多数決ではなく少数派の意見が商品化を決める ソニー・ミュージックダイレクト、 新たなアナログレコードプロジェクト始動

多数決ではなく少数派の意見が商品化を決める ソニー・ミュージックダイレクト、 新たなアナログレコードプロジェクト始動

 ソニー・ミュージックダイレクトでアナログレコードを専門に取り扱う『GREAT TRACKS』が8月30日、一般ユーザーからリクエストを募り、希少な名盤や廃盤となった作品を復活させる新たなプロジェクト『Order Made Vinyl』を始動。このプロジェクト立ち上げの経緯や狙いをディレクターの蒔田聡氏に聞いた。



【写真】『Order Made Vinyl』第1弾リリースとして発表された4タイトル



◆レコードファンのリクエストに応え、スピード感のある商品化



 ここ10年の日本のアナログ盤市場の盛り上がりを背景に、ソニーミュージックグループでも本格的にアナログ盤制作に着手。そのなかで、2016年に発足したのが『GREAT TRACKS』というレーベルだった。



「『音質にこだわったアナログ盤を作ろう』という社長の華岡(徹)の号令のもと、『GREAT TRACKS』が立ち上がりました。最初は海外でカッティング、プレスを行っていましたが、2017年に自社にそれらの設備が導入され、工場とスタジオとレーベルが三位一体となって音質のいいアナログを追究できるという体制が整いました。今年、『GREAT TRACKS』が3周年を迎え、制作環境が整ってきたので、新たな試みをしてみようということで企画されたのが、『Order Made Vinyl』です。もともと、ソニー・ミュージックダイレクトには、廃盤になってしまった商品を一定数のリクエストにより復刻させようというサービスがあるのですが、予約を受け付けてから商品化可否が決まるので、お客さんの手元に届くまでかなりの時間がかかってしまう。そこで、アナログ盤に特化し、リクエストを随時受け付けて、『これは商品になりそうだ』というものを、商品予約を取る前から小ロットで生産し、数量限定で販売する。そうすると、予約を取ってから最短で1ヶ月くらいでお客様に届けられるんです」



 スピード感を持って商品化することと同時に、これまで抱えていたある課題の解消にもこのプロジェクトは一役買っているという。



「市販商品では、どうしても採算面を考慮してある一定数の販売が見込めるものを優先的に出さざるを得ません。そうすると、有名なアーティストや定番的なタイトルが多くなってしまう。でも『実はこういうのが聴きたいんだよね』という声に応えることも重要。だから、このプロジェクトは『多数決』ではなく、少数派の意見を大切にしていきます。我々も忘れていたりするような作品の名前をリクエストで挙げて気づかせてもらえれば、それが第一歩になります。リクエストをなるべく多くとって、それを我々ディレクターが需要のリサーチ、精査をしたうえで、商品化する作品を決めていきます。幸いにも今、関わっている5名のディレクターは、四六時中レコードのことばかり考えているような人間が集まっているので、その辺の目利きに関しては自信を持っています」



◆自社生産だからこそのクオリティー 日々 “いい音”を追究し、進化



 ユーザーの需要に応えると共に、音質にもこだわる『GREAT TRACKS』。自社生産体制だからこそできることがあるという。



「商品化が決まると、まずマスター音源を精査して、レコードにふさわしい形にマスタリングを行います。そのようにしてカッティングされたものをもう1度音を見直して、テストプレスを切る。マスタリングで確認し、テストカッティングで確認し、さらにプレス時にも確認します。すべての工程で、音の変化がわかっているディレクターがどこまでをよしとするか。僕らはスタジオもプレスも自社なので、言いたいことを遠慮なく言える。トライ&エラーを多くやれるのが強みです。また、プレスマシンに対して最適なスタンパーはなんだろうかとか、今もっとも音のいい原料はなんだろうかとか、研究を積み重ね、日々の進化につなげています」



◆サイトはコミュニティーの場にファンベースで熱量が高まれば



 『Order Made Vinyl』のリクエスト受け付けフォームがある『GREAT TRACKS』のサイトには、最新のリリース情報だけでなく、音楽にまつわるコラムやインタビューなど、レコード好きが喜ぶさまざまなコンテンツが並んでいる。そこにも、狙いがあるという。



「単なる販売だけを行うサイトではなく、読み物的なコンテンツを公開することで、サイトに定期的に訪れたくなるような工夫をしていきたいと考えています。目指すのは、販売数は決して多くなくても、レコードが本当に好きな人たちが集まり、情報共有ができるコミュニティーのような場所になることです。『こういうのない?』ってユーザーが気軽に言ってくるような(笑)。そういう、ファンベースで熱量を上げていくことが重要だと思っています。ソニーミュージックグループはそういうものを0ベースで作れるのも強み。ショップ、媒体としても機能する、実はあったようでなかった有機的なコミュニティーをレコード会社が主導してやる。とてもチャレンジングだと思います。もちろん今が完成形ではないので、サイトを訪れる人の意見も聞きながら、進化していけたらなと思っています」
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