「砂埃すごっ」“静止描写”の限界に迫るカーモデラーによる“動描写”へのこだわり

「砂埃すごっ」“静止描写”の限界に迫るカーモデラーによる“動描写”へのこだわり

 精巧な造りに心踊るプラモデルとジオラマの世界。カーモデラーのkunnyさん(@exclusive2301k1)はこれらを掛け合わせ、今にも動き出しそうな見事な“動描写ジオラマ”を発表している。なぜ、このような作品を制作するようになったのか、話を聞いた。



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■小学校の用務員のおじさんが作る「箱庭」に感銘



――プラモデル・ジオラマの魅力に目覚めた原体験を教えていただけますか?



「プラモデルに目覚めたのは小学生の時です。親が模型店を営んでいる同級生がいて影響を受けました。ジオラマも小学生の頃です。校舎の中庭にある観察池の周りに素敵な箱庭がいくつも並んでいて、それはすべて学校の用務員のおじさんが制作した物でした。私は昼休み、友達とドッジボールをするでもなく毎日その箱庭を眺めていたのですが、ある日用務員のおじさんが『そんなに好きなら作り方を教えてあげる』と言ってきてくれたんです」(kunny氏/以下同)



――熱量が伝わったんですね(笑)。



「そうですね。つまようじ・割りばし・粘土など身近にある材料を使って作り方を教えてもらいましたが、そのリアルさ凄かったんです。その箱庭にあるA3サイズの田んぼでは田植えが出来て、秋にはちゃんとお米が実って、稲刈りして精米して…そういう一連の流れが体験できました。それをその田んぼに撒くとスズメが食べに来る。大きなスイカほどの池には金魚が泳ぎ、トンボが卵を産み付けていました。私のジオラマに土・砂・水・雪などの自然の表現が多いのは、その時に教わった箱庭作りの影響なんです」



――作品を拝見させてもらうと、臨場感のある見事な“動描写ジオラマ”を制作されてます。



「もちろん普通の乗用車を作るときは静止描写なのですが、競技車両、特にラリーカーは、レースカーのように人工のサーキットではなく、大自然のフィールドで戦う獰猛な野生動物のようなイメージが私の中にあるんです。“野性味あふれる表現で作りたい”というのが動描写の制作を始めた大きな理由です」



――こういった作品を作ろうと思った運命的なキットはございますか?



「『タミヤ・1/24 モーリスミニクーパーラリー』ですね。1967年のラリー・モンテカルロでポルシェをぶっちぎって優勝した車なんですけど、その武勇伝を知った時に、小さい車だけど、雪上を果敢に走る偉大な姿を再現してみたくなりました」



■信念としていることはそれぞれの車の持ち味を出すこと



――その後、車を使った数々の“動描写ジオラマ”を制作されていますが、なかでも「日産240RS 1983ニュージーランドラリー」はすごい迫力です。今作は、どのようなストーリーをイメージし制作されましたか?



「これはラリーカーの歴史の中で最も過激で危険なカテゴリーだった80年代半ばの“グループB”の車両です。『BEEMAXアオシマ 1/24 日産240RS 1983ニュージーランドラリー』というキットを使用しているのですが、これが日本のメーカーではなくマカオの新規メーカー『BEEMAX』から発売されたと聞き、驚いたのと同時にうれしかったのがきっかけですね。パーツの造形も良く、有り余るパワーでモンスターのように駆け抜ける姿を作りたいと思いました」



――この作品において一番のこだわりは?



「『1983ニュージーランドラリー』はナイトステージがカッコいいのでヘッドライトやフォグランプをLEDで電飾していることですね。夜の雰囲気を感じていただけたらうれしいです。あとジオラマ素材にはなるべくお金をかけないということ。ジオラマのベースとなる雪、植物、土などの材料はほとんど100円ショップの商品を使っています」



――100円ショップのものでこれだけの表現ができるのですね。臨場感を演出する「砂塵」が見事ですが、表現に苦労したのでは?



「撒きあがる砂塵の表現は、一番苦労しました(笑)。ナイロン、レーヨン、ポリエステルとそれぞれ柔らかさの違う3種類の綿を着色して表現しています。

 また、ほぼ全てのキットにドライバーとなる人は付いていません。走っている情景作品には、ドライバーは必須ですのでこれが苦労します。最近はメーカーのカスタマーサービスさんにお願いして同サイズのドライバーのフィギュアを10人分とかまとめ買いしてストックしています。ドライバーの着ているシーツはYouTubeなどで調べてできるだけ忠実に再現しています」



――制作後の反響はいかがでしたか?



「模型だと知ってみんなびっくりしていました。実車だと思ったそうです。『ここまで再現されているのは見たことない』と喜んでくれました」



――本作も含め、静止描写であるカーモデルを使って、動描写を作る際、どんなこだわりをもって制作されていますか?



「静の姿勢は基本『水平』ですが、動は『傾斜』だと思います、なので車に走っているような姿勢を与えることですね。めいっぱいハンドルを切ってタイヤを沈み込ませ本物の車のような姿勢を与える改造が大変です。

 こだわりは、タイヤとボディの汚しに使う塗料と塗装の技法です、長時間走ったことによる排気ガスやタイヤカスの汚れを表現するために、あえてきれいに噴霧しないダマが出てしまう壊れたエアブラシを使い、大きい汚れの粒を表現したりしています」



――カーモデルというと、旧車も含め、ピカピカの新車のような状態のものが多いですよね?



「そうなんです。カタログから飛び出したようなツヤピカの作例が多く、今でもそれが王道ですが、私の作品は中古車の“ヤレ感”を表現することが多いです。ボディはきれいでもタイヤはすり減って日焼けしているとか、マフラーはすすで黒くなっているとか、見えませんが裏返すとシャシーは必ず汚れています、タイヤは紙やすりで削ってすり減らし、エイジングして日焼けして白っぽくなったタイヤを表現しています。

 車やバイクは人が使う道具です。買ったばかりの新車、10年使われた中古車、レストアされた旧車、ラリーカー…それぞれの持ち味をしっかり引き出すことを信念に制作しています」



文/中山洋平
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