黒歴史も乗り越えた愛情表現の形 「愛するキャラとシンクロした気持ち」

黒歴史も乗り越えた愛情表現の形 「愛するキャラとシンクロした気持ち」

 年内最後の大型イベント『コミックマーケット97』の開催が目前に迫り、同イベントに関する情報を耳にする機会も急激に増えてきた。そんな『コミケ』の見どころのひとつでもある“コスプレ”は、日本を代表するポップカルチャーの一角として、いまや海外でも広く認知されている。そんな中、今回はオリジナルの衣装制作にこだわりを持つコスプレイヤー・椎乃ちいさんにインタビューを実施。イベントに参加する際の独自ルールなど、人気レイヤーのリアルな本音を聞かせてもらった。



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■初めのころは“コスプレもどき” 「黒歴史でも楽しかったから続けてこれた」



――コスプレ活動はいつごろから始められたのでしょう?



【椎乃ちい】10年くらい前から始めました。でも衣装やメイク、ウイッグなどにもこだわりだしたのはここ5年くらいです。



――10年前から、活動はずっと続けられているのでしょうか?



【椎乃ちい】最初のころは、メイクも全然できていなかったし、カラコンも入れていなかったので、コスプレというより、“コスプレもどき”でしたね(笑)。もはや黒歴史ですが楽しかったですね。その期間も含めて、ずっと続けていることになります。



――始めたきっかけはどんなものだったのでしょうか?



【椎乃ちい】企業コンパニオンのアルバイトをしていて、そこで仲良くなった友だちがコスプレ活動をしていたんです。同じアニメが好きだった…ということもあり、一緒にやろうと誘われたのがきっかけですね。



――もともとアニメ好きではあったものの、そのタイミングまでコスプレをしようとは思わなかったのですか?



【椎乃ちい】そうですね。あくまでもアニメは“見て楽しむもの”という認識でした。いま思うと、いろんな衣装を着るコンパニオンの仕事を経験したことも、コスプレへのハードルを下げていたかもしれないですね。



――どんな作品が好きだったのでしょうか?



【椎乃ちい】今も大好きなんですけど、『アイドルマスター』が好きで、同人誌の即売会や、推しの声優さんのサイン会や握手会にも参加していました。基本的に女の子のキャラクターが好きなんです。



――男性キャラに推しはいないんですか?



【椎乃ちい】女性キャラにはいつも“推し”がいますが、私が男性キャラを好きになるとすると“ガチ恋”なんですよね(笑)。『コードギアス 反逆のルルーシュ』のルルーシュに恋した時は、ショップをめぐって同作の関連商品や過去の雑誌などを買い漁ったりしていました(笑)。最近では『七つの大罪』のエスカノールが推しキャラです。



――社会人になってからは、お仕事の方も忙しくなり、なかなか趣味としてコスプレに取り組む時間が持てなくなったのでは?



【椎乃ちい】そうですね。公式コスプレイヤーのお仕事をさせていただくこともあるので、まったくできていない…ということはないのですが、趣味として楽しむ機会は確かに減りました。それでも時間のあるときは、イベントに足を運ぶようにしているんですけど、最近では既存のキャラクターのコスプレより、オリジナルの衣装で参加するほうが多いですね。



――オリジナルのコスプレをするようになった経緯を教えてください。



【椎乃ちい】うっけさんという、絵本の挿絵なども描かれているイラストレーターさんがいらっしゃるんですけど、その方が3年ほど前に「コスプレイヤーをモデルにしたオリジナルのキャラクターをイラスト化する」という企画を立ち上げられて。そこで、私をモデルにしたキャラクターを描いていただいたんです。その衣装がすごくかわいかったので、実際に作成して、コスプレイベントに参加したんです。そこから、オリジナル衣装を作る楽しさにハマっていって。だんだん着る機会も増えていった…という感じです。





■現地でのハプニングもイベントの醍醐味「ぶっつけ本番で挑むのが好き(笑)」



――オリジナル衣装を作る際、何かコンセプトはあるのでしょうか?



【椎乃ちい】私だけでなく、見てくれる人にもおもしろいと思ってもらえる衣装を作りたい…という気持ちは、つねにあります。最初のころは、クリスマスだからサンタクロース、ハロウィンだから魔女…といったように単純に考えていたんですけど、回を重ねるうちに、だんだんとひねくれてきて(笑)。着ぐるみのようなものだったり、セクシーなのに顔はほとんど隠れていて見えないとか、ちょっと変わった衣装を作るようになりました。かわいいのに〇〇とか、セクシーなのに〇〇みたいな、そういう引っ掛かりを自由に作れるところが、オリジナル衣装の魅力だと考えています。



――そうした既存の概念にとらわれない自由な発想も、椎乃さんの“コスプレイヤーとしての強み”と言えそうですね。



【椎乃ちい】ただ私の場合、衣装を作っても、イベント当日まで試着をしないことも多くて(笑)。お仕事のときは別ですが、趣味でコスプレをするときはぶっつけ本番で、現地で初めて、衣装とウイッグ、メイクを合わせるようにしているんです。



――なぜ、試着をしないのですか?



【椎乃ちい】そういったハプニングも併せて、コスプレの醍醐味だと考えていて。オリジナル衣装の場合は特に、正解の形が決まっていないので、その場でどんどん、新しいアイデアを取り入れていき、その都度、異なる形に仕上げるのが楽しいんですよ。ものすごい大失敗をしても、それが笑いのネタになって、その場にいるレイヤー友だちやカメラマンさんたちと楽しい時間を共有できたら、イベントに参加した意味は十分あると思っているので。趣味でコスプレをするときは、これからもこのスタイルを続けるつもりです。



――深い考えがあるうえで、ぶっつけ本番で挑まれていたわけですね。ちなみに、椎乃さんにとって“コスプレ”とは?ひと言で表すと、どんな言葉になりますか?



【椎乃ちい】既存のキャラクターのコスプレに話を戻しますが、好きなキャラクターがいて、「その子に近づきたい」、「その子を理解したい」という“愛情表現のひとつの形”がコスプレなんだと思います。コスプレをすると、そのキャラクターとシンクロした気持ちになれるので、そこに魅力を感じている人は多いと思いますよ。私も「このキャラだったらこんなポーズを取るはず」、「こんな着崩し方をするはず」と、細かく分析することがよくあります。



――コスプレ活動を続けていく中で、引退を考えるタイミングはあったりしますか?



【椎乃ちい】今のところ特に考えてはいませんが、自分自身で写真を見て「違うな」と感じたら、そのときが引退するタイミングかな…と思っています。当面の間は大丈夫だと思うんですけど、へそ出しの衣装を着るのがきつくなってきたら、いよいよかもしれないですね(笑)。



取材・文/ソムタム田井
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