“戦いの後”“宇宙要塞制圧仕様”…正解も不正解もない、自由なガンプラの世界を楽しむモデラーたちの思い

“戦いの後”“宇宙要塞制圧仕様”…正解も不正解もない、自由なガンプラの世界を楽しむモデラーたちの思い

 ガンプラをメインに制作するモデラーの中には、ガンダムの世界観をそのままに、作中で描かれていない部分を想像して制作する人も多い。モデラーのMAEさん(@MAE_model)、Maさんは(@waterfield0310)、それぞれの観点で、本編では描かれていない部分をガンプラで表現した。そこに込められた思いとは?



【写真】「一体どんな戦いをしてきたのだろう…」“ベテラン”感のあるMAE氏作『ズゴック』



■“戦いの後”に訪れた平和な日常を制作(MAE)



――MAEさんは、サビや朽ちなどの劣化表現、退色表現を施した作品を多く残しているモデラーさん。“戦いの後”を表現された代表作も、サビ朽ち、頭部が凹んだザクがインパクト大ですが、これはどのようなイメージの元、制作されたのですか?



「主人公である老人の子どもや孫たちも戦争に巻き込まれてしまいました。その戦争も終わって数年後、悲しみは消えることはないが徐々に思い出に変わっていきます。動物たちと戯れる平和で平凡な日々を送ることができていますが、この平穏は戦争で亡くなった人たちが残してくれた尊い遺産。生き残った人々は、その犠牲者に思いを馳せながら毎日を大切に送らなければいけません…。

 『人の命を奪う戦争は憎むべきものだが、その犠牲の上に今の平和が成り立っている。その平和な世の中を生きる者たちは、犠牲者への感謝を忘れてはならない』という想いが、この作品を含め自分が作るすべての作品の背景にあります。ちなみに、この作品は、『UCハードグラフ ジオン公国軍ランバ・ラル独立遊撃隊セット』をベースに制作しました。作品名は『平穏』です」(MAEさん/以下同)



――ザクの横に腰掛ける老人も非常に印象的です。“平和”を描くうえでこの老人の存在は大きかったのでしょうか?



「以前から、民間人が登場するジオラマを作っています。ジオラマというと、戦闘シーンであったり、戦闘前後の兵器と兵士が登場することが多いのですが、そのシーンの裏側で生活している民間人の笑顔こそ復興のシンボルと思っています。日本は、太平洋戦争や東日本大震災など大きな出来事を乗り越えてきました。戦争と震災をオーバーラップさせるのは不謹慎かもしれませんが、復興に携わった人たちの“負けるもんか”という思いは、共通しているのではないかと思います。どんな苦境でも必ず笑える時は来る、という思いを老人の笑顔に託してみたいと思いました。

 また、長い時間を生きてきた“老人”には、いろんな経験やエピソードがあります。老人を見ることによって、この作品に起きた“過去”を想像してもらえればと思っています」



――ジオラマを制作する際、表現に一番苦労したところは?



「大きく凹んだザクの頭部の表現に苦労しました。自分の解釈では、モビルスーツの装甲は鋳造で作った硬く重い装甲と、車のボディーのような薄い鋼板によって作られた部分があると思っています。頭部は車のボディーのような構造をしていて、強い衝撃を受けるとグニャリと曲がるのではないか?と思っています。その材質の硬さや厚さを表現する手法に苦労しました。

 ガンプラは、考証が全く必要ないとは言いませんが、自由な表現が可能ですし、自分なりのストーリーを作り出すことも可能です。正解も間違いもない、自由なガンプラの世界を楽しんでいます」



■「正解がない分、同じ機体でも『次はこうしたい』と作り続けていける」(Ma)



――Maさんは、「宇宙世紀」を題材にしながらアナザーストーリーが展開された『ガンダム・センチネル』をテーマにした作品が多いと伺いましたが、その理由は?



「高校時代に『モデルグラフィックス』での連載が始まり、今までにはなかったリアルさに衝撃を受けました。例えば実際の戦闘機にあるセンサー類がデザインされていたり、工業製品としての考えられた形だったり、単なるキャラクターとしてのデザインじゃないところでしょうか。連載と同時進行でキットが発売され、当時発売となった『1/144FAZZや1/144Ex-Sガンダム』を『モデルグラフィックス』掲載の作例を参考に改造し、作り始めたのがきっかけです。

 映像化されていない作品で、設定画稿も初期と後期でデザインの解像度が上がっていたり、『ガンダムセンチネルRPG』(1990年/大日本絵画社)や『ガンダム・センチネル―ALICEの懴悔』(1990年/大日本絵画社)などの単行本に掲載されている挿し絵が、違うラインに描かれていたりと、解釈の仕方や自分の中にあるSガンダムだったりZ plusが表現できるところが魅力ですね。正解がない分、同じ機体でも『次はこうしたい』と作り続けていけるし、『今ならこうする』という想像が膨らむところですね」(Maさん/以下同)



――代表作である『宇宙要塞制圧特務仕様Gクルーザー』(正式名称:MSA-0011[Ext] Ex-SGUNDAM G-CRUISER MODE)はどのような物語をイメージして制作されましたか?



「『宇宙要塞制圧特務仕様』という、『ガンダム・センチネル』の作品内でこんな設定があったらという『if』の世界観です。ガンダム世界に登場する宇宙要塞は、資源採掘用にアステロイドベルトから運ばれてきた小惑星なので攻略作戦ともなると、とても単機のMSでは不可能ですが『多弾頭熱核ミサイル4機装備』することによりEx-Sガンダム単機による制圧を可能にした、といったストーリーをイメージして製作しました。

 『電撃ホビー』に掲載されたソロモン・エクスプレスに登場するRX-78-2ガンダムをEx-Sガンダムに置き換えてイメージを膨らませていますので、両者の世界観をミックスした作品とも言えます」



――制作後の反響はいかがでしたか?



「あまり『ガンダム・センチネル』に対しオリジナル要素を入れて作る人が居ないこと、Ex-SガンダムをわざわざGクルーザーモードで作る人も居なかったため、作品を発表した際、反響は大きかったですね、またMS形態と同じ配色でも形態が違うことでブルーの部分が際立つためか、調色したブルーの色についての反響が多かったです。

 他人がマネの出来ない色味(彩度・明度・トーン)に強いこだわりがあります。同じ作品を同じような色で作っても絶対同じものにはならない、自分にしか出せない作風をこれからも作り続けたいと思っています」
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