古舘伊知郎が熱弁、『エール』の魅力は「にじみ出るあたたかさ」と「婉曲表現の美しさ」

古舘伊知郎が熱弁、『エール』の魅力は「にじみ出るあたたかさ」と「婉曲表現の美しさ」

 NHKで放送中の連続テレビ小説『エール』(月~土 前8:00 総合ほか※土曜は1週間の振り返り)に、鶴亀寅吉(つるかめ・とらきち)という名の胡散臭い興行主の役でゲスト出演するキャスターの古舘伊知郎。「ちょっとしか出ないけれど、だからこそ、タイムスリップして迷い込んだ感じが楽しかった」という。共演した窪田正孝や二階堂ふみの印象、『エール』の魅力を立て板に水のごとく話した。



【写真】関内家に滞在する裕一を訪ねてきた鶴亀寅吉



 同ドラマは、「栄冠は君に輝く(全国高等学校野球大会の歌)」「六甲おろし(阪神タイガースの歌)」「闘魂こめて(巨人軍の歌)」などの応援歌をはじめ、生涯に約5000曲あまりを作曲した、古関裕而(こせき・ゆうじ)さんと妻で歌手としても活躍した金子(きんこ)さんをモデルに描く、音楽とともに生きた夫婦の物語。主人公の古山裕一を窪田正孝、妻・音を二階堂ふみが演じる。



 古舘が演じる鶴亀は、愛知県で音楽関係の興行を取り仕切る人物。国際作曲コンクールで入賞した裕一の音楽会を開催したいと申し出る。第5週、第22回(4月28日放送)と第25回(5月1日放送)に登場予定となっている。



 連続テレビ小説は、第46作『君の名は』(1991年)に、主人公の友人・本間定彦役で出演して以来、29年ぶり2作目。『下町ロケット』(2018年、TBS)以降、「ドラマや映画の話がくるかなぁと思っていたら、一つもこなかった(笑)。あきらめかけたところで『エール』がきた。うれしかったですね。今回はほんのちょっとしか出ないので、気も楽でした」。



 収録に参加した日数はわずか2日。「エンジンがかかったと思ったら、終わっちゃった」ともの足りなさを感じるくらい、現場はとても居心地がよかったという。特に、窪田と二階堂の“気遣い力”に心酔した。



 「窪田さんははじめてお会いしましたが、福島弁まじりで一生懸命気をつかってくれて。ニュース番組をやっていたイメージでいろいろ聞いてくれるから、僕もイラン情勢とか説明しました。二階堂さんにも一生懸命うんちくたれたりして、すごく楽しかった。いまの若い方ってたいしたもんだな、と思いましたね。役が人を育てるし、そもそもしっかりしている。ドラマは“虚”なんだけど、虚と実の間(あわい)がありました」



■窪田正孝を絶賛「一芸に秀でる人は多芸多才」



 本作のモデルとなった古関さんは、明治42(1909)年に生まれ、平成元(1989)年に80歳で亡くなった。「僕がリアルタイムで知っているのは晩年の古関さんですが、責任感のある優しい方なんだろうなという印象があって。『エール』の窪田さんと重なるんですよね。同じようなぬくもり、あたたかみが感じられる。勝手につくった言葉ですけど、『一芸に秀でる人は多芸多才』という言葉が古関さんにも、窪田さんにも当てはまる。これからますます、窪田さんや二階堂さんの周りへの気遣いというものが、画面上ににじみ出ていくんじゃないかと思います」。



 もう一つ、古舘が本作の魅力として熱弁したのが、「婉曲表現の美しさ」だ。



 「日本人のDNAには含羞(がんしゅう)が刻まれている思うんです。自己主張に対する消極的な姿勢にもつながるかもしれないんだけど、今以上に昔は男と女の機微の中でも、ストレートにものを言わず、表情や別のことばで遠回しに伝えて恥じらいを表現していた。“I love you”を二葉亭四迷が“あなたのために死んでもいいわ”、夏目漱石が“月がとても美しいから”と訳したように。



 すべてが情報に化けて、スマートフォンの中だけで完結して、合理的でいいんだけど、なんだか人間関係はギスギスしている、そんな現代に比べて、昔はよかったなんていうつもりはないけれど、昔はもっと生身の人間同士がぶつかり合って、こすり合って、体温が感じられた。僕が『エール』の収録でご一緒した数少ないシーンの中にも、それなりのまだるっこさを含んだ美しさがあって、あたたかくて、気持ちよかった。それが金粉をまいたみたいにキラキラしてみえる。このドラマの見どころの一つだと思います」。



 ヒール役を好演した『下町ロケット』の現場で「わざとらしい小芝居をしてしまう自分の悪いところを教わった」という古舘が満を持して臨んだ『エール』。限られた出番の中いかに存在を刻めるか。「それは自信ないんです」と満面の笑みで謙遜していた。
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