「一つ目巨人の恐怖」「ジオン兵の休息」ジオラマのキモは、見る人の想像を駆り立てる“物語作り”

「一つ目巨人の恐怖」「ジオン兵の休息」ジオラマのキモは、見る人の想像を駆り立てる“物語作り”

 今年40周年を迎えた『機動戦士ガンダム』は、宇宙世紀シリーズをはじめアナザーガンダムを含めて数多くの作品がある。ここでは、多様性に富む世界観を広げ、自身が“妄想”したシチュエーションを具現化する“ジオラマの達人”をフォーカス。今回、やられ役のザクを“畏怖の対象”として表現したひろたん(@hirotan0712)氏と、個性派揃いの「ジオン水泳部」を使って“ジオン兵の休息”を描いたひなけい氏(@hinakei1)に、1枚絵に込めた“匠の技術”と“ストーリー”を聞いた。



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■連邦軍兵士目線で「巨人の恐怖」を表現(ひろたん)



「ザクはガンダムシリーズの中で“1番カッコイイ機体”じゃないかと思うくらい、素晴らしいMSだと思います」



 そう言葉に力を込めるのは、人気模型誌『月刊ホビージャパン』が主催する「オラザク選手権大会」(2017年)の「ジオラマ部門」で金賞を受賞したひろたん氏。そして、その時のテーマが“連邦軍兵士から見たザク”だったのだ。



 量産機はプロトタイプの技術的な問題点を解決し、一番精度が高い状態となってはじめて量産化されるもので、「言わば“洗練”された完成度の高い機体」と熱のこもった説明をするひろたん氏。それに加え、“やられ役”を押し付けられているザクが、泥臭く主人公達に立ち向かっていく姿に哀愁を感じているようだ。



 『一つ目の巨人』と名付けられた本作からはザクを“畏怖”する連邦軍兵士の心情を感じる。このジオラマを制作した経緯や意図は何だったのだろうか。



 「生身の連邦軍兵士にとって、約18mのMSがいかに“脅威の存在”であったのか。連邦軍目線の“ザクの威圧感”を表現することが1つのテーマでした。これも一種の“ザク愛”ですかね」と笑顔で答えてくれたひろたん氏。一兵士から見た際、相手がザク1機でも絶望を感じるほどの恐怖だったはず。そこで、襲い掛かってくるザクの恐怖感が伝わるよう、色々と工夫を凝らしたのだという。



 「この作品は“遠近法”を駆使したベース(建物)と機体を使用しています。ザクが手を伸ばして襲いかかってくるシーンを作るために、ボディそのものを歪ませて、ポージング重視の制作を心がけました。また、左右アシンメトリーで、遠位になるにしたがって少しずつ大きく作成しています。でも、どの角度からも見てほしかったので、余り不自然な大きさにならないよう、微調整し違和感を取り除くようにしました」



 他にも、MSの巨大さを表現するためにベースとなる建物や道路(坂道)も奥に行くにしたがって狭く、配置物は小さく作り、遠近感が強調されるように制作されている。その“匠の技”の意図について聞くと、「ジオラマは一種の『1コマ漫画』」だと強調。続けて、「ジオラマには漫画のようにセリフを入れられないので、MSと背景のみで情景を説明し、見ている相手を楽しませたり、感動させなければいけません。そこは強く意識しています」と、ジオラマの醍醐味をアピールしてくれた。



■ジオン水泳部のキャラクター性は“物語作り”に最適(ひなけい)



 これまで数多くのジオラマを制作してきたモデラー・ひなけい氏。その魅力について、「見る人の想像を駆り立てる“物語を作ってる感”が醍醐味です」と即答。簡単なジオラマベースを作ってMSのポーズを決めて飾るだけでも、そこに“物語”ができると語った。



 今回紹介しているジオラマ『帰ろ~』は、戦闘を終えて帰還するジオン兵とイルカの群れが交わる“ひと時の休息”を表現。そこに登場するジオン軍の水陸両用MSの魅力についてひなけい氏は「存在感でしょうか。とにかくキャラが強いんですよ、どれも(笑)」と笑った。そして、「特別カッコイイわけでもなく、むしろ“ブサカッコイイ”みたいな。“キャラクター性”を持っているから、物語を作る際に役立っています」と、ジオラマにおける“キャラ”の重要性を説明してくれた。



 普段、こうしたハイレベルな作品をどのように作っているのか。ひなけい氏は「無理をしないこと」だと端的に語った。「最近は毎日ウォーキングをしているんですけど、1時間って決めるとなかなか続かないんです。それで、とりあえず15分だけでもって感じで歩いていて、調子が悪かったら15分で止めます。それと同じで、プラモ制作も『とりあえず1日5分』でもいいから手を動かすことが重要」だと力説した。こうしたルーティーンを身につけることが、プラモ制作を楽しく続ける秘訣なのだそう。



 そんな風に“楽しむ”一方で、プラモ制作では技術的な“壁”を感じることもあるのだという。



 「どの作業もずっと“壁”だらけで、自分の技法も見つからず上手い人の技術を真似るばかり…つまり“壁”だらけってことなんです。でも、とにかく『ぶち当たってナンボ』だと思っています(笑)」と、どこまでも前向きな同氏。こうした感性がジオラマの作品にも投影されているのではないだろうか。



 最後に、今後作ってみたいジオラマについて聞くと、「カッコ良いジオラマも作りますが、ガンプラを知らない方に見ていただいて『ここにイルカがいるよ』『ブタさんがいるよ』って、女性や子どもがホッコリする“物語”を作りたい」と満面の笑みで回答。今後もガンプラと“動物”が共演する素敵なジオラマ作品が見られそうだ。



(C)創通・サンライズ
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