ガンダム年表の空白を埋めた「ガンダム・センチネル」の役割と、“架空MS”の魅力

ガンダム年表の空白を埋めた「ガンダム・センチネル」の役割と、“架空MS”の魅力

 昨年40周年を迎えた『機動戦士ガンダム』は、今年『ガンプラ40周年』、そして来年は『ガンダムゲーム35週年』と立て続けに“周年”を迎える。ガンダムワールドがこれほど長い期間にわたって多様性のある世界観を広げられた一因として「ガンダム・センチネル」の存在を外すことはできないだろう。今回、同企画に登場した架空MS「ゼク・ツヴァイ(XEKU-ZWEI)」をオリジナルで制作した直井浩司(@koji_naoi)氏をインタビュー。キット化されていないMSを立体化する“匠の技術”やガンプラ制作への想いを聞いた。



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■タムラ料理長の「塩エピソード」にグっときた? 大人になって見る『ガンダム』は一味違う



――ガンプラにハマったキッカケは?



【直井浩司】小学生の時の第1次ガンプラブームに乗った形です。私は田舎育ちで、なかなか欲しいモビルスーツ(以下、MS)が買えたワケではないのですが、手にしたキットに感じたワクワク感は今でも覚えていますし、模型屋さんの空気感だったりセメダインの匂いなんかは今もフッと思い出すことがあります。



――ガンダムシリーズで一番好きな作品は?



【直井浩司】アニメ作品ではありませんが、1987年から1990年まで模型雑誌『モデルグラフィックス』に連載された「ガンダム・センチネル」です。アニメには登場しない架空兵器がジオラマなどで再現されていて、見たことのないMSの活躍に毎回興奮させられました。当時、アニメシリーズの空白期間を埋める独自設定に創造力を掻き立てられました。



――では、好きなキャラやシーンは?



【直井浩司】小学生の頃にファーストガンダムはかじりついて見たものの、それ以降の作品に関してはあくまでもガンプラを制作する為の資料として触れる程度。だからキャラクターやシーンに対して特別な想いを持ちづらかったのかもしれません。最近見返してみて思うのは、私の職業がイタリア料理人という事もあってか、ファーストのテレビ版で塩が無くなってしまうエピソードにグッと来ました。タムラ料理長も良いキャラですよね(笑)。大人になって見ると、子どもの頃とは全く違う“気づき”を得られるのもガンダムの魅力だと思います。



――直井さんは『月刊ホビージャパン』のガンプラコンテスト「全日本オラザク選手権」で金賞を獲得しています。この選手権は直井さんにとってどんなコンテストですか?



【直井浩司】私にとっての「オラザク選手権」は、『締め切りがある』というのが大きいです。締め切りがないとついついダラダラと作ってしまうことが多くて…。そのダラダラが模型制作の醍醐味でもあったりしますが(苦笑)。それと、やっぱりお祭り参加的な楽しみがありますね。SNSや展示会で繋がった見知った名前があればやはり嬉しい気持ちになります。



――金賞作品のテーマを教えてください。



【直井浩司】制作した機体はRMS-142「ゼク・ツヴァイ(XEKU-ZWEI)」です。これも先ほど話した模型企画「ガンダム・センチネル」に登場する架空のMSです。キット化されていないMSなので形にする事自体がテーマになっています。1/100スケールで前後幅が50cm弱ありますから、形はもちろん強度の面も課題となりました。



――制作の際に使用したキットを教えてください。



【直井浩司】ゼク・ツヴァイは腕が3対あります。その腕部のみキットを流用していて、ボディ側からMGギャンの腕、MG AGE-2の脚部フレーム、MGトールギスの脚部フレームとなっています。それ以外の頭部から脚部、装備に至ってはプラ板やパテ類、各社オプションパーツ類で制作しました。



■キット化されていないMSを制作する際は情報のない箇所の“辻褄合わせ”が楽しい



――この作品で一番表現したかったものは?



【直井浩司】大きいけれども鈍重ではない印象に出来たらと考えていました。こだわった箇所としては、大きい故に装甲表面が間延びしないように細かなディテールを要所に配置しています。制作中には1/100サイズのフィギュアを当てたりして、アレコレと考えながらまとめて行きました。



――そのこだわりが評価されての「オラザク選手権」金賞の反響はいかがでしたか?



【直井浩司】沢山のお祝いの言葉をもらったり、近場ではお酒も出てきたり(苦笑)。それまで全く音信不通だった方からもLINEが来た時には、「実はガンプラって思っているよりも広い範囲で認知されているのでは?」と思ったくらいです。



――直井さんは高い技術をお持ちですが、ガンプラ制作で技術的に「難しい」と感じるのはどんな時です?



【直井浩司】ここ数年はキット化されていなMSを作る事が多いので“壁”だらけですね。設定画から立体に起こしていく際、見えない、描かれていない箇所が出てきます。それをどう辻褄を合わせるのかが“壁”であり楽しみでもあります。



――その“壁”をどうやって乗り越えていますか?



【直井浩司】目の前の“問題”について考えるのを止めない事でしょうか。シャカリキに考えるのではなくて頭の片隅に置いておく感じです。そのうち、飲み会の帰り道や仕事の途中、お風呂に浸かってボンヤリしている時にフッとアイデアが浮かんでくる事も多いです。それと、やはり失敗しないと“壁”は抜けられないかもしれません。手を動かし続けるのも壁を抜けるコツかもしれませんね。



――今後作ってみたいガンプラ作品があれば教えてください。



【直井浩司】『機動戦士ガンダム0083』に登場したザメルの初期画稿である「メルザ・ウン・カノーネ」は作りたいですね。これまた大きくてズングリしていますが(笑)。自分は重厚感のあるMSが好きですね。もう人型で無くなっているくらいが良いです。



――直井さんにとってガンプラとは?



【直井浩司】それで言うと「私にとってガンプラとは〇〇だ!」という“体感”を得るための作業かもしれません。だから趣味とは一言で言えない“緊張感”みたいなものもあって、その刺激を求めてガンプラ制作をしている面もあると思います。



(C)創通・サンライズ
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