『ジョブチューン』人気の“ジャッジ企画” 人間ドラマ見せるドキュメント風演出テクとは

『ジョブチューン』人気の“ジャッジ企画” 人間ドラマ見せるドキュメント風演出テクとは

 飲食チェーンの人気メニューを、一流料理人がジャッジする人気企画が話題を集めているTBS系バラエティ番組『ジョブチューン ~アノ職業のヒミツぶっちゃけます!』。誰もが知る人気メニューが「ダメ出し」をくらってしまう…というスリリングな内容だが、料理人のマル・バツ判定結果とそれを受けたスタッフの表情やコメントに思わず見入ってしまい。翌日店舗に足を運ぶ視聴者も多いだろう。細かなところに配慮しつつ、ドキュメント風の演出で人間ドラマを見せる番組制作のテクニックを聞いた。



【13年2月より開始】番組スタート時のネプチューン&田中みな実の4ショット



顔アップを多用し表情の変化を伝える



『ジョブチューン ~アノ職業のヒミツぶっちゃけます!』で人気の「ジャッジ企画」とは、スシローやくら寿司、ロイヤルホスト、大戸屋といった飲食チェーン店や、コンビニ・スイーツといった視聴者に馴染みのある各店のメニューを料理人が試食し、その合否を判定するという対決企画だ。企画のいきさつについて、総合演出を手がける山口伸一郎氏は次のように語る。



「元々は、“価格に見合った美味しいものが食べたい。じゃあそれは何だろう?”という、誰もが抱く素朴な疑問から、約3年前にこの企画を初めて放送しました。初回はスシローさんの人気メニューの中から1、2、3位を決めるという内容で、そこから今のジャッジ企画へ発展していったんです」



 “食”という普遍的かつ身近なテーマを取り上げながらも、注目すべきはその切り口だ。各企業が努力の末に開発した商品を、大胆に「合格」あるいは「不合格」とジャッジする尖った企画性が、視聴者の興味につながった。しかし、もちろんそこに拒否反応を示す企業も当初は多かったという。ではなぜ、ジャッジ企画はここまで人気を得ることができたのだろうか。



「このコーナーを何回か繰り返す中で、これは“人間ドキュメンタリー”だと気づいたんです。企業の方は、会社を背負って出演している。だからこそ、料理人の判定に一喜一憂し、涙までする。一方の料理人も、安易に不合格の札は挙げられないし、この番組に出ることで自身のハードルも上がってしまう。そんなガチンコ対決の中から生まれるドキュメンタリー性にも、視聴者は面白味を感じてくれたんだと思います。そこで途中から編集方針も変えていきました」



 そのひとつが、出演者の表情を映し出す顔のアップだ。人の表情は正直であり、試食する料理人も、その様子を見守る企業側も、思わず一瞬、顔に出てしまう表情の変化。それが何よりも視聴者を引き付けている。そのうえで、仮編集の映像を通して確認し、今回はこの料理人、企業側のこの人がキーマンだとなれば、その出演者を主人公と決め、コメントをより多く取り上げたり表情の変化を細かく選んだりして編集し直すという。



「物語には主人公がいた方が視聴者に伝わりやすいですし、たとえば料理人が顔をしかめた時、視聴者が“大丈夫かな?”と感じるタイミングで主人公の不安げな表情を映す。そうした視聴者の生理に合った編集を丁寧に行うことで、よりドキュメント性を高めていけるんです」



画面の端々で見られる“愛あるダメ出し”感



 加えて重要なのが、視聴者の気持ちを代弁してくれる出演者たちの存在だ。MCのネプチューン、レギュラーパネラーのバナナマン、土田晃之、そしてゲスト陣による「これは合格でしょ!」「美味しいのに何で不合格!?」といった視聴者目線のコメントは、家族で番組を観ている視聴者も安心してこのシビアな対決を楽しむことができる。



 さらに番組エンディングの画面の端々で、ダメ出しをした料理人が企業担当者にアドバイスを送る姿もよく見られる。これは、もともとはカメラが止まった後によく見られた光景だったが、そうしたシーンも極力収録して編集に加えているという。こうした“愛あるダメ出し”感も端々から伝わることで、放送翌日には、合格商品に行列ができるのは当然ながら、不合格商品の売上げも大幅に伸びているという。



「コーナー開始当初は企業側から出演を断られる場合が多かったのですが、最近は企業側から出演したいと言ってくださるケースも増えました。商品に不合格を出されるリスクはありますが、それ以上にメリットが大きいと考えてくださっているようで、企業、料理人、そして我々製作側との3者の間でWin-Winな関係を築けているのだと思います」



 ところで、昨今のバラエティ番組における企画制作に変化はみられるのか。土曜19時という時間帯への工夫を聞いた。



「弊社では“ファミリーコア層”と呼んでいますが、13~59歳の購買層を意識した番組作りに力を入れています。他局も含めてテレビ界全体が2年ほど前から同じような動きをしていて、ひと昔前よりも身近なものをテーマとしたバラエティ番組が支持されていると感じています。逆に言えば、日常生活とあまり乖離したテーマは、よほど見せ方を考えないと、なかなか見てもらえないとも言えます」



 そういう観点から言っても、視聴者は放送を見た翌日に合格メニューを食べにいったり、不合格商品の味を確認できたりする。そんな“身近な親近感”と、真剣勝負が生むドキュメンタリー性が、今の視聴者の心を掴んでいるのだろう。



 このジャッジ・コーナーはさらなる派生企画を生み出し、12月7日には「ミツカン“鍋つゆ”TOP10」のジャッジと、高速道路サービスエリアでの出張ジャッジの放送を予定。飲食チェーン店やコンビニ商品といった枠を超えた分野にも進出しようとしている。その企画の軸には、「“食”をどうやってエンターテインメントにみせるか」という同番組のコンセプトがしっかりと根づいており、同番組のジャッジ企画はより一層の広がりをみせていきそうだ。

(文/布施雄一郎)
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