工作の域を超えた『ダンボール自販機』が話題 “TVチャンピオン”王者の社長語る素材愛「飛沫防止にも」

工作の域を超えた『ダンボール自販機』が話題 “TVチャンピオン”王者の社長語る素材愛「飛沫防止にも」

 先日、お金を入れてボタンを押すと、ちゃんと缶ドリンクが出てくるという「実物大のダンボール自販機」の動画が、SNSに投稿され大きな反響を呼んだ。その精巧な作りに「ダンボール工作の域を超えている!」と驚きと絶賛の声が上がった。ダンボール工作キットの企画・販売を行うhacomo代表取締役社長の岡村剛一郎氏に、ダンボールにこだわる理由やアート&クラフト素材としての可能性について聞いた。



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◆ダンボールは、ものづくりには最適な材料「広く発信したい」



 夏休みの宿題などで誰もが試したことのあるダンボール工作。近年はネット通販の増加でご家庭に入ってくるダンボールも増え、子どもたちにとってますます身近な工作素材となっている。そんなダンボールを使った遊び心溢れるものづくりを追求し、海外でも高く評価されているhacomo。先日投稿された「実物大のダンボール自販機」の動画には配達員がドリンクを補充する場面もあり、ダンボールと輪ゴムだけで精巧に作られた中の構造もバッチリ映っている。ちなみに配達員は“本物”ではなく、このダンボール自販機を制作した岡村社長だ。



「構造をお見せしたかったというよりは、僕が“ベンダーさん(配達員)なりきりごっこ”をしたくて動画に出してもらったんですが(笑)、中身を多くの方に褒めていただいて、社員たちの工夫も報われたなと思っています」



 そんな社長の言葉からも伺えるように、hacomoが制作・販売するダンボール工作キットは、子どもはもちろん大人もワクワクしてしまう遊び心に溢れたものばかり。2010年に同社を創業した岡村社長はもともとダンボールメーカーに勤めるかたわら、テレビ東京『TVチャンピオン』の「ダンボールアート王」などでも活躍。数々のデザイン賞にも輝いたダンボールクリエイターの第一人者でもある。



「国内で作られるダンボールの99%は包装用に使われています。しかもかさばって輸送コストもかかるため、ダンボール会社の主なお客さまは地元産業。“100キロ圏内の商売”と言われているんですね。だけどダンボールは耐久性や耐湿性にも優れている上に、切ったり折り曲げたりといった加工も簡単にできる、ものづくりには最適な材料でもあるんです。そんな日本のダンボールを使って、広く一般の方にも楽しんでもらえるものを作りたい、できれば海外にも発信したいと考えたのがhacomoの設立のきっかけでした」



 hacomoの商品ラインナップは、手のひらサイズの動物や昆虫から、動かして遊べる家電やおもちゃ、実際に着られる鎧兜、本棚やちゃぶ台といった家具などなど約150種類。木馬や滑り台など、子どもが乗って遊べる遊具のダンボール工作キットもある。



「家具や遊具など特に耐久性や安全性が必要な商品は、特殊強化三層ダンボールという輸出に使われるダンボールを使っています。木馬は大人が乗っても大丈夫なほど頑丈なんですよ」



◆コロナ禍で通信販売は例年の10倍…「飛沫感染防止パーテーション」の販売も



 近年はフランス・パリで開催される世界最高峰のインテリア&デザイン展示会『メゾン・エ・オブジェ』にも毎年出展。ヨーロッパを中心に海外からの注文も増えている。



 さらにダンボール工作の魅力を伝える取り組みとして、イベントやワークショップにも力を入れてきた。なかでも2008年に地元・香川県で始まった「ダンボール遊園地」は、巨大な恐竜や動物といったオブジェから、実際に乗ったり入ったりできる建物や遊具も満載。子どもたちに大人気の体験型イベントとして全国各地で開催されている。



 ところが新型コロナウィルス感染拡大の影響で今年決まっていたイベントは軒並み中止。さらには海外からの受注もストップするなど、「創業以来のピンチ」となった。その一方で家でできるアクティビティとしてダンボール工作に注目が集まり、同社の通信販売も例年の10倍もの注文が入った。「なんとか乗り切れそうです」と岡村社長は胸をなでおろす。また、この4月からはダンボール製の「飛沫感染防止パーテーション」の販売も始めた。



「もともとはコロナ禍が叫ばれ始めた頃に、余った強化ダンボールで作って社内で使っていたものだったんです。遊び心をテーマにしてきた会社だし、最初は『こういう商品を販売するのはどうなんだろう…』と悩んだところもありました。ただ、ただいろんなお店を見てると手作りのダンボール間仕切りを使っているが、ヘタッとして耐久性が低かったり、使い勝手が悪そうだったりと、お困りの様子でした。弊社ならもっといいモノが作れる、もしもニーズがあるなら、ということで販売することにしました」



 岡村社長は「鉄やプラスチックなどと違って、いらなくなったら簡単に処分できるのもダンボールの良さなんです」と言い切る。子どもの成長とともに不要となる遊具もそうだが、いつか飛沫防止パーテーションが社会から必要なくなる日が来て欲しいと思わされたひと言だった。



◆ダンボールで未来を担う子どもたちのものづくりの心を育みたい



 それでもやはり、hacomoのキャッチフレーズは「“おもしろい”で未来を拓く!」。商品化の決め手は「売れそうかどうか」ではなく、「面白いかどうか」だという。そこには未来を担う子どもたちのものづくりの心を育みたいという思いがあった。



「創業した頃に僕にも子どもができて、よりそうした思いを強くしました。入口は既製品とかイベントでもいいけれど、そのうち自分で1から何かを作りたくなる。そんな子どもたちの創造力を刺激するような商品を、これからも開発していきたいですね」



 ちなみに冒頭で紹介した「実物大のダンボール自販機」だが、商品化の予定は今のところないとのこと(ミニサイズの自販機のダンボール工作キットは販売中)。



「ダンボールでどんな面白い駆動ができるか毎日いろいろな試作をしていて、あれもその1つだったんです。かなり大型なので、一般のご家庭に需要があるかどうかわからないのですが、もし“欲しい”という声が多く集まったら商品化も考えます。ただその場合は、さらに動きを調整したりデザインを洗練させたりと、もっとクオリティを追求したものにしなければいけないと思っています」



(文/児玉澄子)
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