「敵役に夢中になる」背徳感 ザクを作り続けるモデラ―の偏愛「愛すべきメカ」

「敵役に夢中になる」背徳感 ザクを作り続けるモデラ―の偏愛「愛すべきメカ」

 ヒーローを描く作品に必ずと言っていいほど登場するのが名敵役。『ガンダム』で言えば、「ザク」がその存在に当たるだろう。モデラ―のMA-SHOP 1971(@Zakumodls)さんは、そんな「ザク」に魅せられたひとり。一体、どんなところに魅力を感じ、作品を作り続けているのだろうか?



【写真】ザクが大気圏に…“ザクモデラ―”が完全再現した名シーン「大気圏突入」



■自ら作ったザクのベースキッドを用い、16体のザクを制作



―――作品はザクが多いようですが、なぜザクを作ろうと思われたのですか?



「ザクはガンプラに最初にハマった小学生の時から一貫して好きですね。それまでの勧善懲悪のロボットアニメとは異なり、敵役として悪の記号は盛り込まれつつも抑え気味なデザイン、ミリタリーっぽさを感じさせるいかにも“戦闘機械然”とした雰囲気、デザインを裏切らないストイックな演出と物語、それらすべてにやられてしまいました。『敵役に夢中になる』というやや背徳な部分もある種の興奮倍増効果があったと思います」(MA-SHOP 1971/以下同)        



―――これまでに作られたザクは何体くらい?



「『宇宙世紀』モノであれば、発売されたものの1/4くらいは組んだり完成させたりしてきました。ただし真面目に作り始めたのは10年前から開始した『1/144のザクシリーズ』になります。きっかけは07年にMGシリーズでザクのアップデート版が発売され、そのコンセプトに痺れたのが始まりです。当時ネットモデラーさんによる数々の優れた作品にも大変な刺激を受けました。基本は自身の手で市販のキットを使用し、自分の考える基準となるザクをまとめ上げ、それをベースにバリエーションを作っていこうと考えました。そうやって最初の基準となるザクが出来たのが2011年。2002年発売のHGUCザクをベースキットにすることにしました。現在までに仕事の合間を縫って合計16機のザク及びそのバリエーションを作りました。この間ザク以外のMSを作ったのは2機のみです」         



◆バイク1台分の費用をかけ、3Dプリントパーツを使用



―――数あるザクのなかでもお気に入りの作品は?



「基本的にどのザクも気に入っていますが、しいて挙げるなら2019年作の『量産型ザク』と『シャア専用ザク』です。これらのザクは言うまでもなく最も基本的なザクですが、2011年に最初の雛形として完成した『自分の納得したザク』のシルエットをそのまま継承してディティール追加や構造のアップデートを施したものです。作品名は『大気圏突入』。使用キットはHGUCザク及びHGUC高機動型ザクです。またこの作品は自作の3Dプリントパーツを多用した最初のものです」



―――3Dプリントパーツを組み込むところにこだわりを感じますね。



「2011年版のプロポーションを原則なぞるのみでしたのでイメージ構築の部分での労力はかかりませんでしたが、3Dプリント全般が初めての経験でしたのでデータ作成とプリント結果の関係性を体得するまでに何ヵ月も悪戦苦闘した上に、費用もバイク1台分ぐらい飛んでいきました(笑)。因みに3Dプリントをチョイスしたのは、拡張性は言うまでもありませんが、近年急速に値段が手ごろになっていることと、基準となるザクを今後も個人で正確に複製する上では非常に強力なツールになると考えたからです。

 こだわりという点では、テレビ版『ガンダム』第5話に登場するザクということで、それぞれテレビ版の物語に準じた武装を装備させるようにしました。あとは機体の所属部隊、階級、役割などを表すマーキングを自分なりに決めたルールに基づいて施しています」



―――「大気圏突入」以外にもたくさんのバリエーションのザクを制作されています。そこまで魅せられるザクの魅力とは?



「統一フォーマットで無数のバリエーションを愉しむという形をとるキャラクターは今では珍しくないかもしれませんが、MSV(モビルスーツバリエーション)、特にザクバリエーションは、そういった遊びを数十年先取りしていたと思います。MSVはどれも基準となる設定画を忠実にトレースして整理されており、機体ごとの違いが一目瞭然です。当時これ全部集めたい、作ってみたい~と思った少年は自分だけではなかったと思います。

 もう一つはこれだけ多くの種類が発売されているガンプラで、現在において未だにアップデートされたザクバリエーションがコンプリートされないという現状への不満があり、それならばとこの隙間は自分で埋めようという動機になったのだと思います。

 ザクそのものの魅力についてはなにより、まずデザインそのもののインパクトが凄いこと。手塚治虫的な線密度にヤマトをはじめとしたアニメブーム当時のSF味が加味されてる所、それらがフィクションなんですけど確かな『世界』を感じさせる存在感。兵士としての宿命を全身にまとった狂暴でありながら虚無な表情や佇まい、それはつまり組織で運用される機器であるが故の漫画的なやり過ぎ感が抑えられている所、それでいてけれん味のあるナンセンス要素(カメラが発光したり、パイプの機能が謎だったり)といった所ですね。後は弱いところ、少々弱すぎる気はしますが…」



―――すごい愛を感じます。MA-SHOP 1971さんにとって、ザクとは?



「自分の見たいもの欲しいモノをこれでもかと泉のように湧き出る刺激で魅せてくれる愛すべきメカです。このガンプラさえあれば他に何もいらないかも?ですね」



(C)創通・サンライズ
カテゴリ