ヴェンゲル氏、スパーズの新スタジアム戦略に疑問符「ビールよりプレイヤー」

ヴェンゲル氏、スパーズの新スタジアム戦略に疑問符「ビールよりプレイヤー」

 サッカーの世界的名将アーセン・ヴェンゲル氏(70)が24日、都内で基調講演会を開催。ヴェンゲル氏はスタジアムに込めた思いを語った。



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 ヴェンゲル氏は1981年にフランスのRCストラスブールのユースで監督業をスタートさせると、95年に来日し、Jリーグの名古屋グランパスエイトで指揮を執って天皇杯を獲得。96年に渡英し、名門・アーセナルの監督に着いた。22年という長期間にわたりガナーズ(アーセナルの愛称)を率いると、3度のプレミアリーグ、7度のFAカップと多くの栄冠に輝いた。2018年をもって惜しまれつつも、同クラブの監督を退任した。



 講演の内容は「街とサッカースタジアムの幸せな関係」というテーマで、モデレーターを務めたのはフローラン・ダバディ氏。ヴェンゲル氏もアーセナルの監督時代に、ハイバリーからエミレーツ・スタジアムへホームスタジアムが移った経験があり、「サッカーは生活の一部であるべき」という哲学を持つ。たとえ、ロンドンやパリといった欧州屈指の大都市でもスタジアムは街中にある。「6時に仕事が終わって『さぁ、行こう』となるのがヨーロッパだと実現できる。それが理想的」と話した。



 エミレーツ・スタジアムの外壁には、歴代の名選手が後ろ姿で肩を組むイラストが飾られており、コンセプトは「Be Together」。ヴェンゲル氏は「選手の顔が重要ではない。みんな一緒というのが大事。顔が見えると、つい『彼だ!』と思ってしまうので、顔をあえて見えない写真で『Be Together』と実現した」と思いを口にした。



 そして、話は4月に落成したアーセナルのライバルチームのトッテナム・ホットスパーの本拠地「トッテナム・ホットスパー・スタジアム」の話題に。ダバディ氏が「新しいスタジアムは世界最先端と言われ、1時間前にファンを来させるためにロンドンいちのビールをサーブしていると自慢しているらしい」と紹介すると、ヴェンゲル氏は「ビールも然りですが、ベストプレーヤーがいるのが(観客を早く来場させる)1番の条件。もちろん目的はビールよりプレイヤーだから」とスパーズのスタジアム戦略に苦笑いを浮かべていた。



 また、旧本拠地のハイバリーについて「ハイバリーには魂があった。ただの建物、スタジアムではなかった」と力説。ダバディ氏は子どものころ、アーセナルとパリ・サンジェルマンの試合をハイバリーの1列目で観戦できたそうで「ここ(手の届く範囲)でパリ・サンジェルマンのスターのダヴィド・ジノラと、相手選手のトニー・アダムスがやり取りしていた。人生で1番の体験でした」とピッチと観客席の近さを熱弁した。すると、救急車が走れるようにピッチサイドを広く取った結果として距離ができたことを告白し、ヴェンゲル氏は「(エミレーツ・スタジアムでは)安全面とはいえ、なくなくその距離感を失った。安全第一は全ての条件に優先した」と残念そうに口にしていた。



 その後、パネルディスカッションが行われ、FC東京の大金直樹社長、東京ヴェルディの羽生英之社長が登場。両チームとも都内の一等地にサッカー専用スタジアムができることを希望していた。エミレーツ・スタジアムの場合を例示しながら、サッカー専用の重要性を説明すると大金氏、羽生氏は深くうなずいた。講演中、ヴェンゲル氏はダバディ氏から水を勧められると「私はラクダのように水を飲まないんだよ」と笑わせるなど、真剣な内容でも笑いを忘れずに講演会を盛り上げていた。
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