大人にこそ観てほしい、姉妹と幼馴染の恋物語「 空の青さを知る人よ 」

10月11日から公開中の映画「 空の青さを知る人よ 」


本作は「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」「心が叫びたがってるんだ。」の監督・長井龍雪、脚本家・岡田麿里、キャラクターデザイン&総作画監督・田中将賀のメインスタッフが再集結し、埼玉・秩父を舞台にした注目のオリジナルアニメ映画です。

プロジェクトが発表されたときから、「あの花。」「ここさけ。」とも数十回と観た私が、この作品を観ないわけにはいかない……。という思いで、ようやくようやく観てきました。


結論から…予想以上にめちゃくちゃおもしろい映画でした…。「あの花。」や「ここさけ。」が高校生や子供たちの思春期の青春群像劇ならば今回は、大人だからこそ思うところ、子どもだからこその感情。この二つを描いた作品だと思っています。


自分はネタバレなく作品の本質や魅力を伝えるのが非常に苦手なので…ネタバレありで作品の魅力を伝えていきたいと思う。


このページの目次

1 あらすじ2 キャラクターの整理3 タイトルに込められた想い4 「しんの」と「慎之介」5 大人こそ見てほしい
■あらすじ

まずはあらすじ。


山に囲まれた町・秩父に住む、17歳の高校二年生・相生あおい。

彼女は将来の進路を決める大事な時期なのに、受験勉強もせず、暇さえあれば大好きなベースを弾いて音楽漬けの毎日。そんなあおいが心配でしょうがない姉・あかね。

二人は、13年前に事故で両親を失った。当時高校三年生だったあかねは恋人との上京を断念して、地元で就職。それ以来、あおいの親代わりになり、二人きりで暮らしてきたのだ。あおいは自分を育てるために、恋愛もせず色んなことをあきらめて生きてきた姉に、負い目を感じていた。姉の人生から自由を奪ってしまったと…。そんなある日。町で開催される音楽祭のゲストに、大物歌手・新渡戸団吉が決定。そのバックミュージシャンとして、ある男の名前が発表された。金室慎之介。あかねのかつての恋人であり、あおいに音楽の楽しさを教えてくれた憧れの人。高校卒業後、東京に出て行ったきり音信不通になっていた慎之介が、ついに帰ってくる…。

それを知ったあおいの前に、突然“彼”が現れた。“彼”は、しんの。高校生時代の姿のままで、過去から時間を超えてやって来た18歳の金室慎之介。思わぬ再会から、しんのへの憧れが恋へと変わっていくあおい。一方で、13年ぶりに再会を果たす、あかねと慎之介。せつなくてふしぎな四角関係…過去と現在をつなぐ、「二度目の初恋」が始まる。


■キャラクターの整理

・相生あおい

13年前に両親を事故で亡くし、姉のあかねと共に暮らしている少女。

子どもの頃に姉の彼氏でもあった金室慎之介、通称・しんののバンドに憧れてベースを弾くようになる。

高校生になり、進路を決める時期になってもベースばかり弾いて、こんななにもない街から出て東京へいきたいと願っている。


・相生あかね

13年前に両親を事故で亡くし、妹のあおいと共に暮らしている女性。

高校生の頃、恋人の金室慎之介たちと中心に平和な学生生活を送っていたが、事故を契機に一変。妹を養うために彼氏の慎之介と約束していた一緒に上京という約束も守れず

恋や勉強、全てを捨てて妹のあおいの親変わりとして生活している。


・金室慎之介

あかねの元・恋人で13年前に共に上京しようと約束するも、断られる。

あかねへの思いを宙ぶらりんに抱えたまま一人で上京。そして、13年後に演歌歌手のバックバンドのギターとして故郷に複雑な思いを抱えたまま帰郷。


・しんの

ある時、あおいがいつものようにお堂でベースの練習をしようとしたら、出会った13年前の姿をした慎之介。なぜかお堂から出ることができない。


という、ちょっと複雑な関係の4人が織りなす物語となります。


■タイトルに込められた想い

この作品の見どころや魅力…と聞かれたそりゃあもちろんストーリーだと答える。

「あの花」や「ここさけ」では“決して叶わない恋”とかちょっとドロドロした恋愛模様を中心に、子どもたちが苦い経験を乗り越えて大人になるまでの過程を描いている。


今作でも、それは例に漏れず描かれているし、それは岡田マリーの真骨頂であるとも思っている。

13年の時を超えてそのままの姿で突然現れたしんのに恋をしてしまったあおい。それは当然叶うはずのない恋。

しんのには、あかねという恋人がいることもそうだし、そもそも30歳を超えた慎之介は実在しているし、人間か幽霊かもわからない存在だからだ。


そんなしんのとの叶わない恋を経験したあおいが、ちょっと大人になるまでの過程をドラマティックにファンタジックに描いているのがこの作品の魅力だと思う。


しかし、この作品…それだけじゃあないんです。この作品は4人の恋愛を通じて、家族愛や姉妹の愛を描いているところが一番の伝えたいことだと思っています。


ちょっとタイトルのお話を先にしましょう。


タイトルは「空の青さを知る人よ」。元ネタは、作中でもあかねの好きな言葉としても登場する「井の中の蛙大海を知らず、されど空の青さを知る」から。


意味としては「狭い世界で一つのことを突き詰めたからこそ、その世界の深いところまで知ることができた」


作品の中でいう“狭い世界”とは、秩父の街を指します。あおいは、盆地で囲まれた閉鎖的な街に嫌気がさしていて、早く東京に出たいんだと思っています。それは、これまで姉のあかねに対して、全てを捨てて自分を親変わりに育ててきたことに負い目を感じていました。

だからこそ、あかねのもとを離れてあかねを自由にさせてあげたいんだという思いから。


そんな時に現れたのが13年ぶりに現れた慎之介。

あおいは、あかねが慎之介とくっついてしまえばあかねは楽になるし、もう私のためにいろいろなことを犠牲にしてほしくないと考えます。


しかし…………13年ぶりに現れた慎之介は…酒に弱いくせに下手に酒を飲み、演歌のバックバンドという自分の思ったミュージシャンになれず中途半端な暮らしをする、かつてのキラキラして活気のあった憧れの慎之介はいませんでした。

そんな慎之介に失望してイライラしたあおい…の前に現れたのはあの13年前の姿の、今の慎之介とは真逆のしんのでした。

かつての憧れの存在だったしんのに恋をしているんだと自覚したあおいでしたが、あおいは見てしまいます。あかねが慎之介とすごく楽しそうに笑い、そして慎之介のために涙を流しているところを。


そして気づきます。あかねがあんな風に涙を流したのはいつ以来だったのか…そして、やはりあかねを笑顔にできるのは慎之介だけなのだと。


CMでもおなじみのあのセリフ


「しんのが好き、だけどあかねも大好きなんだ」


今度は逆に自分があかねのために、好きな人を譲ることを選択します。


あおいは、涙を流しながら、この狭い街には広い空があること、そして昼間の青い空と、夕焼けの茜空の混じった空を見上げて、空の青さを知ることができた。


そう、この失恋を通じて家族という狭い世界の中で、姉への愛情や、家族の大切さに気付くことができた……というのが今回の映画です。





■「しんの」と「慎之介」

あおいが恋をする「しんの」は、結局何者だったのか…?

「しんの」は、13年前にあかねに振られ、あかねへの思いを断ち切るためにかつて使っていたギター“あかねスペシャル”とともに封じ込めた「慎之介」の思いが具現化したものです

だからこそ「しんの」は13年前の姿で、お堂から一歩も出ることはできませんし、あかねに対してまっすぐすぎるくらいの気持ちを持っている男として現れます。


反対に「慎之介」は、13年前にあかねへの思いを無理やり封じ込めたまま、中途半端な気持ちで上京しました。なので、まるで13年前とは別人になったかのようにネガティブな発言、あおいを傷つける発言をする「慎之介」となってしまったわけです。


ラストにあおいがその「しんの」を思いっきりひっぱって、お堂から連れ出します。

つまり、あおいのまっすぐな思いと行動が、「慎之介」をもう一度、あかねに対する想いを思い出させた、解放させた存在として描かれるのです。

しかも解放されたあかねへの想い「しんの」は空を飛ぶようにあかねのところへ向かうのですが、それだけあかねを想っていたことと、ずっと閉じ込めていた想いが爆発したことをよく表現されていますよね。


■大人こそ見てほしい

先に述べましたが、今作では高校生の少女がちょっぴり大人になる物語と同時に、大人な恋愛も描いています。大人だから子どもほど自由に立ち振舞えない、大人だからこそ諦めなくちゃいけないことがある。

そんなアラサー世代にも刺さるような作品に仕上がったのが「空青」だと思います。


これまでの「あの花」や「ここさけ」とは一味違った、青春の物語をぜひとも堪能してほしいです。


『 あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。 』視聴者を泣かす秘密のテクニック





(あにぶ編集部/Uemt)
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