70年前の小説『ペスト』が急浮上、「上半期ランキング」に見るコロナ禍の“本”事情

70年前の小説『ペスト』が急浮上、「上半期ランキング」に見るコロナ禍の“本”事情

 感染症「ペスト」で封鎖された街を描く小説『ペスト』が、『オリコン上半期“本”ランキング2020』の「文庫ランキング」で6位にランクインした。本書が世に出たのは70年ほど前。今回、新型コロナウイルスの“予言書”として話題になったことで、大きく売り上げを伸ばした。他にも、総合部門の「BOOKランキング」には5位『はじめてのやせ筋トレ』、13位『世界一美味しい手抜きごはん 最速!やる気のいらない100レシピ』など外出自粛を受けて家でもできるトレーニング本やレシピ本も。また、4位の『こども六法』も休校を受けて更なる広がりを見せたとも言える。激動の2020年上半期、コロナ禍における“本”の動向とは?



【20年上半期ランキング】BOOK1位~25位『鬼滅の刃』ノベライズが上位独占、田中みな実も歴代最高



■コロナ禍で求められる“道標”、70年前の長編小説が話題に



 『オリコン上半期“本”ランキング2020』の「文庫ランキング」で6位となったフランスのノーベル文学賞作家・アルベール・カミュ(1913~1960)の代表作『ペスト』(新潮社/1969年11月刊行/訳:宮崎嶺雄)。ペストの発生により封鎖された都市・アルジェリアのオラン市を舞台に、外部から遮断され孤立状態となった中で闘う市民たちの姿を描いた長編小説で、フランスでの初版は1947年。新型コロナウイルス感染拡大を受けて再び注目が集まった。4月には、NHK Eテレで『100分de名著 カミュ“ペスト”』が全4回の一挙放送されたことも話題となり、書店では平積み展開され、期間内売上16.5万部を記録した。



 読了したSNSユーザーたちは「今のコロナ禍を見通したかのよう」「シンクロする様な場面もあって何とも言えない気持ちに」「どう闘い、どう生きていけばよいか考えさせられた」「今に通じる事が沢山あった」など、現在の状況と重ね合わせていた。日々情報が変わり、たとえ専門家であっても何を言うにも断定が難しい中、新型コロナウイルスの感染拡大でどのように生活が変わるのか、最悪の事態はどうなるのか不安に思う人も多いはず。だからこそ、70年ほど前に誕生したベストセラーが道標的に機能したと言えるのではないだろうか。当時とは生活スタイルも医療体制も異なる中、不条理に対する人間の振る舞いなど不変的な部分が多くの読者に響いたと言えるだろう。



■“おうち時間”を充実、トレーニングやレシピ本、休校中の学習に児童書も上位の傾向に



 また、他にも『オリコン上半期“本”ランキング2020』の「BOOKランキング」では5位に『はじめてのやせ筋トレ』((著・イラスト)とがわ愛/(監修)坂井建雄)、12位に『DVDでよくわかる! 120歳まで⽣きるロングブレス』(著・美木良介)がランクイン。『はじめてのやせ筋トレ』は昨年12月に『中居正広の金曜日のスマイルたちへ』(TBS系)で特集されると、売上が上昇。SNSでの購入報告(=決意表明)や「今日やった筋トレ」「○日目」などの進捗報告も盛んに行われており、読者による自発的なレビューが目立つ。そのような投稿を見て、運動不足になりがちな今こそ気になった人も多いのではないだろうか。



 同じくトレーニング関連の『DVDでよくわかる! 120歳まで⽣きるロングブレス』は、2012年に多くのメディアで取り上げられて大ヒットとなった「ロングブレスダイエット」シリーズの最新作。今回は「免疫力アップ」などの健康面に特化しており、“家でできる健康法”としてメディアで話題になった。他にも自炊が増えたことで、昨年からロングセールスの『世界一美味しい手抜きごはん 最速!やる気のいらない100レシピ』(著・はらぺこグリズリー)が13位、また『syunkonカフェごはん レンジでもっと! 絶品レシピ』(著・山本ゆり)が21位にランクインするなど、“おうち時間”を充実させてくれる本が目立つ。



 そして、子どもに読んでほしい本として人気の『こども六法』は4位にランクイン。昨年8月に発売し、『オリコン年間“本”ランキング2019』の「BOOKランキング」で45位(17.7万部)にランクインするなど当時から話題だったが、今回の上半期で急上昇。『こども六法』はいわゆる六法全書の内容を子どもでも容易に理解できるよう、わかりやすく「翻訳」したもの。商法を除外しつつ、少年法といじめ防止対策推進法を加えた構成となっており、子どもたちの再開後の学生生活に直結するものになっている。SNSでは「こどもと一緒に読みやすい」「『こども六法』で娘と一緒に勉強した」「大人が読むべきじゃないかと思う」などの投稿が多数あり、休校中に家の中で過ごす親子のコミュニケーションのきっかけにもなっていたのではないだろうか。



 先月末に緊急事態宣言が取り下げられたが、生活が大きく変わることとなった2020年上半期。出版不況と言われて久しい中、外出自粛で自分や家族と向き合う時間が増えたからこそ、“本”の真価が再確認できた半年だったとも言えるかもしれない。
カテゴリ