2.5次元俳優からシンガー・ソングライターへ ジャンルレスに活動する阪本奨悟のトライスピリッツに迫る

2.5次元俳優からシンガー・ソングライターへ ジャンルレスに活動する阪本奨悟のトライスピリッツに迫る

 10月8日にシングル「無限のトライ」を発表する阪本奨悟。ミュージカル『刀剣乱舞』などの出演で、2.5次元俳優として有名な彼だが、現在の主軸はシンガー・ソングライターだ。14歳の時、ミュージカル『テニスの王子様』の主役に抜擢され、その後も着実に俳優としてのキャリアを積み重ねていたが、音楽活動への欲求が高まり、17歳で所属事務所を退社。地元・兵庫に戻り、たった1人で路上ライブからミュージシャンとして再出発した当時の想いから、さまざまな経験を積んだからこその現在をたっぷり語ってもらった。



【写真】阪本奨悟も声優として出演するアニメ『トライナイツ』豪華なキャスト集合写真



■俳優を続けながら音楽活動をするのは、当時はカッコいいと思えなかった



――「音楽がやりたい!」と思い始めたのは、いつからなんですか?

【阪本奨悟】母親が福山雅治さんやサザンオールスターズさん、Mr.Childrenさんが好きだったので、僕も小さい頃から一緒に聴いて育ちました。で、小6ぐらいから父親に教わってギターを始めて、たまに自分で曲を書いたりはしてたんです。でも、きっかけは『テニスの王子様』ですね。ミュージカルの舞台に立って、人前で歌う気持ち良さを知って、自分らしさみたいなモノをすごく感じたんです。自分が作った曲をステージで歌いたい、それを一生やっていきたい! と、衝動的に音楽へ気持ちが突っ走っていきました。



――俳優を続けながらではダメだったんですか?

【阪本奨悟】周りにもそう説得されたんですけど、“音楽一本で道を切り開いていく”という姿に憧れてて…。でも、地元に帰って歌ってる時に、幼い頃から演技をやっていた経験が、歌詞を書いたり、歌の世界を表現することに生きてたんだな、と痛感して、どんなことも自分の肥やしになるんだ、やれることは何でもやったほうがいい、と気づきました。でも当時は視野が狭かったのもあって、俳優をしながら音楽も、というのは、自分の中でカッコいいと思えなかったんです。



 そして、地元に戻り、念願の音楽活動を開始。右も左もわからない状態で、まず思いついたのが路上ライブ。ギター1本持って大阪駅に行ったが、そこで厳しい現実を思い知らされることになったという。



【阪本奨悟】本当に誰1人見向きもせずに通り過ぎて行くんですよ。怖くなって、ギターを鳴らすことはできても、なかなか声を出せませんでした。ミュージカルをやっていた時は、大きな会場にたくさんのお客さんが来てくれてて、それが当たり前だと思ってたんですね。簡単にそういう場所に立ててしまったから、それが自分だけの力じゃないってことがわからなかった。自分が立てば、みんなが僕を見てくれて、声援を送ってくれて…というのを経験してただけに、ショックが大きすぎて本当に耐えられなくて、終わった後、泣きました。僕はとんでもない道を選んでしまったんじゃないか…って、ものすごく後悔しました。その後、1か月ぐらい引きこもって、病みまくった歌ばっかり作ってました(笑)。



――そんな大きな挫折を味わうと、路上ライブなんて怖くてもうできなくなりそうですけど、またやってみよう、と思ったきっかけがあったんですか?

【阪本奨悟】音楽の世界で頑張りたいのに、孤立無援で、ムシャクシャしてたんですよ。そんな時に、当時のスタッフの方が電話をくれて、「音楽をやるって事務所を辞めて、今何やってるんだ?」って。で、一緒にやってくれる人がなかなか見つからない、って話をしたら、「甘えるな!」って叱られました。「本気でやりたいなら、1人でもできるだろ! 1人だと怖いから、周りを引き連れて歩きたいだけだろ」と。正論を言われてすごい悔しくて、再び路上に行ったんです。そしたら、さらに病んじゃって(笑)。また2ヶ月ぐらい引きこもりました。



――どうやって苦しみを克服したのですか?

【阪本奨悟】それが今の自分なんだから、と思って、また路上に行くようになったんです。相変わらず立ち止まる人が居ない中、歌ってたんですけど、それをそのスタッフさんがコッソリ見に来てたみたいで、また後日電話が来て、「みんな、辛くても頑張って仕事したり学校行ったりしてるんだから、不満ばっかり垂れ流してる甘えた歌なんて、誰も聴かないよ」って言われたんです。じゃあ、どうしたら、そんな人たちの背中を押せるんだろう…って試行錯誤するうちに、やっと1人、2人…と聴いてくれる人が出てきて…。近くで路上をやってて顔見知りになった人が、今度一緒にライブハウスに出ないか? って誘ってくれて、それをきっかけにライブハウスでも活動し始めて、やっと50人のワンマンライブができるようになったんです。



■あらゆる経験が音楽をやる上でプラスに働いている



 そして、21歳の時、シンガー・ソングライターとして、以前所属していた事務所と再契約することに。以来、ライブハウスでの活動はもちろん、『全国阪本化計画』と銘打った全国のショッピングモールやCDショップでの新たなファン開拓の為のイベントも勢力的にこなしている。



――音楽活動と並行して、昨年『刀剣乱舞』で、2.5次元ミュージカルにも復帰されましたね。久々に戻った世界はいかがですか?

【阪本奨悟】それまで1人で活動していた期間が長かったので、久しぶりに共同作業の場に入って、やはり最初はなかなか慣れませんでした。でも、自分とは全然違う感性や生い立ちの人たちとコミュニケーションを取りながら一緒に作品を作っていくのは、発見や刺激がたくさんあって、自分にとって、すごくプラスになってます。それと、以前は“歌は歌、演技は演技”っていう考えだったんですけど、ミュージカルではその2つが隔たりなく繋がっている、ということに今さらながら改めて気づきましたね。



――今年から、アニメ『トライナイツ』などで声優にもチャレンジしていますね。

【阪本奨悟】今までは自分の体を使ったり、表情の変化で演じるのが当たり前だったので、声だけで、しかも絵のタイミングに合わせなきゃいけない、というのがすごく難しくて最初はめちゃくちゃしんどかったです。専門的な技術が必要とされるので、自分にはムリだ、って何度も思いました。でも、普通の芝居とは違った面白さや魅力を感じたので、機会があればまたチャレンジしたいです。



――「何事も自分にとってプラスになる」と先程おっしゃっていましたが、声優の経験は、どんな面でプラスになりましたか?

【阪本奨悟】まず、声だけで表現することが、歌の世界を伝えることに生きてますし、指導の先生に、マイクに乗りやすい声の出し方を教えていただいたのも大きいです。舞台での発声、そして、今回声優を経験して学んだ発声…と、自分の声の“おいしい場所”をどんどん発掘してる感覚。声をコントロールできるようになってきたので、歌の表現力が広がった気がしています。



――阪本さんといえば、2.5次元のイメージのほうがまだ正直強いですし、活動のフィールドが広がっていくことで、音楽がメインではなく「2.5次元俳優が片手間に音楽活動をしている」と思われる心配はありませんか?

【阪本奨悟】以前は、そう思われるのがイヤで、それもあって一旦キャリアをリセットしたという部分もあったんです。でも、穿った見方をする人は必ず居るし、音楽一本にしたとしても、批判的な目で見る人は居ますよね。だけど、どんなジャンルでも、その人が本気で楽しんで一生懸命やってさえいれば、認めてくれる人も必ず居ると思ってます。違う分野を始めたことに対して、「アイツは片手間に遊びでやってるんだろう」と思われないくらい、すべてにおいて僕が表現する努力をしなくてはいけないって思います。



■奇をてらわず素直な言葉で表現する―それが阪本奨悟の個性の1つ



――新曲「無限のトライ」は、この『トライナイツ』の主題歌ですよね。どんな想いで作られたんですか?

【阪本奨悟】このアニメの主人公は、一旦芸能界を離れて再び戻ってきた僕と重なる部分があるので、とても書きやすかったです。自分の生い立ちを振り返ることもできて、よりリアルな感情で歌詞を書けました。自分の生身の言葉が作品になったな、って気がします。



――歌詞は、実体験、想像、どちらが多いですか?

【阪本奨悟】基本的には、自分の経験や感情を元にしています。ウソを書いても気持ちよく歌えないし、聴いてる方にも伝わらないと思うので。その時々の自分と向き合って書いていければ…。年齢や心境でテーマはいろいろ変わっていくかもしれないけど、“夢に向かって頑張る”というのは、この先もずっと切り離せないだろうし、切り離すべきではない、と思ってて、それを素直な言葉で表現していきたいです。今の時代、奇抜さやインパクトを求められてる感はありますが、僕はスパイス的に入れることはあるけど、ストレートな表現が好きなので…。それが、阪本奨悟の個性の1つかな、と考えています。今後変わっていくかもしれませんけど。



――常に今の阪本奨悟が詰まっているんですね。

【阪本奨悟】26歳の自分が、17歳の頃に書いた曲を見ると、今だったらこんなふうに表現するのに…って思ったりするんですが、年齢を重ねていく上で、ずっとその繰り返しなんだろうな、と。17歳当時は、それが自分の最高だったし、今回の「無限のトライ」も今の自分の渾身の作品で、過去の曲から並べてみても、今現在の阪本の最高の1曲はコレだ! と思えるけど、10年後に振り返ったら、違う想いを抱くと思うんです。でも、それは自分が更新できてる、ってことなので、新しい要素が加えられたり、自分の中にある新たなモノを発見できたり…と、進化を感じながら進んでいけたら、それが一番楽しいと思います。



■音楽に目覚めた頃から、武道館のステージに立つのが夢



――音楽面で最近感じた進化はありますか?



【阪本奨悟】こだわりが強いほうで、今ももちろん譲れない部分はあるんですが、最近は、プロデューサーと自分の考えが全然違った時に、それが作品の世界を広げられると思えれば受け入れるべきだという考えになりました。自分1人で作ってた時は、気楽に、ただ楽しさだけで作業できて気持ち良かったんですけど、それで出来上がる音楽は、自分の才能の問題もありますが、たかが知れてるんじゃないかな、って思い始めました。自分1人でやって食べていけるんだったら、もっと早く結果が出ててもおかしくない、って。だから、ちょっとでもいいな、と感じたアイデアは吸収するようになりましたね。



――最後に、当面の目標を教えてください。

【阪本奨悟】音楽に目覚めた頃から、武道館のステージに立つのが夢なんです。それが実現したら、第一段階として成功なんじゃないかと思ってます。アルバムも早く出したいですね。ストックは結構あるんですけど、その中から今の阪本が出すアルバムの曲をじっくり考えていきたい。それも楽しい作業になりそうです。

(取材・構成/鳥居美保)
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