”日ペンの美子ちゃん”オタク文化とらえてSNS時代にフィット「誰も傷つけない広告を目標に」

”日ペンの美子ちゃん”オタク文化とらえてSNS時代にフィット「誰も傷つけない広告を目標に」

 70~90年代にかけて、日本ペン習字研究会の広告漫画キャラクターとして活躍してきた「日ペンの美子ちゃん」。一時はワープロや携帯電話の普及でペン習字の需要が減少したことにより姿を消したものの、2017年には活動拠点を漫画雑誌からTwitterに移し、10年ぶりに復活。現在は4万6千フォロワーを抱えるほどの大人気アカウントとなっている。さらに今年7月からTwitter上で行った、ボールペン習字投稿企画「#愛は日ペンから」は、推しへの愛を語るオタク文化と見事にマッチングし話題を呼んだ。今回は、“6代目”美子ちゃんのTwitterアカウントの「中の人」に、多くのフォロワーを惹きつけるSNSでの取り組みについて話を聞いた。



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■「懐かしくて新しい」6代目美子ちゃんはSNS時代にフィットしたキャラクター



 これまで5人の漫画家たちによって描かれてきた「日ペンの美子ちゃん」。2017年に6代目の作者に抜擢されたのは、もともと美子ちゃんのファンで、パロディ漫画『日ポン語ラップの美ー子ちゃん』を描いていた漫画家・服部昇大さんだ。当時6代目の描き手を探していた学文社(日本ペン習字研究会の運営会社)の社員が、偶然インターネットで漫画を見つけたのをきっかけにオファーしたという。



「服部先生の漫画は、6代目美子ちゃんに求めていた『懐かしくて新しい』というテーマにぴったりの作風でした。一目見て美子ちゃんだとわかる懐かしさがありながら、最近のテイストも盛り込まれている。懐かしいのに古臭さは感じないんですよね」(学文社・浅川貴文さん)



 それから現在に至るまで、日ペンの美子ちゃん公式Twitterでは毎週水曜日に9コマ漫画の新作が更新され、2018年12月にはシリーズ初の単行本化。最新の時事ネタが盛り込まれ、“ブラックユーモア”を効かせた展開に人気が集まっている。制作の舞台裏について、“中の人”である日ペンの美子ちゃん事務局担当者は次のように語る。



「基本的に服部先生には、毎回どこかに必ずお決まりの宣伝文句を入れる”ノルマ”以外は、自由に漫画を描いてもらっています。ただしSNS連載ということでスピード感を大事にしたかったので、時事ネタは取り入れてもらうことが多いです。フォロワーのみなさんから『こんな小ネタが入ってる』『今回はこうきたか!』とツッコミをもらえるような、”みんなで作っていく美子ちゃん”を意識して、常にリプライを見たりエゴサーチしたりしながらアンテナの感度を高くしていけるように心がけています」(日ペンの美子ちゃん事務局担当者さん)



 現代の流行りだけではなく、様々な年代で流行った事柄に精通したつぶやきを見せる美子ちゃんアカウント。このネタを知っているということは…中の人はいったい何歳なのか? そんな議論も盛り上がりの一つになっている。



「17歳の女子高生という設定でやっているんですが、よく『中の人はおっさんでは…』『30代男性では?』と言われることも。アカウント管理を服部先生がやっていると勘違いされている方もいらっしゃいましたが、最近はどうやら別の人がいるらしいと皆さん気づいてくださっていて。おっさんでも、30代男性でもないということだけ、この場で言わせてもらえればと思いました(笑)」(日ペンの美子ちゃん事務局担当者さん)



 以前は漫画雑誌の裏表紙でよく見かけていた日ペンの美子ちゃん。Twitterに拠点を移してからは、読者との距離がグッと縮まったという。今年の夏には新たな試みとして、読者によるボールペン習字投稿企画「#愛は日ペンから」を実施。中の人によれば、この企画はアイドルオタクのファンレター文化から着想を得たものなのだという。



「いまの時代に手書きじゃないといけないものって、『ファンレター文化』が一番根強いと思っていて。元々アイドルオタクなのでファンレターをよく書いているのですが、周りでは『自分の字が汚い』と嘆く人を多く見かけていました。そんな中、今年の春頃に、企業アカウントの中の人を集めて美文字を競う「ペン字一武道会」という企画を美子ちゃんのTwitterで開催したんです。その時使った練習シートを『みんなもやってみたら?』と試験的に公開したら、楽しんでいただけたようだったので。そこで今度はフォロワーさんを対象に、ファンレターを想定したペン字練習シートを公開して、推しへの気持ちを表現してもらおうと。それで『#愛は日ペンから』企画が生まれました」(日ペンの美子ちゃん事務局担当者さん)



 フォロワーからリクエストされた文言で作成されたペン字練習シートは、「アイドル」「二次元アイドル」「舞台関係」「スポーツ選手」の4種類。先行して公開されたプロト版では、「応援できて幸せ」「顔が天才!」「尊すぎてつらいです」などの言葉が並び、さらに”推し“のテーマカラーにも対応できるよう全部で9色のシートが用意された。期間終了後には、シートをTwitterに投稿したユーザーの中から抽選で、「ボールペン習字講座の無料受講」や「師範によるファンレター添削サービス」がプレゼントされる。しかし実際に企画を実行に移してみると、予想外の反響もあったという。



「今回は推しへの熱い気持ちをぶつけて欲しいというのが一番にあって、字の上手い順で選ばせていただくわけではなかったのですが、実際投稿してもらったものを見ると皆さんかなり字がお上手でした。一方で、『字が汚くて恥ずかしいから参加できない』との声もあって、そこは詰めが甘かった部分でした。そこをどうしたらもっと気軽に楽しんでもらえるかなというのが今後の課題です。



 意外だったのが、単純にペン字を練習したいというよりも、『美子ちゃんや美子ちゃんのフォロワーに自分の推しを紹介したい!』 という方が多くいらっしゃったこと。みんなシートと一緒に写真を置いたりアクリルスタンドを置いた写真を投稿して、美子ちゃんの反応を欲しがってくれる方が多かったんです。オタクって布教したがりなところもあるので(笑)、「したいなら手伝いましょう!」ということで、美子ちゃんとしても引用RTで反応するようになりました」(日ペンの美子ちゃん事務局担当者さん)



■SNS漫画から原画展、CMアニメ化まで…「誰も傷つけない広告でありたい」



 2017年に復活して以来、漫画連載のみならず、原画展やCMアニメ、さらにはSNSの読者企画にいたるまで、多方面で活躍している6代目美子ちゃん。今後はどのような未来を思い描いているのだろうか。



「今回の『#愛は日ペンから』企画では、初めてフォロワーさんに向けてこちらからアプローチしたらどうなるのか試せたので、今後はまた切り口を変えて別のことにも挑戦してみたいです。歴代作者からも、『みんなで何かやりたいですね』というメッセージを受け取ったりしています。また、作者の服部先生は『実写版をやってみたい』とも。歴代の美子ちゃんでやっていなかったことは、どんどんチャレンジしていきたいですね」(学文社・浅川さん)



「服部先生のお力をお借りして漫画をアップすることでのコミュニケーションももちろんあるんですが、今後は美子ちゃんのキャラクター自体をもっと動かしていきたい。『誰も傷つけずに、おもしろいか否か』を判断しながら、広告だけど楽しんでもらえるものを目指しています。フォロワーさんからは時々『今回宣伝じゃないけどいいの?』なんてツッコまれることもあるのですが(笑)。今後もいろいろな楽しみ方ができるコンテンツを届けていきたいです」(日ペンの美子ちゃん事務局担当者さん)

(取材・文:池田麻友菜)
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