“ガイアの夜明け砲”とも話題に 17年間伝え続けてきた企業の「光」と「闇」

“ガイアの夜明け砲”とも話題に 17年間伝え続けてきた企業の「光」と「闇」

 2002年4月から放送がスタートした報道ドキュメンタリー『ガイアの夜明け』(テレビ東京系)。“夜明け=日本経済の再生”を目指し、様々な現場で奮闘する人たちを17年以上追い続けてきた。今年に入り、番組の顔である「案内人」が10年間務めた江口洋介から女優・松下奈緒に変わったほか、ナレーターも眞島秀和、そして新しいエンディングテーマにエレファントカシマシの宮本浩次を起用するなど大幅にリニューアル。このタイミングで大きく舵を切った理由、また『ガイアの夜明け』が伝え続けてきたテーマをチーフプロデューサー・野田雄輔さんに聞いた。



【全身ショット】赤のロングスカート姿で登場した松下奈緒



■「日本このままでいいのか」とスイッチを入れ直す



――2020年1月のタイミングで江口さんから松下奈緒さんに変わったんですが、この経緯からお聞きしたいです。



【野田】これまで案内人をつとめてきた江口さんが、ちょうど2019年の12月に担当して10年を迎える節目というのがひとつと、今年は東京五輪という時代の空気が変わる出来事があり良いタイミングだなと。番組としても、放送開始された17年前から今日に至るまで、リーマンショックもあり、東日本大震災もあり、“失われた時代”をずっと見てきて、「日本このままでいいのか」ともう一度スイッチを入れ直す意識がありました。



――今回、初の女性案内人として松下さんを選んだ決め手はどこにあるのでしょうか。これまで見てこなかった視聴層を広げる意味も?



【野田】おっしゃる通りで、テレビの視聴者層の高齢化が進んでいている中で、これからの日本を引っ張っていく、リードしていく3~40代のTVを見ない層にもう一回振り向いてもらうためにもお願いしました。松下さんご自身が現在35歳で、世代ど真ん中という事もあり、女優業に加えピアニストもやっていて、“自由に自分らしく、しなやかに人生を生きている”というのも、時代の空気感にも合っているのではないかと。オファーしたところ、ドキュメンタリーの出演経験もあり、「現場取材が大好き」とのことだったので縁を感じましたね。



■女性視聴者も増やすには「イケボ」も重要



――また、ナレーターの刷新についても聞きたいんですが、眞島秀和さんを起用した理由はどこにあるのでしょうか。最初が蟹江敬三さん、そして杉本さんと、挙げていくと「渋い」というか男らしい感じの面々です。



【野田】もちろん世代を若くする理由もあるんですが、眞島さんはドラマ・映画と数多くの現場に参加していて経験値が凄く高くて。弊社のドラマに出演しているのも見ていて以前から注目してたんですよ。あと、「声が凄くいい」のも大きいですね。



――番組放送後のSNSを見ていたんですけど、眞島さんに言及する女性のコメントがかなり多かったです。



【野田】そう。女性のファンが多いというのは結構無視できないんです。声がいいという、いわゆる「イケボ」ですし、それも見てもらう上では大事なこと。お父さん世代が見ているイメージを変えたかったかな。眞島さんのお芝居を見ていると、感情のスイッチの入れ方とかバリエーションがかなりあるんですよね。だから我々がもっといいドキュメンタリーを作って、色んな眞島さんを引き出したいなと。



――それにしても、案内人とナレーター、2つの役割を俳優さんが担うっていうのは経済番組にしては豪華ですね。



【野田】贅沢ですよね。そのポジションを局アナにするって事も出来るでしょうし、聴きやすさとか滑舌だけで言えばその方がいいんでしょうけど、ビジネス、経済でそうゆうナレーションがつくと途端に宣伝臭くなってしまうことがあるんです。これまで視聴者の方たちにも「ただの企業の宣伝じゃないか」とお叱りを受けることもありました。表現の仕方とか、物の言い方で全然見方が変わってくるので、俳優さんが持ってる経験値を活かしていこうと。



■大戸屋ほか伝えてきた企業の「光」と「闇」 見た人に問題意識を持ってほしい



――これまで『ガイアの夜明け』では企業の「光」だけじゃなく「闇」の部分も明らかにしてきましたよね。



【野田】単なる企業叩き、不祥事追及だけではなく、見た人にどういう風に改善して、何をこれからやっていけばいいのかという、考えるきっかけを示せればと意識してきました。いま一部で「ガイアの夜明け砲」って言葉を時々目にしますが、その言われ方が凄い嫌で(笑)。最近で言うと、大戸屋さんが「社員の月残業を45時間以内に抑える」という取り組みを追った回ですね。番組では改善するところまで放送したんですが、一部切り取られた話がネットで拡散されて、見て無い人もそこに乗っかって、結果炎上してしまって。大戸屋さんには腹をくくって取材を受けていただいて、こちらとしても真摯に取材をやらせていただいたんですが……。



――「ガイアの夜明け砲」などという言われ方も最近のことですよね。



【野田】かつてはそういう見られ方は無かったんですが、働く人の考え方が変わってきているんだなと思います。かつてのサラリーマンは、「24時間戦えますか」というコピーが出ていたことからも、会社のために粉骨砕身、家庭を顧みず、長時間労働もいとわず、みたいな精神があったじゃないですか、ソルジャーみたいな。でもとっくにそんな時代じゃないんだと。



番組では“偉い人たちが会議で部下を叱責する”シーンが多かったと思います。最近は取材する側もされる側も「ちょっと違うよね、これは」っていう認識がありますね。もちろん、報道の使命としてリアルを伝え続けることは必須ですが、視聴者には「何をこの人たちはやろうとしているのか」、また現場や管理職の人には「この企業の取り組みいいな、参考になるな」と最終的には伝わる番組にならないといけない、そこを意識して取材・制作しています。



――バランス感により注視しつつということですね。



【野田】はい。新しい何かが生まれる瞬間、いわゆる「夜明け」のタイミングには光もあれば闇もあるし、両方見せないと全貌がわかりません。それを一切合切抱えながらも今後進めていきたいなと。松下さん、眞島さん、そしてテーマソングを歌ってくれたエレファントカシマシの宮本浩次さんという3人のパワーをミックスしながら、新しい『ガイアの夜明け』にしていくのが目標ですね。
カテゴリ