英会話CMが話題のアイクぬわら、日本の笑いに憧れたアメリカ人が見たBLM問題

英会話CMが話題のアイクぬわら、日本の笑いに憧れたアメリカ人が見たBLM問題

 おぎやはぎ・矢作兼とともに出演する『DMM英会話』のCMで話題になっているアイクぬわら。6人組お笑いグループ・超新塾のメンバーで、ピンでも『おはスタ』(テレビ東京系)やバラエティ番組、ドラマ出演などジャンルを問わず活躍している。“外国人”であることを生かした話芸やギャグが得意なタレントは多いが、アイクは日本の笑いの文脈をわかった上で、外国人としての自分を素材にした芸が多く、そのギャップが強いインパクトを残す。そんな彼の笑いの源泉は? 彼のお笑い哲学からBLM問題まで、その考えを聞いた。



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■コロナ禍が契機に?「タメィゴゥ」CM再放送に反響



 『DMM英会話』のCMはパソコンの前のおぎやはぎ・矢作と画面上のアイクのやり取りを、面白おかしく見せるショートコント風の内容。代表的なものに、矢作が英語の発音をアイクに確認すると、矢作「ポテト」アイク「ポティトゥ」、矢作「トマト」アイク「トメイトゥ」、矢作「卵」アイク「タメィゴゥ」、矢作「いや、eggだろ」とツッコミが入る…といった流れのものがある。



――『DMM英会話』のCMが話題に。反響は?



【アイクぬわら】いや、すごいですね。どこにいても、毎日のように「“タメィゴゥ”と言ってください」と声をかけられるんです。このCMシリーズのネタは矢作さんがプロデュースしていて、考えてくれたものなんですが、最後に怒られてシュンとする部分だけは、僕が提案しました!



――そうだったんですね。



【アイクぬわら】実はこのCM、以前に放送されたものなんです。コロナ禍を機に再放送されることになって、なぜか盛り上がっているんですよね。



――コロナ禍がヒットの要因の一つに?



【アイクぬわら】今はニューバージョンが流れていますけど、コロナ禍でブレイクしたとも言えます。そう考えると、矢作さんってすごいですよね! 3年前から今の笑いを予見していたってことですから。



――このCMはもちろん、『おはスタ』(テレビ東京)や多くのバラエティで活躍しているアイクさん。そもそも、なぜ日本でお笑いをやろうと?



【アイクぬわら】シアトルで大学に通っていた頃、レンタルビデオで『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』(日本テレビ系)の高田純次さんの早朝バズーカを観て、衝撃を受けたんです。その後、ダウンタウンさんやとんねるずさん、おぎやはぎさん、アンタッチャブルさん、くりぃむしちゅーさんたちが出演する番組を観まくった。日本のお笑いへの憧れがものすごく強くなって、夢を叶えるために日本に来たんです。



――とはいえ、ワシントンの工科大学で2年飛び級するほど優秀だったわけですよね。来日後も、外資の大手証券会社のゴールドマン・サックスでデータセンターエンジニアとして働くなどエリート街道を歩んでいますし、その経歴を捨てることに葛藤はなかったんですか?



【アイクぬわら】逆に、その経歴は僕にとっては邪魔! エリートなんて思われたくないし、僕は単なる「面白い人」と思われたいんです。ゴールドマンでもやっていたのはITエンジニアだったし、そもそもそこに入ったのも、ビザを取るためみたいな面もありましたから(笑)。とにかく、日本に来たかった。そして僕のドリームである“日本のお笑い芸人”になりたかったんです。



■日本の笑いの文脈を理解するため、文化や歴史を学ぶ「僕は“まだ”外国人なので…」



――お笑いグループ・超新塾へはオーディションにより加入したそうですが、来日してからお笑いの学校などに行ったんですか?



【アイクぬわら】いや、お笑いの学校があることも知らなかった。学校どころか、事務所という存在すら知らなかったです(笑)。オーディションに受かったあと、記者さんから「ワタナベエンターテインメントという大きな事務所に所属することになりますが」と質問を受けて、「ワタナベって何!?」って(笑)。ただただ、日本のお笑いが好きで日本に来ただけですからね。



――一体、どうやってお笑いを学んだんでしょう?



【アイクぬわら】ホント、超新塾のメンバーのおかげです。僕は日本のお笑いも日本語も、全部そこで教えてもらったようなもの。学校に行ったわけじゃないし、正式なものでもない。いわば、“ストリートで覚えた”ってことですね!(笑)。



――そのせいなのでしょうか。アメリカ人の芸人の方だとどうしてもアメリカナイズされた笑いとか、スタンダップコメディのようなものになりますが、アイクさんの場合はすごく、日本の笑いの文脈や空気がわかっているような気がします。



【アイクぬわら】僕が思うに、スタンダップコメディは落語と『アメトーーク!』(テレビ朝日系)の中間かな、と思っています。でもやっぱり、空気や“間”で笑わせる日本の笑いは難しいです。



――以前バラエティで、自分のアソコを「松崎しげる」と例えた時なんて、面白かったのはもちろん、それを答えられる“わかってる”感じがすごかった。



【アイクぬわら】他の出演者も外国人ばかりだったから、負けないぞと思って、とっさに出てきた言葉ですね(笑)。といっても、僕は全然、まだ外国人なので勉強中です。



――まだ、外国人(笑)。



【アイクぬわら】あ、変な言い方ですね!(笑)。でも、笑いの空気や間は、日本語はもちろん、歴史や文化も理解しないと生み出せないものかなと。僕はまだ日本の文化や歴史について詳しくないけど、それを知ることでお笑いは成立するし、理解もできると思っています。



――そんなアイクさんから見て、日本の芸能界はどう?



【アイクぬわら】矢作さんからは、「芸能界で残り続けるためには、人気じゃなくて人柄が大切」と教わりました。アメリカの文化と違うと感じるのは、上下関係の厳しさ。それは、ロッチ中岡(創一)さんや超新塾のメンバーから教わったんですけど、そこはアメリカとは考え方が違うところだと思いました。違和感はあったんですが、郷に入っては郷に従え。当然ですよね。



――海外と日本の違い、そして文化の理解とお笑いというと、以前ダウンタウン浜田雅功さんの黒塗りメイク問題(バラエティ番組で浜田がエディー・マーフィーに扮した際、肌を黒く塗った演出に国内外から批判が広がった)がありましたが、それはどうとらえていますか?



【アイクぬわら】これはあくまで僕の意見ですが、あれはまずエディー・マーフィーへの尊敬があり、番組で浜田さんが“七変化”してきた歴史もあって笑いが取れた。決して、黒人をバカにしていたわけじゃないと思います。でも、海外の人はそういう背景を知りません。海外では白人が顔を黒く塗って黒人をバカにしていた歴史があり、ゆえに差別と思われたんです。互いが互いの文化・歴史を知らないからの悲劇。どちらも知っている僕としては、とても残念な事件でした。



――日本ではBLM(ブラック・ライヴズ・マター)が理解しにくい状況と似ていますね。アイクさんは自ら“黒人”であることをネタにしたりもしていますが、そのへんはどう考えていますか?



【アイクぬわら】これも、一個人の意見として聞いてください。僕は、笑ってもらっていいんです。むしろ個人的に怖いのは、「ナイーブな問題だから黒人を使うのはやめよう」と世間の腰が引けてしまうこと。そうなったら黒人には…もちろん僕にも仕事が来なくなる。僕は芸人だから、どんどんイジってもらっていい。難しい問題ですよね。でもBLMが話題になったのは、今後多くの外国人を迎え入れるであろう日本にとって、「世界ではこういう考え方もある」と知る、いい機会になったのではないかと考えています。



――なるほど。確かにそうかもしれないですね。文化や考えが違う日本のお笑い界で頑張っているアイクさんですが、今度は舞台のお仕事にも挑戦するとか。



【アイクぬわら】9月からスタートする、音楽朗読劇『黑世界』に出演します。僕にとって初の舞台なんですが、このシリーズはすごく歴史ある、人気の舞台なんです。ファンの方も多くて、僕が出演することが発表されたときには、「アイクがこのシリーズで一体どんなことをするんだ?」とSNSがざわついていました(笑)。僕だからこそできる面白い部分で作品を盛り上げられれば!と思ってます。



――今後は、そうやって幅を広げていこうと?



【アイクぬわら】僕の目標は“お笑い”だけじゃないんです。ドラマでも映画でも、とにかく最強のエンタテイナーになりたい! あと、自分は外国人だというくらいしか“キャラ”がないのが悩みなので、なにか強烈な印象を残せるようなキャラを作りたい!(笑)。頑張りますので、これからも応援よろしくお願いします!



(文:衣輪晋一)
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