「太鼓持ち」から「Eテレの顔」に サバンナ高橋、親子層からの支持確立で増す存在感

「太鼓持ち」から「Eテレの顔」に サバンナ高橋、親子層からの支持確立で増す存在感

 お笑いコンビ・サバンナの高橋茂雄が今、「Eテレの顔」として存在感を増している。人を持ち上げる巧みな話術で大御所芸人を味方につけて活躍を広げてきた高橋だが、昨年10月より放送中の『沼にハマって聞いてみた』(NHK Eテレ)でのMCは一味違う。思春期まっただ中の中高生と同じ目線でトークに没頭し、場を盛り上げながら同じ目線でツッコミを入れる。その姿は、かつての「太鼓持ち芸人」の面影はなく、若者世代からは「理解してくれる大人」、親世代からは「安心して見せられる芸人」として支持を広げている。



【写真】のび太の魅力を熱弁する高橋! 念願の『ドラえもん』出演で奇跡のショット



◆持ち前の自虐ネタで、知名度と親近感を獲得



 そもそも高橋が知名度を広げるきっかけとなったのは、『アメトーーク!』(テレビ朝日系)で大きな話題となった「太鼓持ち芸人」、「中学の時イケてないグループに属していた芸人」、「おなかピーピー芸人」、「運動神経悪い芸人」といった一連の自虐ネタだった。



 特に「太鼓持ち芸人」として披露した、「今日めっちゃ楽しいですわ。DVDにできますやん」と先輩との飲み会が楽しいという気持ちを伝える、(ヨイショを嫌がる先輩には)トイレに立つときに小さい声で聞こえるように「今日楽しい」と独り言をつぶやく、支払いの際にはマジックテープの財布の蓋をバリリッと開けて、自分も払う意思があることを音で示す……etcといった、先輩芸人に可愛がられるための数々の微細なテクニックは、上司の機嫌を取りたいサラリーマン世代から「使える!」と関心を集めることに。何より芸人といえばクラスのイケてる人気者というイメージが強いだけに、イケてない属性ながら小ワザを駆使してサバイブしてきた高橋に親近感を覚えた視聴者は多かったはずだ。



 太鼓持ちキャラとして先輩芸人に気に入られるとともに、卓抜したトーク力をアピールすることとなった『アメトーーク!』以来、業界関係者からの信頼も得てバラエティ番組への出演を増やしていく。ライオン「ストッパ下痢止め」のCM出演もまた、「おなかピーピー芸人」という自虐ネタなくしては掴めなかったはずだ。



 このように太鼓持ちキャラを駆使することでバラエティ番組での盤石なポジションを築いてきた高橋だが、近年はお笑いに止まらない活躍が目覚ましい。中でも目立つのが趣味を仕事に繋げているケースだ。



◆趣味を深掘りして仕事に繋げる行動力



 もともと高橋は好奇心が旺盛で多趣味。好きになるとどこまでも深堀するタイプのようで、その音楽への愛と造詣の深さから「MUSIC GOLD RUSH」(J:COM)、「ヤバイ音楽研究所」(TOKYO FM)といったコアな音楽やアーティストを紹介するレギュラー番組が相次いでいる。



 また「謎解き」も高橋が追求してきた趣味の1つで、昨年にはついに「リアル脱出ゲーム」のSCRAPと「絶望トイレからの脱出」を共同制作。今年11月13日からは、その第二弾となる「絶望テレビからの脱出」が順次スタートしている。



 ほかにも銭湯やマンガなど、多彩な趣味と知識の深さを生かして活躍の幅を広げている。もちろん趣味を仕事に繋げるためは多くの人脈が必要だが、そこは持ち前の「太鼓持ち」テクニックで開拓していったのだろう。



◆コッシーの声優も担当 転機となった『ドラえもん』で親子との距離がますます身近に



 ところで冒頭で触れた「Eテレの顔」の件だが、そもそも高橋はNHK Eテレの4~6歳向け教育番組「みいつけた!」の主人公キャラであるコッシーの声を10年近く務めている。とは言え、子どもの世話をする時間帯の放送だけに多くの親世代は「ながら見」をしているようで、声だけの出演で高橋と気づいていた人は少なかったようだ。それだけに2019年9月20日の放送で高橋が「イスはしトゲオ」としてテレビに初めて顔出し出演した(公開ステージには出演していた)ところ、「コッシーはサバンナ高橋だったんだ!」「Wコッシーとは神回!」とTwitterのトレンド入りするほどの大賑わいとなった。



 親子層に強力にアプローチしたきっかけと言えば、やはり『ドラえもん』だろう。『アメトーーク!』で「ドラえもん芸人」としてその愛を熱く語り、2014年8月1日に放送された特別番組「ドラえもん知識王No.1決定戦SP」(テレビ朝日)では優勝を果たすほどのマニアである高橋だが、2017年にはついに映画『ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険』に出演を果たす。さらに翌年2018年にも映画『ドラえもん のび太の宝島』に出演。「ドラえもん」の映画シリーズにおいて2年連続の声優出演は史上初のこととして話題となったが、さらに2019年3月公開の映画『ドラえもん のび太の月面探査記』にも出演し、自己記録を更新している。



 単に愛を語るだけでなく、太鼓持ちキャラである自身とスネ夫を重ね合わせたネタでしっかり笑いに繋げるのは芸人ならでは。子どもたちの心を掴むとともに、親世代からも下ネタやディスりのないトークが好印象を得ている。



◆『Rの法則』打ち切り後の『沼ハマ』MCで評価はうなぎのぼりに



 さらに2018年10月、NHK Eテレ『Rの法則』が突然打ち切りとなり、その後番組としてスタートした『沼にハマって聞いてみた』のMCに就任してからは評価がうなぎのぼりだ。



 趣味嗜好が多様化する今、それでも「これにハマっていると知られたら陰キャ認定されるのでは」「好きすぎることを言ったら変人扱いされるのでは」と自分の世界に閉じこもる若者は少なくない。そうした風潮がある中で、ある特定の趣味にどっぷり浸かった10代の若者="ハマったさん"たちがその魅力を熱く語る姿は多くの共感を集め、スタートから約1年経った今では「#NHK沼」が放送中にTwitterトレンド入りする回もある。



 若者たちの「好き」という気持ちを尊重した番組作りにおいて、MCを務める高橋の存在は大きい。NHK制作局<第1制作ユニット>教育・次世代チーフ・プロデューサーの石塚利恵氏は、「基本的に人を肯定し、まず10代の話をきちんと聞いてくれます。愛あるいじりも含めて、トークのさじ加減が本当に素晴らしい。(中略)未知の物事に対して変に構えたり、否定から入ったりといった部分がなく、より10代の感覚にも近い。結果、ハマったさんたちも楽しくそれぞれの沼への思いを言葉にしてくれる環境が実現できているのだと思います」と高橋のMC力はもちろん、若者たちに寄り添うスタンスを高く評価している。



 巧みなトークからも伺えるようにもともと地頭がよく、知識が豊富。また基本的に人をディスらないそのキャラクターは、業界関係者も含めて多くの人に愛されている。そもそも「太鼓持ち」というややネガティブなワードも、他人を攻撃したり傷つけたりせず、いいところを見つける才能に長けているとも言い換えが可能だ。持ち前の多趣味ぶりや人を肯定する姿勢、そしてトーク力と、高橋の能力が存分に発揮された『沼にハマって聞いてみた』は、まさに天職と言える番組かもしれない。



 芸人の世界はベテラン勢の引退が少なく、またテレビの枠は限られている。お笑いに止まらない活躍の場を得るのは、中堅以降に差し掛かった芸人のテーマと言えるだろう。そうした中で高橋は子どもや学生と触れ合う教育の分野にも携わるようになり、「健全なイメージでマルチに活躍できる芸人」という希少なポジションを確実に固めつつある。その好奇心旺盛な姿勢から、来年ますます活躍の幅を広げてくれることに期待したい。

(文:児玉澄子)
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