎さんの歌の入ったデモを聞きながらビデオコンテの作業を進めていたので、完全に洋次郎さんモードになっていたんですけど、オーディションで透子さんの歌声を聴いたら、「そうきたか」と。さらにひと回り作品が広がる確信が持てて、うれしくなりました。「透子さんの歌声が輝く瞬間を、この映画が輝く瞬間になるようにしよう」と、RADWIMPSとも話しながら映画を組み立てていくことにしました。



■歌うことも、お芝居も、同じだと思っている(三浦透子)



――どのようなオーデションだったんです?



【三浦】以前出したカバーアルバム(『かくしてわたしは、透明からはじめることにした』)を聴いてくださったみたいで、候補に挙げていただいたんです。



【野田】すぐにデモテープを送ってもらったんですが、その後、ね(笑)、だいぶ待たせしてしまいました。



【新海】1年くらい(笑)。



【三浦】オーディション中だという感覚もなかったので、提出したものがどうなったか考えることもなく自然に過ごしていました(笑)。



――映画『天気の子』予告映像で主題歌の一つ「グランドエスケープ」を聴いて、ものすごくエモーショナルだな、と思いました。



【野田】でしょう!



【三浦】野田さんのディレクションで、ゆっくり丁寧にレコーディングをしていただいたおかげです。出来上がった曲が送られてきて、それを聴いて、私が歌って、また送られてきて…。歌詞の意味やその曲が物語のどこでどんな映像に合わせて流れるのか。どう解釈してイメージをふくらませるか。歌うことも、お芝居も、同じだと思っているので、私にできることを精一杯しよう、それだけでした。



【新海】初めて透子さんにお会いしたのは、RADWIMPSのスタジオでしたが、その時の印象は、いま私のやるべきことはこれなんだ、というのだけを見て、事にあたることができる人。何かを、まっすぐに運んできてくれる声だと思いました。



――2002年、SUNTORY「なっちゃん」のCMでデビューし、その後、映画、ドラマなどで女優として活動を始めた三浦さんですが、もともと歌手志望だったんですか?



【三浦】いいえ。高校生の頃から、ナレーションのお仕事をいただくようになって。自分で聞こえる声と、自分以外の人に聞こえる声が違っていて面白いな、と声に興味が湧いて、声を使う仕事もやっていけたらいいな、と思ってたんですが、歌に行くとは。ボーカリストとしてCDデビューしたり、『天気の子』でRADWIMPSさんと一緒に歌ったりできるなんて、不思議な縁だなと思います。



――劇中で使われるボーカル曲は、『君の名は。』よりも1曲多い5曲。前作ではRADWIMPSが作った楽曲に影響を受けて、アニメーションを変えた、ということがあったと聞いていますが、今回は?



【新海】『君の名は。』以上にありました。最初のストーリーは僕が考えたものですが、洋次郎さんの方が、主人公の帆高や陽菜の気持ちを知っているな、と感じる曲をたくさん作ってくれて。それを聴くたびに新しい気づきを与えてくれました。キャラクターをどう動かしたらいいか迷った時も、洋次郎さんが作った曲を聴くと、きっとこういう動きをするだろう、というのを発見していった感覚がありますね。



【野田】新海監督は最初に仕事をした時と何も変わらず、誰よりもまっすぐに純粋に頑固に、時に不器用に作品と向き合っていて、だから信頼できる。自分とすごくシンクロする部分もあるし、今回もっと高いレベルで交わって、何かを生み出すことができると確信していました。とにかく、僕はやりきろうと思ったし、新海さんの物語を受けて、僕の中から出てくるものは全部渡そうと思った。それだけでしたね、ひたすら作って渡す、そういう作業でした。



■お互いを補い合いながら、最高に楽しめた(野田洋次郎)【新海】帆高は16歳の高校生なんですが、あの年代特有の衝動、何かが破裂しそうな感覚というのは、誰もが持っていて、多くの人はいつのまにか忘れて、生きるのが楽になっていくんですけど、RADWIMPSの曲、特に今作の曲を聴くと、あの時の僕もそうだった、と、思い出させてくれるし、帆高や陽菜はいままさにそういう年頃なんだ、ということに気付かされる。あの頃の感覚みたいなものを思い出せるような物語を書きたいと自分でも思うんだけど、たぶん自分の脚本のことばだけだとそこまで届かないんですよ。だから音楽を求めてしまう。



【野田】もしかしたら、お互い様なのかもしれないですよね。『天気の子』の最初の脚本があったから、帆高と陽菜が走り出すシーンがあったから、僕の中のどこかのスイッチが反応して曲が生まれた。お互いを補い合いながらの作業だったので、最高に楽しめたのかもしれないですね。



――理想的なコラボレーションの姿ですね。『天気の子』予告映像では、三浦さんの歌声やRADWIMPSの音楽に心奪われただけでなく、帆高が大人たちに追いこまれていくようなシーンがあって、驚きました。



【新海】アニメーションだからできる表現というか、ね(笑)。10代の頃に僕らは社会のレールに乗ることを求められていくんだけど、乗りたくなかったり、うまく乗れなかったりして、苦しんだりする。今回の物語はある種、その社会のレールから逸脱してしまう人の話でもあるんです。うまく乗れない人の方が僕は好きだし、感情移入してしまうし、実はそういう人をみんな見たいんじゃないかって。



【野田】新海さんのそういうところ、本当に好きだな。



【新海】洋次郎さんもそういう人なんじゃない?(笑)



【野田】本当は乗れる人の方が少ないんじゃないかな。レールに乗っかってないことを言ったりやったりすると、叩かれるけど、わかっていてもうまく乗れない、その狭間でもがいている人の方がほとんどだと思うから、今回の物語もすごく刺さる。



【三浦】そういういろんな思いを、私の声に託してくださったんだと思うと、心からうれしく思います。たくさんの人に受け取ってもらいたいです。



【新海】いつも、こういう取材で言っていることなんですが、アニメーション映画って本当にたくさんの人たちが携わっている集団制作。200人くらいのスタッフが1年以上、毎日作業して、そこにプライドをかけているんですよね。その塊が映画。是非劇場のスクリーンでそれを浴びてほしいですし、きっと贅沢な時間になると思います。



 映画『天気の子』は7月19日より公開中。
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