若者の“TikTok離れ”加速? 変革期を迎えた『TikTok』、全世代を取り込むことができるのか

若者の“TikTok離れ”加速? 変革期を迎えた『TikTok』、全世代を取り込むことができるのか

 ショートムービーアプリ『TikTok』といえば、女子高生らがダンスやリップシンク(口パク)する動画で話題となり、若年層を中心に一大ブームとなった。一方、今夏の新CMでは、俳優の中村倫也を起用し、動物やスポーツ、美しい風景動画を中心に紹介。どんな世代でも楽しめるアプリだと伝えている。若年層を中心としたブームの沸点を超え、変革期を迎えた『TikTok』は、ブームで終わらせず、普遍性を獲得すべく全世代を取り込むことができるのだろうか。同アプリを運営しているByteDance社の担当者に、展望を聞いた。



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■著作権フリーで音楽利用できることを利点に、世界150ヵ国まで急成長



 そもそも『TikTok』は、中国発のショートムービーアプリだ。2017年8月にリリースされ、現在では世界150ヵ国75の言語で利用されている。ユーザー数は、日本国内だけで950万人に上るという(2018年12月末現在)。音楽に合わせて15秒のショートムービーを撮影して投稿したり、他のユーザーが投稿した動画も見ることができ、日本では若年層を中心に人気を集めている。同アプリの特徴について、同社のマーケティング本部の阿部ひとみさんはこう語る。



「『TikTok』の特徴は、著作権フリーで音楽を利用できることですね。各国にあるそれぞれのレーベルと包括ライセンス契約を結んでいるため、動画内で無料で利用することが可能なのです」(阿部氏)



 なかでも注目を集めているのが、レコメンド機能だ。ユーザーがどんな種類の動画を見ているのか、どんな動画に「いいね」をし、コメントしているのかなどを、同社が開発した機械学習技術で分析。それにより、ユーザーのトップ画面にある「おすすめ」には、自分好みの動画がアップされるという。



「他の動画配信アプリだと、自分から興味のある動画を探さないと見つからない仕組みですが、『TikTok』の場合は、ユーザーの動向を機械学習して精査していく。『TikTok』を使い込んでいくほど、より自分にマッチした動画が表示されるようになるんです」(阿部氏)



■“TikTokは女子高生に人気”というマインドを変えたい



 一方、『TikTok』というと、女子高生がダンスをしたり、リップシンクする動画の印象が強い。リリース当初から同世代をターゲットとしていたのか聞くと、阿部氏は「実はそうではないんです」と振り返る。



「日本においてはリリース時から、女子高生らを中心にSNSなどのシェア機能を通してジワジワと『TikTok』が広がりました。ただ我々としては、若年層をターゲットとしていたわけではないんです。あくまで全世代に楽しんでもらいたかった。『TikTok』の特徴が、たまたま(女子高生らに)ハマったのだと思います」(阿部氏)



 そこで同社は2018年7月から、幅広い世代へ訴求するため大規模な広告を展開する。CMには、お笑い芸人・くっきー!と、“菜々緒2世”と話題のモデルの黒木麗奈を起用。「アガる思い出つくっとく?」をキャッチフレーズに、『TikTok』は夏の景色や思い出を残すことができる動画共有アプリだと伝えた。また歌手のきゃりーぱみゅぱみゅや、3人組テクノポップユニット・Perfumeらが自発的に『TikTok』に投稿するようになり、メディア露出が増え、結果、DL数は大きく伸びたという。



「リリース時から右肩上がりでユーザー数は伸びていましたが、昨夏は爆発的にヒットしましたね。おかげさまで一気にDL数が増え、一定数のユーザーを確保できました。そして更なる拡大を狙い、11月頃、新たなCMを打ち出しました」(阿部氏)



 昨年11月のCMには、女優の上戸彩と若手女優の小芝風花を起用。「思い出の真ん中に」をテーマに、悪天候で落ち込んでいても『TikTok』で撮影を始めると、いつのまにか楽しい気分になるといったストーリーを展開した。阿部氏は、「同CMには、日常のどんなシーンでも『TikTok』で撮影すれば、楽しい思い出が残せるというメッセージを込めた」と話す。



「“TikTokは女子高生に人気なダンス動画アプリ”と思われがちですが、CMを通してそのマインドを変えたかった。マインドが変われば、どの世代の方でも使っていただけると思いますし」(阿部氏)



 今夏には、俳優の中村倫也とお笑いコンビ・ニッチェ(江上敬子・近藤くみこ)を起用した新CMを展開している。3人は、個性が強めなアパレル会社の同僚という設定で登場。ランチタイムに『TikTok』で好きな動画を楽しむ様子などが描かれている。



 阿部氏によると、『TikTok』ユーザーの7割は、“動画を見る専門”だという。そこで同CMでは、ダンス動画だけでなくペットや風景動画も『TikTok』上には存在するとうたった。



「ユーザーの方で、動画を撮影して投稿している人は、まだまだ少ないんですよね。撮影して投稿することに対しハードルが高いと感じる人は、空いている時間に『TikTok』を見るだけでもいいので。気分転換できるツールのひとつとして、『TikTok』で楽しんでほしいと思いました。またアプリをインストールするというハードルを下げるためにも、まずは『動画を見るだけでもいい』と伝えることが大事だと考え、今回CMを制作しました」(阿部氏)



 同社の戦略は、功を奏している。現在では、老若男女問わずユーザー層が広がっており、“TikTokおじさん”なる造語も生まれた。なかには90代の“TikToker”もいるという。



「最近では、動画のカテゴリーも広がりましたね。ペットを始め、スポーツや料理動画、『15秒で伝える英語のワンフレーズ』といった“How to”シリーズも人気を集めています。またシニア層のユーザーも増えているため、『オトナTikTok』と題した勉強会を実施し、撮影の仕方や編集方法などを伝えています」(阿部氏)



 一方、女子高生ら若い世代の“TikTok離れ”が起きているのか聞くと、阿部氏は「新作アプリは続々とリリースされるので、若い世代は試したりしているとは思います。ですが、“TikTok離れ”は感じないですね。まだまだ女子高生のユーザー数も伸びているんですよ」と胸を張る。



■後発アプリだからこそ、過去の事例から学び戦略立てている



 ショートムービーアプリといえば、過去にもさまざまなものが登場した。2012年には、6秒動画を配信する『Vine』がリリースされ話題となったが、17年にサービスを終了。他にも、「赤ちゃんフィルター」加工などで写真や動画を投稿できる『Snapchat』や、顔に動物や美肌加工が施せる『SNOW』といった同種のアプリが配信されているが、幅広い世代に普及しているかといえば、疑問符が付く。こうした現状に対し、阿部氏は「『TikTok』は後発アプリだからこそ、過去の事例から学んで戦略を立てている」と語る。



「ターゲットを狭めすぎると、その層だけ楽しめるようなアプリになってしまう。動画のカテゴリーも狭まってしまうと思うんですよね。そこで弊社では、『TikTok』は男女問わず全世代に楽しんでもらえるアプリだと、早い段階から伝えてきました。『TikTok』は、あくまでユーザーの皆さんが作っていくプラットフォームだと考えています。そして我々の役目は、ユーザーが使いやすいと思ってもらえるよう、システムを整えていくこと。最新のJ-POPを動画撮影で利用できるよう、レーベルと契約したり。ユーザーが動画を編集するときに使う『スタンプ』の種類を増やしたりと、『TikTok』を楽しんでいただく環境作りを徹底して行っていくに限ると思いますね」(阿部氏)



 とくに同社が力を入れているのが、青少年向けの安全対策だ。『TikTok』では、13歳未満のアカウント取得はできない仕組みになっているという。同社の執行役員の山口琢也さんは、「青少年の安全は最優先事項」と力説する。



「これまで他のSNSアプリなどで起きた事件や課題から学び、対策を行っています。『TikTok』の場合、24時間365日間、常に機械学習技術と人の目で監視をしていますので。プロフィール欄に『10歳』と書いてあると、利用規約違反としてユーザーに伝えていますね。また学校名のついた制服で踊らないなど、動画投稿の際注意するべき点も啓発しています」(山口氏)



 親がアカウントを取得している場合、小学生の子どもでも投稿はできてしまうが、保護者がアプリの利用時間を制限できたり、DMを送受信する範囲を設定できるよう、「ペアレンタルコントロール(保護者管理)」機能を拡充しているという。



■今後は“ライフライン化”目指す 災害時に『TikTok』が役立てることはないか模索



 今後の展望について、阿部氏はこう語る。



「まずは、ユーザー数を伸ばすことですね。『TikTok』の日本のユーザー数は950万人ですが、『Twitter』は4500万人、『LINE』は7900万人です。私たちは、まだまだ(ユーザー数を)伸ばすことができると考えています」(阿部氏)



 一方、山口氏は、『TikTok』の“ライフライン化”を視野に入れていると話す。



「災害時にはどんなメディアを使っても構わないと思うんですよね。たとえば、緊急時に『TikTok』を使って投稿したら、近くの地域の人々が気付いて助けてくれるかもしれない。災害時に『TikTok』が役に立てることはないか、模索しているところなんです。今後は、『TikTok』が社会に役立つアプリとして成長していかなければならないと考えています」(山口氏)
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