爆笑問題「テレビは事件を求めている」 シネマライブ10周年も変わらぬ“ライブ感”

爆笑問題「テレビは事件を求めている」 シネマライブ10周年も変わらぬ“ライブ感”

 爆笑問題をはじめとした人気芸人たちが出演する、2ヶ月に1度、東京・銀座の時事通信ホールで行われているお笑いライブ『タイタンライブ』。10月11日に行われる10月公演は、「シネマライブ」として映画館での上映を始めて10年という節目となる。お笑いライブを映画館で同時配信するという、当時は画期的だった試みも、この10年でかなり定着した感があるが、舞台に立つ芸人としては自身のネタが映画館で見られることをどう捉えているだろうか。爆笑問題の2人に話を聞くと、シネマライブの意義をきっかけに、2人が日々出演しているテレビの持つ可能性にも話が弾んでいった。



【写真】笑顔で思い思いのポーズを披露する爆笑問題



■時事ネタ漫才も「危険なことをやりたいと思ってない」 タイタンライブは「漫才を続ける理由のひとつ」



 全国のTOHOシネマズ系映画館で同時生中継する「シネマライブ」は、お笑い好きのみならず、お笑いイベントの会場には足を運んだことのない層や地方のお笑いファンにも「気軽にライブを体感できる」と好評を博している。今年の6月公演から和歌山、富山が加わり、全国20館での上映となった。まずは、田中裕二が10周年を迎えた感想を率直に打ち明ける。



 「もう10年経ったんだって、あっという間でしたね。当時はライブビューイングという言葉が出始めた時期で、映画館でお笑いライブを見ると言ってもピンとこない感じはあったと思いますけど、今は割と定着しつつあるんじゃないかな。上映してくれる劇場もいっぱい増えて、お客さんも何度も通っている方がいらっしゃるので、お笑いライブを映画館で見るのに慣れてくださったのかもしれないですね」



 一方、相方の太田光はこの構想を聞いた当初のことを振り返る。「これは社長(太田光代氏)のアイデアで、社長はよく『その話をした時に、あなたはいい顔しなかった』って言うんだけど、オレはいいなと思ったんですよ。当時、たまたま読んでいた雑誌で、アメリカでライブビューイングみたいなのがウケているという記事を見ていて。スポーツカフェみたいなのはあったんだけど、映画館でそれをやるっていうのが面白いなと。それまでの日本でなかったことだけど、TOHOシネマズの技術が整って環境ができたということだから、『いいね』って言ったんだけど、社長からは『全否定していた』って言われちゃう(苦笑)」。



 タイトルにもあるように、収録されたものを上映ではなく、同時生中継することから、その場に居合わせなくても臨場感を味わうことができるのが、シネマライブの醍醐味だ。太田は「お笑いライブとしては、時事通信ホールくらいのキャパ(収容人数は約300人)がちょうどよくて、あれ以上広げちゃうとキツくなっちゃう。もうちょっとテンポをゆったりさせなきゃ伝わらないし、微妙なことができなくなっちゃうんです」とお笑いライブと会場の広さの関係を力説する。「だから、多くの人に見せたいっていう時に、映画館での同時中継は一番いいアイデアなんです。映画館ではどういう風に見えているのか、自分では確認できないけど、体験した人から『けっこう笑っていますよ』とも聞くし、慣れてくるとさらに良くなっていく」と期待を込める。



 その一方、宣伝方法には不満があるようで「ライブの売り文句で『テレビじゃできない』みたいなことを書くなって言っているんだけど、そんな風に書いているでしょう。オレらはテレビもライブも、やることは基本的には変わらないんですよ。時事ネタを扱うけど、そんな危険なことを別にやりたいと思ってないしね。長井(秀和)とかは別ですよ。絶対にテレビではオンエアできませんし、本当はライブでもダメなんですから」とチクリ。一方、田中は事務所ライブの意義を強調する。



 「僕らが芸人を始めた約30年前は、東京では事務所ライブっていうのはほとんどなくて、渡辺正行さんが主催していたラママライブくらいでした。それから、寄席からライブっていう文化になっていって、太田プロ、ホリプロとかもやり始めて、事務所がライブをやるのが当たり前になってきて、その流れでタイタンライブも1996年に始まって。特に若手にとって、定期的に舞台に立てる事務所ライブがあるのは大きいです。僕らにとっても『爆笑問題 with タイタンシネマライブ』と銘打たれている以上、僕らが出ないというのはありえない状況で、それが2ヶ月に1回はやってくるので、漫才を続けるひとつの理由になっています」



 劇場が全国に広まるにつれて、大きな役割を果たしているのが、太田が愛用しているPCやスマホなどでラジオを聞けるサービス「radiko.jp」だ。全国のラジオ局の番組をエリアフリーで聞くことができる「エリアフリー機能」(2014年4月開始)と、1週間以内なら無料で聞き返せる「タイムフリー機能」(16年10月開始)を駆使して、広島の中国放送(RCC)の“天才”横山雄二アナを筆頭に全国各地のパーソナリティーと交流を深め、結果的にそれがシネマライブにも好影響を与えている。太田は「この間も横山は東京に来ていたけど、広島の劇場では河村(綾奈)ちゃん、中根(夕希)ちゃんといった女子アナも公演後にサイン会をやったりして、本当にありがたいよね。ただ、上映劇場が増えると、名前を呼び忘れてないか心配になっちゃうね」と笑顔を見せる。



 6月公演では、シネマライブの可能性を感じさせる出来事もあった。“いま最もチケットが取れない講談師”として話題の神田松之丞が初登場するとあって、関東全館を含む10館以上の映画館でチケットが完売するというかつてない活況を呈した。太田は「あれで弾みがついた感じがあって。8月の公演も普段よりも入っていて。やっぱりすごいよね、あいつの集客力は。いつまで続くかわからないけど(笑)。だいぶ、業界的なルールもわかってきたからね(笑)。だいたいオレが苦情を受け付けているから」とニヤリ。田中も松之丞の持つ毒に舌を巻く。



 「オレは講談について詳しくないから、その辺の評価もできないんだけど、実際に見た時に迫力あるなと思いましたね。ラジオ(『神田松之丞 問わず語りの松之丞』)は、たまに聞くんですけど、あの毒舌ギリギリのトークはなかなかできないですよ。芸に自信があるから、何がどう嫌われようが関係ないっていう、絶対的な自信のようなものが伝わってきて。だから、太田のピカソのやつ(※)は本当に面白かったし、あれをネタにできる奴は他にいないんですよ。ただ単に太田のことが嫌いでやっているんじゃなく、太田のファンであれを言うっていうことは、すごい芸だなと思うし、すげー人間だなと。同時にバカだなとも思いますけど、その面白さはありますよ(笑)」

(※『サンデー・ジャポン』で、太田が学生時代に『死んでもいい』と思っていた頃に、ピカソの絵を見たことで人生観に変化が起こったことを語っていたことを、松之丞は毒舌まじりにネタにした)



 今年3月に放送されたフジテレビ系『ENGEI グランドスラム』では、太田が転倒し側頭部を強打。大事には至らなかったものの、休養のためレギュラー番組を欠席した。5ヶ月後に再び『ENGEI』に登場すると、心配する周囲をあざ笑うかのように太田は転倒ネタで爆笑を誘った。太田は「『ENGEI』でオレらがやったネタなんて漫才でもなんでもなくて、ただもう叫んでいるだけのひどいもんだったんだけど、あれがテレビの面白さで。要するに、自分が前回滑って頭を打ったみたいなことを、自分のネタをやっているようなわけですから」と冷静に分析しながら、こう続けた。



 「ちゃんとした漫才はああいうものじゃないんですよね。だけど、オレはテレビっていうのは事件を求めているっていう思いはあって、特に生放送はそうだから。これはひでーなと思いながら、あれをやることはしょうがないっていうか、やるしかないっていうか。求められているかはわからないですけどね。例えば、闇営業した連中が復帰して、それをネタにしたのは不謹慎だって言われることがあるけど、それはやんなきゃいられないんだよ。いろんな反応はあるのは当然だけど、どっちにとってもやらざるを得ないでしょうっていうことなんだよね」



 太田は、1968年の成田空港反対闘争におけるテレビマンたちの闘いを描いたノンフィクション『お前はただの現在にすぎない テレビになにが可能か』について、敬愛する高田文夫氏が「テレビの真髄だ」と話していたことを自身のラジオで触れていたが、テレビと同じくシネマライブでも“ライブ感”は重要な要素だ。今後のシネマライブに「やっぱり今面白いっていう人に出てほしいですね。今だったら霜降り明星かな」と声を弾ませながら、不仲で知られる「おぼんこぼんのおぼん師匠から出してくれと催促があって、それをどうやってやんわりと断ろうかなと思っているんですよ。やっぱり、師匠ですから、気を使いますよ」と冗談交じりに笑わせた。幸か不幸か、タイタンシネマライブには、これからもハプニングが待ち受けていそうだ。
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