『マガジン』新連載が躍動する転換期 人気作相次ぎ終了も「引き延ばしは共倒れ」

『マガジン』新連載が躍動する転換期 人気作相次ぎ終了も「引き延ばしは共倒れ」

 『はじめの一歩』『EDENS ZERO』『ダイヤのA』など、多くの人気作品を連載している漫画誌『週刊少年マガジン』(講談社)。しかし今年に入って、『七つの大罪』『五等分の花嫁』など、テレビアニメ化もされた人気作品が続々と終了しており「人気作が終わって大丈夫か?」と心配の声があがっている。読者離れが予想できるが、栗田宏俊編集長へインタビューをしてみると「心配ない!」「後悔ない」と強気だ。「“引き延ばし”は、作品の輝きを失ってしまうので、作品と雑誌にとってハッピーなことではありません。共倒れになるわけですから」「最近スタートした新連載の勢いがすごい!それを迎え撃つ連載陣もますます充実してきている感触があります」と、“転換期”を迎える『マガジン』の現状を語ってもらった。



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■引き延ばしの悪影響 雑誌の評判下げる「共倒れ」の懸念



 『マガジン』は今年に入って、『七つの大罪』『五等分の花嫁』『ドメスティックな彼女』など、人気作品が続々と最終回を迎えている。『週刊少年ジャンプ』(集英社)でも、『鬼滅の刃』『約束のネバーランド』などが完結しており、少年誌の人気作品が続々と終わる事態。アニメ化もされた人気作が終わることは、編集部として決してうれしいことではないはずだ。だからこそ「引き延ばしだと言われるかも知れないが、もう少し時期をずらして終わらせる選択肢などがなかったのか?」と聞いてみた。



「ずらせるならずらしてほしいと日本で一番僕が思っていました(笑)。雑誌の売り上げには間違いなく影響しますし、編集部としては厳しいことです。ただよく言われることですが作品は生き物ですし、それを必要以上に長引かせたりしたら作品自体が輝きを失ってしまします。ですので、終了を引き延ばすことは、どの作品についても考えていませんでした。今の読者はそういったことにも敏感に反応しますし、編集部としては次のより面白い作品を生み出すことに集中しようということです」と本音もこぼしながら“作品の面白さ”に重点を置いた結果、終了時期が重なったと説明した。



 2月に完結した人気作品『五等分の花嫁』は、テレビアニメ化決定時(2018年8月)は累計発行部数が70万部だったが、2019年1月から3月にかけてアニメが放送されると大きな話題となり、アニメ終了時は315万部(4.5倍)、漫画の最終回時は980万部(14倍)と大ヒットを記録。現在、コミックス全14巻で1250万部を突破(5月末時点)しており、連載終了後も「爆発的に売れており、異例」のことだという。連載が終了しても『面白い作品は売れ続ける』という結果だが、編集部としては「もう少し本誌で続けてほしかった…」など複雑な気持ちがありそうだが、どうなのだろうか。



「『五等分の花嫁』はミステリ的な設定の作品で、最初に『五つ子の誰かと結婚する』という結末が提示され、それが『誰なのか?』読者が予想するという図式が爆発的人気を獲得した最大の理由だと思っています。春場ねぎ先生も緻密に構成を練っていましたし、それを引き延ばすのは、それこそ作品を台無しにしてしまうかもしれません。それは作品を掲載している雑誌にとってもハッピーなことではありません。共倒れになるわけですから。むしろ『五等分の花嫁』も『七つの大罪』も『ドメスティックな彼女』も最終回を表紙にして話題をさらおうと開き直りました。結果、売り上げも良かったですし後悔はありません」と明かした。



■“ラブコメ”ファン獲得で読者層に変化 人気の新連載陣「充実してきている感触」



 2月19日に最終回を迎えた『五等分の花嫁』だが、その少し前に同じラブコメ漫画となる『カッコウの許嫁』が1月29日に連載がスタートした。「ラブコメ漫画が終わるなら、その枠は同じジャンルの作品を連載する」という方針があるのか気になるが、この『カッコウの許嫁』がすでに異例のヒットだという。連載するとすぐに読者アンケート上位の人気で、5月15日に発売されたコミックス1巻は、各書店で売り切れが続出し、講談社史上初となる4週連続で重版を達成。この反響をどう受け止めているのか。「作家さんや担当者には『五等分の花嫁』が終わったからラブコメが雑誌に載りやすいだろうというような考えはあるかもしれませんが、僕自身は『枠』に関しては特に意識していません。吉河美希先生が次の連載を考えた上でベストの内容が『カッコウの許嫁』というラブコメであったにすぎないと思っています。ただ『五等分の花嫁』と『カッコウの許嫁』は併売率が非常に高いので、読者に上手くはまったのは確かだと思います。実際、読者が贔屓(ひいき)の女性キャラを見つけ、そのキャラを熱心に応援してくれている様子は『五等分の花嫁』がヒットした過程と非常に似ている気はします」。



 異例のヒットとなった『カッコウの許嫁』だが、4月28日にスタートした少年による異能力バトル&サバイバル漫画『トーキョーバベル』も読者アンケートの反応が上々だという。ラブコメ作品の人気が強い『マガジン』において、このようなジャンルの作品が支持を集めるのは珍しいそうで、作品の魅力はなんだろうか。



「ここ数年、『マガジン』でラブコメがかなりの人気を得ていることは確かですが、もともとは不良ものやスポーツ漫画が多い雑誌でした。そういった中に映画化もされた『神さまの言うとおり』のような異質の作品もあり、『トーキョーバベル』はその系列の作品だと思っています。ですから読者も抵抗なく受け入れてくれているのではないでしょうか。『マガジンでまた変な漫画始まったぞ』と(笑)。『トーキョーバベル』は原作の花林ソラ先生のお書きになるストーリーの良さはもちろん、作画の久世蘭先生の絵がすばらしい存在感を発揮してくれていると思っています。読者にもかなり魅力的に映っているはずですし、実際僕もかなり好きですね、特に女性キャラが。そういったところも今のマガジン的かなと思います」と分析。昔に比べて読者層に変化が起きているとし、女性キャラがもたらす読者支持の影響は大きいと話した。



 人気作品の終了が続いている『マガジン』だが、『カッコウの許嫁』含めて新連載の評判がよく「読者離れは、まったく心配していない」と話す栗田編集長。最後に今後の『マガジン』の目標や読者に伝えたい思いを聞いてみた。



「人気作品が今年に入って次々と終了しているのは確かですが、『カッコウの許嫁』『トーキョーバベル』、それにヒロユキ先生の新作である『カノジョも彼女』も大変な好評をいただいています。7月以降も年内いっぱいで雑誌に収録しきれるか不安なほどの新連載が始まりますし、それを迎え撃つ連載陣もますます充実してきている感触があります。これからもマガジンは面白さにこだわり続け、読者を飽きさせない雑誌であり続けたいと思っています」と意気込む。人気作品の連載終了は編集部としてつらい部分はあるが、“作品の輝き”を第一に考えると“引き際”は大切なことであるとし、ヒット作を生み出し続けるために「新連載に力をいれていく」としており、今後の展開に注目したい。
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