“お手伝い感覚”の夫に「育児は私だけ…」母親の役割にモヤモヤ、漫画作者語る違和感

“お手伝い感覚”の夫に「育児は私だけ…」母親の役割にモヤモヤ、漫画作者語る違和感

 コミックエッセイ『夫の扶養から抜け出したい』などのヒット作を持つ人気漫画家・ゆむいさんの新作『親になったの私だけ!?』(KADOKAWA刊)が、仕事と子育てに奮闘する多くのママたちから共感を呼んでいる。原作は、2児の母親で社会福祉士の耳たぶ吸ってたも~れさん(以下、耳たぶさん)。保育士の夫は家事や子育てに一見“協力的”だが、どこかズレている…。働く母親が一般的になりながらも、今もなおまかり通る「父親と母親の役割」の社会通念。それを乗り越えるまでの夫婦の実話について、著者の2人に話を聞いた。



【漫画】夫に期待するだけムダ、イラつく夫の無神経な言動の数々に妻は…



■「僕はずいぶん“手伝って”いるよ」旦那の発言にモヤモヤする理由



──フルタイムで働く耳たぶさんの体験をもとに創作した物語を、ゆむいさんが漫画化した内容です。



【ゆむいさん】はい、耳たぶさんとは中学の同級生でTwitterを通して再会しました。専業主婦とフルワークで立場は違ったものの、子育てや夫婦の問題など自分の中でモヤモヤしながらも言葉にならなかったことをハッキリと言語化してくれたことから、ぜひ漫画にしたいとお声がけさせていただいたんです。



──耳たぶさんは初めての出産のとき、とくにどんなことが辛かったのですか?



【耳たぶさん】周りに助けを求める相手がいない中での子育てスタートだったので、毎日とにかく眠れない、休みがない、赤ちゃんの命を1人で背負っているストレス…。生活のすべてが辛かったですね。でも一番辛かったのは、夫が一見「協力的」なようで、こうした私の心理的、物理的負担を理解しようとしなかったことでした。



──作中、主人公の旦那さんが、家事も育児も「ずいぶん手伝ってるよ」と発言するシーンが出てきますね。



【ゆむいさん】モデルになった耳たぶさんのご主人も、お話を聞くと本当に優しい方なんですよね。それにきっと努力もされてたんだと思います。でもその努力の方向性がズレていたというか…。耳たぶさんの言語化によってとくに私の中でモヤモヤが晴れたのが、「男女の役割の社会通念」というところでした。



──つまり「夫は外で働き、妻は家庭を支える」という、現代ではほとんど成立し得ない夫婦のあり方。



【ゆむいさん】それが今なお、社会の中に空気にように漂っていて、母親自身も知らず知らずうちに、そこに縛られて苦しんでるところがあるのではないかと。



──ネットで話題になった「母親ならポテトサラダくらい作ったらどうだ」発言にも象徴されています。



【耳たぶさん】この発言をしたのは高齢の男性のようですが、こうした“前時代の生物”もそろそろ絶滅するんじゃないでしょうか。漫画に描かれているのは8年ほど前の体験ですが、当時と比較しても、母親という属性に求められる規範は減ってきているように感じていますし、このまま社会が良い方向に変化していくといいなと思っています。



■「いつでも離婚できる」フルワークだから感じる夫婦の役割



──現在は夫婦協力して家事も育児も行っているとのことですが、旦那さまが変わった理由は?



【耳たぶさん】ストレスから暴飲暴食をする私を見て、「この人、早死にするな」と思ったそうです(笑)。そうしたら、「もし母親がいなかったら?」と1人で子育てと家事をする生活が一気に想像できて、主体性が生まれたと話していました。



──「夫婦両者が主体的に子育てに関わる」というのは本作に通底するテーマですね。



【ゆむいさん】我が家も学校からの通知や予防接種のお知らせは、基本的にまず私が目を通すんですよね。最近は少し改善されて夫とも共有するようになってきましたが、そういうご家庭は多いんじゃないでしょうか。



──フルワークで働く母親も多いのに、育児の主体はどうしても母親に偏ってしまうと。



【耳たぶさん】ちなみに我が家では話し合いの結果、保育園の「第一連絡先」を夫に設定しました。



【ゆむいさん】Twitterにも書かれていましたよね。保育園からの急な連絡に対応する役割を母親だけが背負うのではなく、父親も職場や仕事と折り合いを付けるという経験することによって、主体的に子育てに関わるようになってもらうためのアイデアだったと。



──良好な結果に繋げるための、夫婦間の話し合いとはどんなものなのでしょうか?



【耳たぶさん】個人的にはたとえ夫婦でも、人を変化させることはできないと思っています。できるのは自分の希望を訴えていくことだけ。その訴えを聞いてどう反応するかは、夫側の選択なので強要はできないんですよね。ただ、その夫の反応を受けてこちら側がどう反応するかも、夫には強要できないことだと思っています。



──最悪、離婚を考えたことは?



【耳たぶさん】切り出したこともありました。フルワークだったので、「いつでも離婚できる」は私の精神安定にはとても役立っていました。ただ、それ自体は夫の変化のきっかけではなかったように思います。私の場合は冷静に訴えるというよりは、ずっと怒り続けてました。だから夫も居心地が悪くて、変化せざるを得なかったんでしょうね(笑)。



■旦那を“ディスってスッキリ”では解決しない



──ただ、ぶつけているのは「理不尽な怒り」ではなく、社会問題にも通じています。



【ゆむいさん】私もそこが漫画に描きたいと思った理由だったんです。重要なのは、耳たぶさんは決して夫をディスってるわけではないことなんですよね。最近、男性をディスってスッキリ、みたいなネットコンテンツが増えているじゃないですか。あれはちょっと危険だと思っていまして。



──たしかに男女の分断を生んでしまうだけでは、なんの解決にもならないですよね。



【ゆむいさん】『夫の扶養~』もいろんなところで「モラハラ夫、最低」などと取り上げていただいたんですが、漫画の中で私は一度も「モラハラ」というワードは使っていません。大事なのはディスってスカッと終わるのではなく、きちんと話し合って齟齬を埋めていくことだと思うんですよね。耳たぶさんのように。



【耳たぶさん】私は怒っていただけですが…(笑)、自分の意見を相手に伝え、相手の反応を受けて自分がどう選択するか。そういったコミュニケーションの繰り返しでしか、状況の変化はなし得ないと思っています。



──ゆむいさんは今後、どのような漫画を描きたいですか?



【ゆむいさん】さっきも言ったように、読んでただスカッとさせるための「作り話」はあまり好みではありません。本作のように、個人の経験を広くシェアすることで、社会をより良いステージに持っていけるような漫画を描いていけたらいいなと思っています。
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