森光子さん、生誕100年記念の特番、知られざる最後の日々が明らかに

森光子さん、生誕100年記念の特番、知られざる最後の日々が明らかに

 NHK・BSプレミアムで28日、『森光子生誕100年〜放浪記 永遠のメッセージ〜』(後10:00~11:00)が放送される。8年前に92歳で亡くなった女優の森光子さんは、今年5月“生誕100年”を迎えた。森さんといえば、舞台『放浪記』。「始まったのは東京オリンピックの3年前なんです」と言い、50年に渡って続け、公演回数2017回という単独俳優の最多公演記録を打ち立てた。彼女の舞台にかける情熱は、さまざまな後進の舞台人に受け継がれている。



【写真】生前の森光子さん



 「平和でないと、スポーツも芝居も出来ない。平和こそ一番大切」と常々語っていた森さん。世界はコロナ禍で苦境を強いられている中、五輪大会も延期に。日本中で緊急事態として自粛が続く中、文化の灯、特に演劇は壊滅的な打撃を受けている。



 代表作『放浪記』は、日本が貧困にあえいでいた時代に作家を目指した林芙美子の自伝的作品。地方から上京し、貧しさを乗り越えて頑張る姿は人々の共感を呼び、観客を励ました。番組では、生前の森さんと親交が深かった俳優たちが森さんとの思い出を語るほか、映像を介して森さんと“競演”し、『放浪記』の舞台を再現する。



■【見どころ1】証言ドキュメント



 森さんと関わりの深かった人物の証言で、『放浪記』2000回へのこだわりと、知られざる森光子の最後の日々を明らかにする。



 黒柳徹子は、森さんとNHKドラマ『若い季節』(1961~64年)の共演以来、親交があり、『放浪記』でも芙美子のライバル役の日夏京子を演じた(2003年、08年)。森さんとの友情や、晩年に垣間見た森の孤独の一端について語る。



 東山紀之は、少年隊として1986年の『NHK 紅白歌合戦』初出場の折に、森と対面を果たして以来、大河ドラマ『琉球の風』や帝国劇場での舞台などで共演し、大女優としての歩みを終生見守ってきた。森さんの教えや森さんが2010年年に『放浪記』を降りた後の交流について語る。



 舞台『SHOCK』でミュージカルの単独主演記録を更新しつつも、今年の新型コロナ禍で公演の中止を余儀なくされた堂本光一(KinKi Kids)は、『SHOCK』に毎年駆け付け、堂本を励まし続けた森さんや恩師のジャニー喜多川氏が今の世に生きていればどんな示唆を与えてくれたか帝国劇場の客席で思いを馳せる。



 ミュージカルの貴公子と呼ばれ、2006年に帝国劇場でのミュージカルで初主演を務め、森さんから励ましの言葉をもらったという井上芳雄は、『放浪記』の場面の一つである「カフェー・壽楽」に迷い込み、『放浪記』に出演していた俳優(『放浪記』初演から出演してきた東宝現代劇の丸山博一、森さんとプライベートでも親交があり、2009年の『放浪記』最終公演にも出演した田根楽子に森の秘蔵エピソードを聞く。



■【見どころ2】森さんとの時を超えた競演



 劇場中継の映像を利用し、森さんと『放浪記』での共演が叶わなかった、岡本健一と上白石萌音が、森さんとのバーチャル共演に臨む。『放浪記』は、5幕から成り、各場が独立した芝居として成立するような見事な戯曲。今回は、ある場面だけをピックアップして“上演”される。



 『放浪記』を何度も観劇し、舞台『深川しぐれ』(1997年)、『本郷菊富士ホテル』(98年)で森と共演も果たし、私生活でも親交のあった岡本は、念願であった、芙美子の初恋の男・香取恭助役を演じる。第三幕「尾道」は帝劇の大舞台にブルーバックを設置し収録。『放浪記』の映像は、岡本の年齢(51歳)に近い1981年の『放浪記』(森さんは当時61歳、三木のり平が潤色・演出を手掛けた初めての公演)を用意した。岡本が演じる香取恭助役は尾道に暮らす男で、方言を口にする。岡本は尾道の言葉を現地の人に改めて吹き込んでもら い 、方言をマスターし て「共演」に臨んだ。



 一方、上白石は、長台詞が見せ場の第二幕二場の「女給部屋」と、でんぐり返しで有名な第四幕二場の「渋谷の木賃宿」を再現。芙美子と芙美子の妹分の悠起(ゆき)の二人芝居の場面で、過去に八千草薫さん、松原智恵子、岸本加世子、藤谷美紀らが悠起役を演じた。映像は、2005年の芸術座公演を使用。NHKのスタジオにブルーバックを設置する中、岡本と同様にセリフや動きを完全に叩き込んでいた。



■岡本健一のコメント

 (今回のオファーを受けた時の心境は)7月の半ばに、ありがたいことに菊田一夫演劇賞をいただいたのですが、その後すぐに今回のお話をいただきました。菊田一夫演劇賞をいただいた時、最初に頭に浮かんだのは森光子さんの事でした。森さんとは30年以上前からずっと過ごさせていただいたのですが、よく菊田先生の言葉や「菊田先生がいるから今の自分がいる」というお話を伺っていました。受賞を森さんに報告したいと思った矢先 に今回のお話だったので、非常に心が震えたというか、ありがたいと思っています。



 (視聴者へのメッセージや森さんへの思い)森さんはテレビなどあらゆるジャンルでご活躍なさっていましたけれど、自分としては舞台の森さんの姿を本当に尊敬していましたので、それを 今回このような 形でもう1回見られる、森さんを特集していただける というのは、今を生きる私たちにとっても力になると思うし、素晴らしい企画だなと思います。自分より下の世代には、森光子さんの舞台をリアルタイムで体験した人がどんどん少なくなってくる。そういう人たちに、 自分が尊敬し影響を受けた 森さんのお芝居や、ずっとライフワークにしていた『 放浪記』、80歳を過ぎてもずっと新作に取り組んでいたことなどを、伝えていかなければいけないと思っています。



■上白石萌音のコメント

 収録の数日前に台本をいただいてから、ずっと脳内が『放浪記』一色でした。(過去の映像と合成するため)どういうふうに撮影するかイメージできずにいたのですが、想像以上に臨場感があって驚きました。池田さん(=池田昌子さん。森さんの付き人を長らくつとめ、『放浪記』に出演していた女優。上白石の収録で森さんのアンダースタディを務めた)が入ってくださったのももちろんですし、森さんの生の声が、録音ではあれどこの場に響き、時を超えてお会いできたような気持ちになりました。実際の小道具や衣裳を使って芝居をさせていただけたこともあり、 夢のようでした。たくさん勉強させていただいて光栄に思います。森さんはレジェンドといいますか、目指すべき女優像と思っていましたので、間接的にでもお芝居のやりとりが出来たのは、本当にこんなことってあるんだな、という気持ちです。



■『森光子生誕100年』第二夜



 第二夜として、『放浪記 奇跡の2000回』(※初回放送2011年8月27日)を、翌29日深夜(=30日 前0:15~)に放送。森さんが89歳の誕生日に迎えた、『放浪記』2000回公演時(09年5月9日)の舞台の完全版(3時間)。
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