“映画愛”溢れるドラマ『ルパンの娘』、音楽にも隠されている大胆パロディ

“映画愛”溢れるドラマ『ルパンの娘』、音楽にも隠されている大胆パロディ

 話数を重ねるごとに盛り上がりを見せているドラマ『ルパンの娘』(フジテレビ系/毎週木曜 後10:00)。本作は代々泥棒一家の娘と、代々警察一家の息子との許されない恋愛を描く異色のラブコメディー。映画『テルマエ・ロマエ』(12年)や『翔んで埼玉』(19年)をヒットに導いてきたクリエイター陣が制作しており、物語同様に映画の大胆なパロディを取り入れた劇伴(作品の裏で流れる伴奏音楽)やサカナクションによる主題歌など、作品とシンクロした音楽も人気のカギとなっている。そこで、ポップカルチャー研究者の柿谷浩一氏(早稲田大学総合人文科学研究センター)に、本作の劇伴の魅力について語ってもらった。



【写真】深田恭子、ピチッとした“泥棒スーツ”姿でポーズ!



◆『ミッション:インポッシブル』を想起するような、刺激的なオープニング



「振り切ったコメディが話題の『ルパンの娘』の音楽は、映画『翔んで埼玉』の劇伴を担当したFace 2 fAKE が手がけている。特徴は、過去の映画音楽を引用した音づくりと、それをパッチワークのように組み合わせた楽曲構成。タイトルバックを飾る激しいリズムとボンゴの響きのテーマ曲は、『ミッション:インポッシブル』の冒頭。物語後半の強盗シーンを彩る「ワンダバダ」というスキャット曲は、『帰ってきたウルトラマン』の作戦シーンを強く想起させる。



 ほかにも、泥棒の主人公・華(深田恭子)と、警官の和馬(瀬戸康史)の「結ばれない恋」を盛りあげる悲哀たっぷりの旋律は、『ロミオとジュリエット』のテーマ曲の忠実なリメイクだったりと、誰もが耳にしたことのある映像音楽をここまでわかりやすく、複数詰め込むのは異色。しかも、そのどれもがムードを醸し出すレベルでなく、本格的に作り込まれているのだ。その本気のサウンドが、特撮、スパイ、アクション、ロマンスといった、さまざまな映画の臨場感や迫力を丸ごと作品に呼び込んで、個々のシーンを演出している。



だが、これはあくまでドラマ。大半の場面で、実際の映像の内容や情景よりも“オーバーな音づけ”に映ってしまう。それが各場面をコミカルに誇張し、作品全体のフィクションとしての強度を高めて、豪快なショーのようなユーモア感を生んでいるのが妙。



◆もちろん、『ルパン三世』へのオマージュも忘れない



 一方で、タイトルにある『ルパン三世』へのオマージュを忘れていないのも憎い。それが最も顕著なのが、物語の核である「怪盗(三雲家)VS警察(桜庭家)」の対比。泥棒一家を際立たせるのは『ルパン三世』の世界観を映すトランペットを軸にしたjazzyな雰囲気。対して警察一家を象徴するのは、時代劇の殺陣で流れるような尺八と太鼓が作る緊迫感で、それは石川五ェ門が活躍するシーン音楽そのもの。



 華と和馬のロマンチックな場面で流れるMay.Jのスキャット曲も、峰不二子のテーマ曲『ラヴ・スコール』を意識した作りに思える。まるで物語全体で『ルパン三世』のイメージをまとって再現するような作りが、単に「捕まえられる側/捕まえる側」が敵対するだけでなく、両者の間に人情が入り込む奇妙な関係と物語性を、名作に重なる形で届けてみせているのも魅力だ。



 音楽のパロディも中途半端だと、ツッコミの的になって終わりかねない。その点、今作の大胆なトレースは、簡単なようで相当の挑戦を含んでいる。そこを高く評価したい」
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