乃木坂46、中国進出の本気度が示された上海版アートワーク展

乃木坂46、中国進出の本気度が示された上海版アートワーク展

 今年1月から5月にかけて東京で開催された乃木坂46のアートワーク展「乃木坂46 Artworksだいたいぜんぶ展」(ソニーミュージック六本木ミュージアム)。着用した衣装や未公開のアートワークなど、9万点を超える資料を展示し、25万人を集客して大成功を収めた。その海外版となる「乃木坂46 Artworksだいたいぜんぶ展 Extra」が、このほど中国・上海で開催された。会期中には昨年に引き続き、上海ライブ「NOGIZAKA46 Live in Shanghai 2019」(上海メルセデスベンツアリーナ)も実施された。しかも今回は日本人アーティスト初となる同会場での2DAYS公演である。近年、中国でライブを行う日本のアーティストは急増しているが、アリーナ規模の会場で複数日開催されるというのは極めて稀だ。改めて、中国におけるファン層の広がりを感じずにはいられなかった。



【写真】本採用にならなかったアザーカットの数々や貴重な未公開資料



■中国ファンと乃木坂46をつなぐ新たなコンテンツを提供



 中国・上海版 「乃木坂46 Artworksだいたいぜんぶ展 Extra」(9月27日~11月3日)が38日間にわたって開催されたのは、上海の大型ショッピングモール「静安大悦城」。地下鉄8号線、12号線「曲阜路」駅に直結しており、上海旅行情報ガイドによると、地元の若い女性のトレンドや活気を体感できる場所として定評のある商業施設である。そのため、常に新しいテナントの入れ替えを行っており、今回の催事スペースも、その狭間で偶然に見つかったという。



 まずは、上海で「乃木坂46 Artworksだいたいぜんぶ展 Extra」を行うことになった経緯について、同展を立案し、乃木坂46のアジア進出をサポートする菅雅子氏(SME コーポレートビジネスマーケティンググループBCルーム プロデューサー)に聞いた。



「乃木坂46の海外での初の単独公演を昨年12月に中国・上海メルセデスベンツアリーナで行い、続いて今年の1月には台湾・台北アリーナで初のライブを開催しました。その頃、東京ではアートワーク展がスタートしており、会期が進むにつれて大きな盛り上がりをみせていきました。それを受けて、日本全国で巡回展を行うなどの案もあったのですが、3月頃には今回の上海ライブのスケジュールが出ていたこともあり、せっかくライブをやるのであれば、アジアで初めてのアートワーク展を上海でやってみようと考えたのがきっかけです」



 初の上海ライブに向けて、昨年9月より中国のSNS微博(weibo)で、メンバーが生放送を行ったり、中国の動画共有サイト「ビリビリ動画」(bilibili)と提携して、月1のペースで松村沙友理が出演して生配信を行ったりするなど、現地ファンに向けて現地の言葉で発信し続けてはいるものの、グループとファンをつなぐコンテンツの少なさを感じていたというのも、理由の1つだった。



「台湾においては、昨年7月から、台湾全土に店舗展開しているセブン-イレブン台湾のCMに継続して出演していますし、モバイルゲーム『乃木恋』(『乃木恋〜坂道の下で、あの日僕は恋をした〜』の繁体字版『乃木恋~那天在坂道下、我墜入了情網~』『乃木恋』※)もリリースされていて、ファン層形成に繋がっているのを実感していますので、中国のファンも楽しめる新たなコンテンツを提供できないかと考えていました」



 ところが、開催の意思決定はしたものの、なかなか適当なサイズの会場が見つからずに苦戦した。決まってからも状況は二転、三転し、会場のデザイン・設計・施工を行う期間は3ヶ月弱というタイトなものとなった。そのなかで、東京で行われた「乃木坂46 Artworksだいたいぜんぶ展」をベースとしながらも、上海でしか観ることのできない企画も盛り込まれ、さらには会場限定商品の製作も行われた。開幕直前には、日本から乃木坂46のスタイリストを呼び寄せて、アイロンがけした衣裳をマネキンに着衣させ、陳列する段ボールのシール張りからセッティングまでを日本のスタッフで行って、オープニングの日を迎えるという慌ただしさだった。



■中国ファンに人気が高かったオリジナル企画「制服コレクション」



 展示エリアは東京の会場とほぼ同じ広さ(1000m²)。乃木坂46のジャケット写真やそのアザーカット、ミュージックビデオ絵コンテや撮影時のオフショット、小道具、各メンバーの設定資料、アイデアスケッチなど、貴重な資料の数々が展示された。そういったCDやミュージックビデオ撮影に関する制作の裏側も楽しめる内容は東京会場と同じだが、上海会場オリジナル企画も用意された。



 1つ目は、昨年の上海ライブの模様を大画面で上映(「ジコチューで行こう!」)したコーナー。同ライブはパッケージ化されていないため、同会場でしか目にすることができない。2つ目は衣装コーナーの「制服コレクション」。東京会場はステージ衣裳を中心に展示されたが、上海会場では歴代制服24着がずらりと勢揃い。全部観ることができるのはここだけということもあり、中国ファンの大きな関心を集め、評価も高かった。また、上海ライブの翌日からは、ステージで着用した衣装5点も追加展示された。



 上海ライブを終えた翌27日の朝には、乃木坂46のメンバーが揃って同会場を訪れ、中国のファンに対するメッセージを思い思いにAUTOGRAPH WALLに書き込んだのも、サプライズ企画と言えるだろう。会場を訪れたファンは、自分の推しメンバーのサインの前でポーズをとってカメラに収まっていた。日本のファンと同様に滞留時間が長いのが特徴で、中国語で書かれた説明文を熱心に読みながら、展示物をじっくり鑑賞していた。



 東京会場には多くの女性ファンも訪れたが、上海会場の客層は男性が中心だった。この日も1人、もしくは友人2~3人と共に鑑賞する男性ファンが目立った。そのなかに、カップルで会場を訪れていたファンがいたので話を聞いた。2014年からファンだという男性は、もともとはAKB48が好きで追いかけているうちに乃木坂46の存在を知りファンになったという。魅力は「メンバー1人ひとりが個性的、一生懸命に頑張る姿、ファンに愛を伝えようとする姿に感動する」、「推しメンバーはいるがグループ全体も応援している」と語ってくれた。連れの女性は、「ファンではない」と言いつつも、時間をかけて展示物を興味深そうに眺めている姿が印象的だった。



■アーティストIP展開でコアファンのエンゲージメントを高め新規ファンを獲得



 訪れた時期が会期の終盤であったため、売り切れたグッズも散見された。人気を集めた図録(200元:日本円で3000円程度)をはじめ、ジャケット写真のポストカードも「SOLD OUT」の文字が躍っていた。「N46|AW」のロゴマークをあしらったスタイリッシュなデザインのストレージボックスや缶バッジ、タオル、Tシャツ、パーカーなどが現地ファンに人気だったようだ。それにしてもグッズの豊富なバリエーションには圧倒された。



 「会場に何度も足を運んでくださるコアファンもいれば、友人に連れられてなんとなく観に来たというリアルなファンではない人もいると思います。そういった人にも買って帰りたいと思ってもらえるもの、いろんなシーンで身に着けたり、持ったりしてもらえるようなアートワークを目指しました。女性にも大変好評で、こだわった甲斐がありました」(菅氏)



 アーティストの海外展開というと、現地でライブを行ったり、現地企業とタイアップを行ったりしながら、継続して、その地域にアピールしていくことが定石だが、今回のアートワーク展のようなアーティストのIP展開は、コアファンのエンゲージメントを高めるだけでなく、新たなファンとの接点を作るうえでも有効な施策だと感じた。前段でふれた、「ビリビリ動画」との提携により松村沙友理が生出演していた企画は、10月からは、中華料理を通じて中国語を学ぶ新番組『沙友理的爱吃厨房』として新たなスタートを切った。



 同番組をきっかけに、中国ファンとの交流はさらに深まっていくに違いない。そして、来る11月22日~24日には上海で、乃木坂46のメンバー出演のミュージカル『乃木坂46版 ミュージカル「美少女戦士セーラームーン」2019』の上演も決まっている。ライブ、動画配信、アートワーク展、舞台…とつながった動きを、今後はどう「面」展開させていくのか。そういう意味でも、本格的に始まった乃木坂46の中国における活動から目が離せない。

文・カツラギヒロコ
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