なぜBAND-MAIDは海外でウケたのか? ハリウッド映画出演のメイド服バンドがブレイクの兆し

なぜBAND-MAIDは海外でウケたのか? ハリウッド映画出演のメイド服バンドがブレイクの兆し

 “バンド×メイド”をコンセプトにした女性5人組バンド・BAND-MAIDの世界配信アルバム『CONQUEROR』が、米ビルボードのWorld Albumsチャートで11位にランクインした。今年4月には世界的ライブイベンター「ライブ・ネイション」と提携し、11月にはONE OK ROCK、BABY METALも手がけている世界的ブッキングエージェンシー「ユナイテッド・タレント・エージェンシー」と契約。Netflixの新作ハリウッド映画『KATE(原題)』では、セドリック・ニコラス=トロイヤン監督のラブコールによりBAND-MAIDとして出演するなど、各方面で大きな話題を集めている。BABYMETALに次ぎ、海外での活躍が期待されている彼女たちの魅力について探ってみよう。



【写真】美脚網タイツ姿の小鳩ミクらメイド服姿が“萌えかわいい”メンバーのソロカット



◆デビュー当初より海外に照準を合わせていた



 BAND-MAIDは、小鳩ミク(G&Vo)、SAIK(Vo)、KANAMI(G&Vo)、AKANE(Dr)、MISA(B)の5人組。2013年7月に結成し、ライブを“お給仕”、ファンを“ご主人様”“お嬢様”と呼ぶなどメイドならではの世界観、そして、ツインボーカル、ギター、ベース、ドラムの各メンバーの確かな実力とハードなロックサウンドを特徴としている。



 近年、BABYMETALやONE OK ROCKといった日本人アーティストの海外進出が活発化しているが、「BAND-MAIDを始めたときから世界を見据えていた」(小鳩/ORICON NEWSインタビューより)というコメント通り、彼女たちも結成当初から海外を視野に入れていた。2016年にはアメリカ・シアトルの日本文化を紹介するコンベンションイベント『Sakura-Con』に招かれ、初の海外ライブを経験。「日本のカルチャーを紹介するイベントだったこともあると思うんですけど、“萌え”は世界共通語だなって思いました」(小鳩)と手応えを掴んだ彼女たちは、1stアルバム『Brand New MAID』でメジャーデビューした2016年5月にイギリスのイベント『MCM COMIC CON』に出演。さらに10月からはメキシコ、イギリス、ドイツ、フランス、ポーランド、イタリア、スペイン、香港の8ヵ国9公演のワールドツアーを開催するなど、着実に活動の規模を広げていった。



◆メイド服姿で本格的なハードロック、かわいいとかっこいいのギャップ萌えする人が続出



 BAND-MAIDの最大の武器は、かわいいメイド服姿で本格的なハードロックを演奏する“ギャップ萌え”だろう。このコンセプトを考案したのは、バンドの発起人である小鳩。「音楽をやりたいと思って熊本から上京したんですが、秋葉原のメイド喫茶で働いているときに“かわいいメイド服で、かっこいい曲をやったらおもしろいんじゃないかな”って思って」ときっかけを語っている。お嬢様、女王様、ボーイッシュまで、メンバーのキャラクターに合わせてデザインされた衣装、秋葉原のメイド喫茶の雰囲気を持ち込んだステージングが、日本のオタクカルチャーに興味を持っている海外のユーザーに強くアピールした。



 音楽性について結成当初は試行錯誤を繰り返したものの、1stシングル「愛と情熱のマタドール」に収録された「Thrill(スリル)」をきっかけにハードロック路線に変更。高い演奏力を活かしたバンドサウンドにより、見た目とのギャップを生み出し、それがバンドの特徴となっている。この点に関してメンバーは、「見た目がこうだと“演奏も可愛い感じなのかな”って思われることがどうしても多いんです。でも、それは私たちとしてはプラスだと思っていて、音を鳴らした瞬間に、会場にいる方が“あっ!”という顔をすると“よし”って思いますからね。ちょっとナメてたでしょ?って」(小鳩)「“見てろよ”感ですね」(MIKU)と言う。自らの特徴を俯瞰し、それを最大限に活かしていることも、彼女たちの躍進の理由だろう。HIP HOP、R&B、EDMなどが主流の欧米の音楽シーンに対し、本格的なロックサウンドで挑む姿勢もまた、現地のロックファンの心を掴んだ要因だ。



 また、海外におけるBAND-MAIDの知名度を上げる原動力となっているのが、YouTubeでのリアクション動画の多さだ。特に「Thrill(スリル)」や「DICE」といったライブで人気のハードな楽曲に対するリアクション動画の数は際立っており、彼女たちの演奏力の高さ、パフォーマンスの良さを広く伝えることにひと役買っている。



◆既存の市場で争わず、他アーティストと被らない“一択の存在”で支持を獲得



 2019年4月にはU2、レディ・ガガ、マドンナなどを手がける世界的ライブイベンター「ライブ・ネイション」と提携し、11月にはONE OK ROCK、BABY METALにも関わっている世界的ブッキングエージェンシー「ユナイテッド・タレント・エージェンシー」と契約。Netflixの新作ハリウッド映画『KATE(原題)』では、セドリック・ニコラス=トロイヤン監督のラブコールによりBAND-MAIDとして出演するなど、活動の幅を大きく広げている。また、12月11日に発売したアルバム『CONQUEROR』に収録の「The Dragon Cries」では、デヴィッド・ボウイの作品を数多く手がけたことで知られるトニー・ヴィスコンティ氏がプロデュースを担当し、世界基準のロックサウンドを実現。音楽的な部分でも確実に評価を上げている。海外の有名な映画監督、音楽プロデューサーのバックアップを得たことは、今後の海外進出に大きな効果があるはずだ。



 現在、ニューアルバム『CONQUEROR』を引っ提げた全国ツアーを行っているBAND-MAIDは、2020年7月10日、11日、12日にアメリカ・オハイオで開催されるフェス『Inkcarceration Festival』に日本人として初めて出演する。映画『ショーシャンクの空に』の舞台となった刑務所跡地で行われ、ハードロックとタトゥーをコンセプトに掲げた同イベントには、リンプ・ビズキットやウィーザー、ブリンク182といった大物アーティストも出演。コアなロックファンが集まるこの大舞台で持ち前の”ギャップ萌え”を発揮できれば、彼女たちの評価と知名度はさらに向上するだろう。



 日本でも海外でも、アイドルやバンドシーンといった既存の市場でパイを奪ったのではなく、際立ったオリジナリティによって、他に代えがきかない“一択”の存在として支持を集めたBAND-MAID。質の高い音楽性、独創的なライブパフォーマンス、国境を越えた活動方針を含め、彼女たちのスタイルは今後の日本のアーティストにとっても1つの指針になる可能性を秘めている。2020年代以降のBAND-MAIDがどのような展開を見せるのか、今後も注視したい。



(文/森朋之)
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