構造変化の波が襲う韓国ドラマシーンの現在地 話題作『SKYキャッスル』が次なるブーム創出へ?

構造変化の波が襲う韓国ドラマシーンの現在地 話題作『SKYキャッスル』が次なるブーム創出へ?

 熾烈な受験戦争で知られる韓国で、その実態をベースにし、受験生を持つ親たちの悲喜こもごもをサスペンス要素を交えて鮮烈に描いたドラマ『SKYキャッスル』。初回の視聴率こそ一桁であったが、評判が評判を呼び、最終的に非地上波歴代最高となる23.8%(ニールセン調べ)をたたき出した。韓国でここまでヒットした理由は何か。そして、日本でもブームを巻き起こすポテンシャルはあるのか。昨今の韓国ドラマ市場と重ねて、TSUTAYAのアジア担当MD・落合麻葉氏に聞いた。



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■現実の社会問題を描くヒット作が多い韓国



『SKYキャッスル』のSKYとは、韓国の名門大学であるソウル大学、高麗大学、延世大学の頭文字をとったもの。名門大学へのわが子の入学に血眼になるセレブ親たちの姿に皮肉を込めながら、現代社会の一面をスリリングなサスペンスストーリーで映し出す。実際の受験社会を題材にした本作だが、韓国にはこうした社会問題を切り取ったヒット作が多い。



「2014年に『ミセン-未生-』がヒットして、日本でもリメイクされました。このドラマは就職難や非正規雇用の問題が取り上げられていましたが、韓国のリアルな社会を映し出しているという意味では、『SKYキャッスル』も同様に人々の関心を呼んだのだと思います」



 韓国で主にこのドラマを観ていたのは、受験生の親世代。日本では最近、大学入試問題が騒がれているが、受験戦争への社会的関心は高い。やはり日本でも同世代の視聴者の関心を呼びそうだ。



「日本も受験社会ではありますから、共感できるところもあるでしょう。それ以上に、驚きや発見もあると思います。例えば、ドラマには受験コーディネーターの女性が出てきます。そんな職業、日本では聞いたことがないので、フィクションならではのキャラクターかと思ったら、実際に韓国の上流社会では受験コーディネーターを雇うことは特別なことではないそうです。そんなふうに、受験における知られざる韓国社会が見えるドラマでもあります」



 たしかに本作では受験の実態が描かれているが、それ以上に、それぞれの家族が抱える葛藤や闇がサスペンスチックに入ってきたりと、そのスピード感とともに韓国ドラマならでは激しいストーリー展開にのめりこんでしまう。



「『冬のソナタ』がヒットしたときに、続きが気になる展開にハマった人も多いと思いますが、韓国ドラマには今もそんな中毒性のあるストーリー展開は健在です。とくに『SKYキャッスル』は、親世代にも子ども世代にもキャラクター性の強い登場人物がたくさん出てくるのですが、その全員の背景の書き込みもうまいですし、最後にはいろいろな伏線が見事に回収されて、驚嘆させられます。脚本家は新人に近い人でしたが、本作でその巧みなストーリーテリングの腕が知られ、一躍売れっ子脚本家のひとりとして名を馳せました」



■韓流ブーム世代をメインに20代、40代でも多いファン層



 そもそも日本における韓流ブームは2004年に始まったと言われているが、一般層にまで波及した一時期の熱は冷め、現在はコアなファン層が支えているイメージがある。その実際のデータはどうなのだろうか。



「TSUTAYA全体の売上分布でいうと、韓流の占めるパーセンテージに変化はありません。たしかに、ユーザーの人数自体は一時期と比べると若干は減っています。しかし、映画とドラマでは一度にレンタルする本数の違いがあり、そのなかでもとくに韓国ドラマのファンは熱量が高いので、レンタル本数が多くなり、全体の割合が高くなるんです」



 現在の韓流ファンの男女比は、2:8で圧倒的に女性が多い。求める作品の傾向など現在のトレンドについて聞いた。



「時代劇やアクションものになるとまた比率は違って男性も多くなりますが、ラブコメだとほぼ女性になります。やはり、ラブコメはいまだに強いですね。20代の女性からは、とにかくイケメン俳優が出演するラブストーリーに人気があります。今、日本で人気があるのは『雲が描いた月明り』のパク・ボゴムや、『彼女はキレイだった』のパク・ソジュンなど。かつて『美男<イケメン>ですね』のチャン・グンソクの登場で韓流市場が大いに盛り上がりましたが、今でもイケメン俳優の存在は大きいです」



 今の韓流ドラマ市場を支えている世代は、韓流ブーム時代からの女性層がメインになりながらも、昨今のK-POPアーティストのファンの若い世代や、男性に多い韓国映画ファンなど、そういった層が作品によって流れてきたりと意外に幅広いようだ。



「主には、いわゆる『冬のソナタ』の頃からの60~70代のファンがたくさんいます。それ以外では、20代と40代前後が強いですね。40代前後は東方神起、BIGBANGなどK-POPファンの第一世代。そのお子さんが20代の今のK-POPファン。K-POPライブでもこの組み合わせは多く見かけますね」



■配信事業者による環境変化 従来のビジネスモデルの課題



 こうしたファンに支えられる現在の韓流市場だが、昨今の国同士の政治的な関係性による影響はあるのだろうか。



「ほぼありません。それよりも今後の課題としては、配信とどのように共存していくかですね。よい脚本家、一流の俳優でドラマを作ろうとすると莫大な予算がかかります。そうなると、世界的に配信することで収益の生み出せるNetflixなどの配信事業者がどうしても強くなり、日本を含めた全世界権を獲得しにいきます。例えば、イ・ビョンホンの出演した『ミスター・サンシャイン』なども韓国ではケーブル局のtvNで放送がありましたが、日本ではNetflixのみの配信です。今のところは、CSやBSのテレビ放送もなければ、DVDの予定もありません。これまでのビジネスモデルが成り立たなくなっています。ここには、出演料の高いスター俳優の作品が、これまでの流通で取り扱えなくなっていくかもしれないという大きな問題を孕んでいます」



 過渡期を迎えている映像シーンにおいて、従来の映像流通のあらゆるポイントで歪が現れている。作品買付けにおいては、構造的な変化が起きつつあるようだ。そんななか、新たなデジタル戦略にも打って出ているTSUTAYAだが、主力のひとつとなり、顧客の確実なニーズをとらえているレンタル事業は、その存続を信じて時代の波と戦いながら、そこでの勝算も見出している。



「ある店舗では韓流に強いスタッフがいて、お店全体の売上の4割が韓流という店舗もあります。韓流の棚の近くには椅子やスペースもあって、サロンのようになっているんです。60~70代のお客さまのなかには、やはり配信に対してのハードルが高い方もいます。TSUTAYAは配信にも注力していますが、従来のレンタルにも変わらず一定のニーズがあり、よい作品を提供していくことでシーンの活性化と拡大を図っていきます。時代が変わっても、お客さまみなさまがそれぞれのメディアであらゆる作品を楽しめる状況を提供していくのが大事なこと。今回の『SKYキャッスル』をはじめ、話題作を盛り上げられるようなお手伝いをTSUTAYAはしていきます!」

(文/西森路代)
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