大盛況を呈した夏休み映画興行、TOP10作品から見えるシーンの課題

大盛況を呈した夏休み映画興行、TOP10作品から見えるシーンの課題

 今年の夏休み映画興行は、『天気の子』『トイ・ストーリー4』の2作が興収100億円超え(推定最終興収)でシーンをけん引し、大盛況を呈した(昨年は100億円超えゼロ)。TOP10作品では、アニメとフルCG作品が7作と好調だった一方、邦画実写は1作と苦戦した。今夏の特徴は、例年以上にアニメのシェアが上がっていること。興行としては大成功と言える一方、映画シーンとしての課題も浮き彫りになったようだ。



【ランキング表】17~19年の夏休み映画興行ランキングTOP10比較



■TOP10中7作がアニメ、100億円超え2作で例年以上に高いアニメシェア



 1~7月までの興行で前年比120%ほどを記録した今年上半期の勢いがそのまま反映される好調な結果になった夏興行。9月1日までの成績で、新海誠監督の『天気の子』が117億円、ディズニー/ピクサーの原点となるシリーズ最新作『トイ・ストーリー4』が97億円と2作が100億円を超える見込みの大ヒットとなっている。



 前作『君の名は。』(16年)が250億円を突破していた新海監督の次作として大きな期待と注目を集めていた『天気の子』。現時点での最終興収は、記録的なメガヒットとなっていた前作までは届かないものの、150億円以上が見込まれる。そして、同じく前作が傑作と評価を受け、興収108億円を記録していた大人気シリーズの9年ぶり新作『トイ・ストーリー4』は、前作と遜色のない成績。この2作が夏休み映画シーンを大きくけん引した。



 TOP10作品を見ると、4位までをアニメとフルCG作品が占めており、TOP10内では7作に上る。アニメのヒットはいまに始まったことではないが、昨年がTOP10内で4作、一昨年が4作だったことを考えると、今年のヒット作の多さが際立っていることがわかる。



 そんななかで特徴的なヒットになったのが、TOP10唯一の邦画実写作品となった9位の『アルキメデスの大戦』。戦争を題材にしながらも冒頭以外ではほとんど戦争シーンがない、人間ドラマに仕立て上げた異色の戦争映画と言える。この時期は、新聞をはじめ、ドラマやドキュメンタリーなどテレビでも戦争をテーマにした番組が多くなるが、日本人が関心を持つ題材であり、とくに年配層に人気のある戦艦大和を描いたことも支持され、20億円に迫るヒットとなった。



 アニメをはじめ、実績のある人気シリーズ作品がTOP10を占めるなか、異質な存在である同作は、ほかの作品が若年層からファミリー層を多く集客しているのに対して、年配層がメイン。こうした映画がこの時期に公開され、それをヒットさせたことは映画シーンにとって意味のあることだろう。日本人が戦争を考える時期に、邦画実写の1作として大健闘した。



■本来の映画文化がもつべき多様性の喪失への懸念



 映画ジャーナリストの大高宏雄氏は、今夏の興行を「例年以上のヒット作に恵まれ、画期的な夏興行になった。今年はとくにアニメのシェアが上がっているのが大きな特徴」と評価。その一方で、「映画界としては物足りなさがある」と憂慮する。



「気になるのが、口当たりがよく、楽しく観られる作品が多いわりには、どれもが似たようなテイストの作品ばかりになってしまっていること。シネコンに行けば、ほとんどのスクリーンが若い世代やファミリー層からの支持が厚い作品で埋め尽くされ、本来の映画文化がもつべき多様性の面からすると、ずいぶんと物足りない」(大高氏)



 もちろん、夏興行は1年でもっとも大きなかきいれ時であり、配給会社がファミリー層などをターゲットにした“一番の作品”を投入してくるのはビジネスとしての必然。夏公開に向けて製作された各社の強力なアニメ作品が出揃い、上映回数が限られるシネコンのスクリーンは飽和状態となるなか、そこに実写の意欲作をぶつけていくのはリスクが高いと判断するのは当然だろう。そのため、夏の終わり頃から実写作品が増えてくる。



 それでも大高氏は、映画の特性や文化としての衰退を危惧する。「市場がアニメでいっぱいの夏に実写の注力作を出せというのは酷かもしれない。しかし、人々が高い関心を寄せる夏場の興行だからこそ、社会派の問題作や毒っ気のある作品を送り出して、より広範囲の客層にアピールしてほしい。アニメのヒットはそれはそれですばらしいと思う。ただ、今年はそこに偏りすぎている。夏に送り出す作品にもっと工夫がほしいと思う。今夏の興行を喜ぶだけではなく、関係者が映画興行をじっくり考える問題点もあったのではないか」。



 たしかに、アニメに若い世代を動員する引力があるのは間違いないが、ヒットはそれだけではない。実写でも昨年の『カメラを止めるな!』や今年の『翔んで埼玉』など、思わぬ角度からのスマッシュヒットも生まれている。大高氏は「観客にはひとつの枠に絡めとられない感性があると強く信じたい。とくに若い世代は、ひとつのトレンドに凝り固まった見方をするわけではなく、いろいろな作品を受け入れる素地があると思っている。そこを刺激する作品を送り出すべき」と指摘する。



■2000年以降、最高年間興収の記録更新も見込める推移



 この夏興行の隆盛が、今年の映画界の大きな底上げになったことは間違いない。上半期に続き、夏興行も好調であり、この先は11月に『アナと雪の女王2』、12月に『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』と強力な大型作品が控えている。



 例年落ち込みを見せる9~10月がどのくらいになるかで、年間興収はまだはっきりとは読めないものの、大高氏は「今年は記録的な年間興収になりそう。2000年以降で最高になることが見込まれる。映画人口では1億9000万人を超える可能性が出てきている」と推測する。



 現在の2000年以降の年間最高は2016年の興収2355億800万円、入場人員数1億8018万9000人。今年は夏興行までの勢いを維持して、これを上回る過去最高を記録するのか。今年後半の動向に注目していきたい。
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