活動歴19年のベテラン 結婚生活と趣味の両立の秘訣は「お互いの尊重」

活動歴19年のベテラン 結婚生活と趣味の両立の秘訣は「お互いの尊重」

 ウイッグや衣装を用意して、好きな漫画、アニメ、ゲームなどのキャラクターに変身するコスプレ。日本を代表するポップカルチャーの一角として海外からも注目されており、その人気も過熱の一途を辿っている。今回はコスプレ歴19年で、最近ではダンスパフォーマンスにも取り組むなど、つねに新たな活動に挑戦し続けるコスプレイヤー・甲斐枝カエさんにインタビューを実施。ベテランならではのお話や、コスプレ以外の素顔について話を聞いた。



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■中学生でコスプレデビュー「当時はウイッグではなく、地毛のカットでキャラに寄せていました(笑)」



――プロフィールをお願いします。



【甲斐枝カエ】甲斐枝カエ、30代になりました。既婚です。コスプレは10代前半から続けていて、歴は19年になるみたいです。長いですね(笑)。



――19年とは、かなりのベテランですね。コスプレを始めたきっかけは?



【甲斐枝カエ】当時はSNSが活発じゃなかったので、個人サイトを設立している方が多かったんです。自宅のパソコンで好きなアニメの絵を検索して個人サイトをブックマークしていたんですけど、その中にコスプレもしている方がいて。コスプレのイベントがあることもそこで知りました。「こんな世界があるんだ」と、衝撃を受けたことを覚えています。



――偶然見つけた1枚の写真から、コスプレに惹かれていったというわけですね。



【甲斐枝カエ】そうなんです。とはいえ、中学生の私には売っている衣装は高価でしたし、作り方も分からなかったので、まさか自分がコスプレをするなんて思ってなかったんです。たまたま、その年のジャンプフェスタに遊びに行ったとき、『テニスの王子様』の公式衣装が売っていたんですよ。しかも、中学生でもギリギリ買えるくらいの値段だったので、「この衣装があればコスプレができるかも」と思い、速攻で購入しました。あのポロシャツと出会えていなかったら、コスプレを始めていなかったかもしれませんね。



――どんな衣装だったんですか?



【甲斐枝カエ】みんなが試合で着ているポロシャツです。1枚持っていればいろんなキャラクターになれたので、当時はあのポロシャツを着倒していました(笑)。近所の美容院に漫画の切り抜きを持っていって、「このキャラクターと同じ髪型にしてください」とお願いして。数ヵ月後、髪が伸びてきたなって思ったらまた違うキャラクターの切り抜きを持って行って、地毛を推しキャラに寄せる形でカットしてもらっていました。当時はウイッグじゃないレイヤーさんもたくさんいたので、その方法を疑ってなかったです。中学生らしいエピソードですよね(笑)。





■SNSで昔の仲間を発見し、イベントが同窓会の役割を果たすことも



――コスプレとともに、中学、高校時代を過ごされてきたわけですね。



【甲斐枝カエ】はい。コスプレといっしょに成長してきたので、それがない自分の姿は想像できないですね。私は幼稚園から高校までエスカレーター式の学校に通っていたので、ふつうに生活していたらずっと同じ友だちと過ごしていたと思うんですけど、コスプレイベントに参加するようになってからは、年齢層や職業なども様々な方と接する機会が増えたんです。好きなアニメや漫画の話で盛り上がれる仲間や、衣装の作り方などを教えてくれる先輩方など、そこでしか得られない経験をたくさんさせてもらえたことが、かけがえのない財産だと思っています。



――そのころに知り合った方たちとは、今でも交流はあるのでしょうか?



【甲斐枝カエ】もちろん、今でも連絡を取り合っています。お互いの結婚式にも行ったりしている子もいますし。ずっとつながってなかった方でも、Twitterで「もしかしたら、昔いっしょに撮影をしたあの人かも」という再会もあったりするんですよ。DMに連絡してみたら「覚えてるよ~」って言ってくれて、久しぶりにイベントで会えたり。せっかく連絡しても、普通なら「お茶でも……」とまではならないような関係でも、イベントという場所があることによって、会うハードルが下がるのも嬉しいですね。19年もやっていると、たくさんの思い出があります。



――19年間、休まずコスプレ活動をしているんですか?



【甲斐枝カエ】大学受験の時に1年間だけお休みしていましたが、それ以外はこれといった活動休止はしていないです。受験の間も「受験が終わったら『創聖のアクエリオン』の頭翅の衣装を作るぞ!」というのをモチベーションにしていて、受験が終わった日には生地を買いに行っていました。その後コスプレを続けたのも、衣装制作への欲求が大きかったかもしれないですね。アニメやゲームなどの作品を見ていると、衣装が作りたくなっちゃうんです。「作ったから、着てイベント行こうかな」っていう順序の時もあるくらい(笑)。



――衣装制作がモチベーションになっているレイヤーさんはレアケースかもしれないですね(笑)。オリジナルの衣装なども制作されているようですが、お仕事としてコスプレされることもあるんですか?



【甲斐枝カエ】オリジナルのコスプレがあれば、撮影会や写真集、グッズ販売などで収入を得られる方法がありますが、私の場合、そうした活動を始めたら衣装のクオリティが下がってしまいそうだなって(笑)。今は生地が高くても制作に時間がかかっても、“お金がかかる趣味”として納得して楽しめていますけど、お仕事になった途端、損得を考えて100%の気持ちで楽しめなくなってしまう可能性が高いなと。今のところ、「コスプレはあくまでも趣味」という気持ちで向き合っています。



■新しいことや新しい仲間との出会いも大切「長くやっているからこそ得たことを次の世代に伝えたい」



――ご結婚されているとのことですが、コスプレ活動についてご主人とお話することはあるのですか?



【甲斐枝カエ】旦那さんの方からコスプレに積極的に関わってこようとはしないです(笑)。今年で結婚7年目になるんですけど、これといった不満を言われたことはないですね。週末、私がコスプレ活動で出掛けると言っても快く送り出してくれますが、「だからといって嫌な思いをしていないとは限らない」と思うようにしています。たとえば、土曜日にイベントに行ったら、日曜日はふたりで過ごす時間にしたり。衣装を作るにしても、部屋にこもりっぱなしにはならずに、居間でいっしょにドラマを見ながらチクチク縫ったり。好きなことを我慢はしないけど、それをすることで相手に嫌な思いをさせないように。お互いに相手のことは尊重しつつ、そのうえでやりたいことも楽しめるように、ちょうど良い距離感を保っている感じです。



――そうしたなか、最近では新たな趣味として、ダンスパフォーマンスにも取り組まれるようになったそうですね。



【甲斐枝カエ】実は最近は、写真撮影は1時間もすると「もう十分撮っただろう」と感じてしまい、それ以上、集中力がもたなくなってきてしまって。最近の写真加工の文化にもついていけなくて……(笑)。美しい写真を出したいという気持ちはもちろん分かるんですけど、私の技術や感性がそこまで追いついていないのかも。それで「何かコスプレの新しい楽しみ方はないかな」と感じていたときに、友だちが「コスプレ衣装を着て、ダンスパフォーマンスをしているチームがあるんだけど、いっしょにやってみない?」と誘ってくれたんです。動きや表情で、コスプレの魅力を発信するのもおもしろそうだなと思い、試しに参加してみたところ、ものの見事にハマりました(笑)。



――今は写真撮影よりも、ダンスの練習に取り組む時間の方が多い感じですか?



【甲斐枝カエ】最近だと、東京ゲームショウ2019で実施された『Cosplay Collection Night @TGS』に出演しました。自分たちのパフォーマンスを大勢の方に見ていただくことになるので、ちゃんとしたクオリティに仕上がるよう、練習にはかなり時間をかけるようになってきました。



――コスプレ歴19年目にして、新たな方向性が見えてきましたね。



【甲斐枝カエ】それともうひとつ、ダンスパフォーマンスを始めるようになって、また新しい方たちと話をする機会が増えてきたのも新鮮な感覚ですね。イベントに参加するうちに、いつもいっしょに行動するメンバーが固まってきちゃって。もちろん、それはそれで楽しいからこそなんですけど、新しく交友関係が広がれば、新しい知識や感覚も手に入る可能性が広がる。コスプレのクオリティアップのためにも、新しい出会いを求めるのは大事だと思うんです。



――新しい方々と出会い、感じたことはありますか?



【甲斐枝カエ】今まさにコスプレと出会ったばかりの世代に、衣装の作り方とか、コスプレの楽しみ方とか、いろいろ教えてあげたいな、という思いが芽生えました。右も左もわからなかった中学生の私に、先輩たちがいろんなことを教えてくれたことに、本当に感謝していて。大げさかもしれないですけど、そうした知識や技術を次の世代にも伝えていくことが、私なりのコスプレへの恩返しなのかな…と考えています。若い世代がもっとコスプレを好きになってくれるように、サポートするような活動もやっていけたらなって思っています。





取材・文=ソムタム田井
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