バディドラマ乱立のなか『MIU404』が支持集める理由 ホームドラマ風の癒しを醸す“人間臭さ”が出色

バディドラマ乱立のなか『MIU404』が支持集める理由 ホームドラマ風の癒しを醸す“人間臭さ”が出色

 バディものが乱立する今期ドラマのなかで、高い支持を得ている『MIU404』(TBS系)。早くもシリーズ化への期待が高まっている本作は、W主演の綾野剛と星野源、それぞれのこれまでとは異なる顔が役柄を通して引き出されているのが特徴。バディドラマとしての本作の新しさと人気の理由を、ポップカルチャー研究者(早稲田大学招聘研究員)の柿谷浩一氏は「ホームドラマ風の癒しを醸し出す、“人間臭さ”が出色のバディ。刑事ドラマに染みついたオールド感がない」と語る。



【写真】「子供が泣く…」星野源画伯による“そらジロー”のイラスト



■コンビの「ブレーキ役」も“はじける”人間臭いバディ



 放送開始から3週間、早くも人気沸騰中のバディドラマ『MIU404』。架空の設定の臨時部隊「警視庁刑事部・第4機動捜査隊」を舞台に、機動力と運動神経はピカイチだが刑事の常識に欠ける伊吹藍(綾野剛)と、観察眼と社交力に長けるものの自分も他人も信用しない理性的な志摩一未(星野源)がバディを組み、機動力を唯一の武器に誰よりも早く犯人を追う物語だ。



 視聴率は第1話が13.1%、第2話が11.5%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と好調な二桁スタート。オリコンのドラマ満足度調査「ドラマバリュー」でも、初回から84Pt(100Pt満点)と高評価を獲得した。「息の合った2人の演技に引き込まれた」(女性30代/埼玉)、「期待度MAXだったがそれを上回る満足度」(40代女性/千葉)、「いいコンビで新鮮」(40代男性/神奈川)など、男女からW主演の2人への期待の声が多く寄せられている。



 バディドラマといえば、クセの強い相方に、もう一方のキャラクターが翻弄されるという構図がよく見るスタイルだろう。その多くでは、振り回す側の個性ばかりが際立つことも少なくない。ところが本作においては「コンビのブレーキ役も負けないはじけぶりを見せていて、そこから出る人間臭さが出色」という柿谷浩一氏は、その特徴を次のように解説する。



■星野源が悶え葛藤…人間味あふれる姿が生み出す引力



 志摩は、伊吹の感情の赴くままの暴走にブレーキをかける一方で、自身もクール一辺倒というわけではなく、相棒の前では感情を伴って、タメ口の砕けた語調の“ぼやき”や“呆れ”といった「素」が時々漏れ出てしまう。そうした本来は心の中でツッコミを入れる言葉を、おおっぴろげに相手の真横で口や態度で表している。



「その本能むき出しのリアクションが、人間味にあふれて魅力的。もともとソフトでニュートラルな印象が色濃い星野源だけに、普段の穏やかな表情を豪快に変じて作る感情表現は、実に愛くるしく新感覚で惹きつける。しかも、それをことさら相手にぶつけるというよりは、1人で発するあたりが、『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)で発揮した、悶え葛藤する演技の巧さが活きて、いっそう効果を見せている」



 一方、バディについてもその魅力を「一見、感情的/理性的という対照的なコンビにみえるが、気づくとコミカルな応酬を繰り広げる2人の姿は、どこか兄弟ゲンカにも似た趣きさえ感じられる。単に性格が真反対の“凸凹のぶつかり合い”でもなければ、ダンディーな“カッコ良さ”や“渋さ”でもない。大事にされているのは、互いが無邪気に戯れ合う2人の作る独特の愉快な雰囲気。それがホームドラマ風の“癒し”を醸し出して、新しい刑事ドラマとして視聴者を楽しませている」と語る。



■「目の演技」が物語に深みを与える



 そんなバディだが、志摩が「現代的」な雰囲気や空気感をうまくまとっている点も、人物および物語への共感を深くしている。



 柿谷氏は「他人との適度な距離の取り方、等身大のファッションセンス、抑制を効かせた台詞のトーン、悪目立ちしない存在感など、刑事を特別な遠い職業(=存在)にし過ぎず、今の若者にもアレルギーのない好感度ある役に造形できているのは、星野源の持つ“中和力”の効果が大きい」と指摘する。



「サブカルからポピュラーカルチャーの真ん中へ、多彩な仕事ぶりで活躍の場を広げる星野源は、言わば“現代のアイコン”的存在。そのどこにでもいそうで、ありふれた感じを残す彼の特性が、刑事ドラマに染みついたオールド感や、ハードアクションに付きもののハードボイルド感をうまく和らげて、巡査部長というキャリアを積んだ中堅刑事の物語を、嫌味なくカジュアルでポップな形で届けていて絶妙。若者から大人まで、視聴者層を選ばない人気のベースがしっかりある」



 加えて、本作が多くの視聴者の心を捉えている要因には、ストーリーを支える人物それぞれの「表情」があり、なかでも「目の演技」が伝える物語に深みがあるドラマになっている点もポイントだという。



 それが顕著なのが、第1話および第2話の事件解決のラストシーン。伊吹が包みこむような「憂いのある瞳」で犯人の心の痛みに優しく寄りそっているのに対し、志摩は「鋭い眼光」で、そこには容易に赦しや共感をすることなく、現実から目を背けない厳粛さが滲む。捜査を進める劇中でも、志摩が微笑むのは最低限。どの場面でも眼は緊張感に満ちて笑ってない。



 こうした演出に対して、柿谷氏は「コミカルでスピード感あるエンタメ色の強い作品ながら、事件発生から解決のラストまで、緊密なストーリーを下支えするこの志摩の目力に、釘づけになっている視聴者も多いはず。コミカルな台詞が多く、事件解決に向かうカーアクションもスピード感のある映像のなか、それらのエンタメ色を損なうことなく、職務としての使命や正義感の奥にある『刑事としての想い・背景』を、身体=演技で届ける巧さも光っている」と絶賛する。



■意外性と色気を兼ね備える綾野剛の技量



 もうひとつ本作で際立っているのは、そのバディが、俳優の個性と役柄が化学反応を起こして新たな一面を引き出す巧みなキャラクター設定になっていること。とくに、ドラマや映画など多くの出演作を通してクールなイメージの強かった綾野は、本作では、思ったことを辺り構わず口に出す、自由奔放な野生児のような刑事に扮し、その意外性とともに醸し出す独特な色気もファン層を超えて多くの視聴者を惹きつけている。



 とくに、ドラマや映画など多くの出演作を通してクールなイメージの強かった綾野は、本作では、思ったことを辺り構わず口に出す、自由奔放な野生児のような刑事に扮し、その意外性とともに醸し出す独特な色気もファン層を超えて多くの視聴者を惹きつけている。



 そんな綾野の俳優としての技量と人間性が、プライベートでも仲の良い星野との絶妙なバディ感を生み出しているのだろう。バディものの王道である、引き立たられる側のクセの強いキャラクターを演じながら、星野演じる振り回される側のキャラクターがときおり見せる感情的な一面にインパクトを持たせる役割を担っており、その相方を活かす芝居が物語全体を躍動させている。



『アンナチュラル』(TBS系)に続いて、当代随一のヒットメーカーである脚本家・野木亜紀子氏、演出の塚原あゆ子氏、プロデューサーの新井順子氏のチームによって生み出された新たな刑事ものバディドラマ『MIU404』。そこには、これまでのスキルを活かしながら、さらに新たな要素を加えて更新した、視聴者の心を捉えるさまざまな仕掛けがちりばめられている。世に残る名作となるか、この先の展開への期待がかかる。

(文/武井保之)
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