ビックリマンにもデジタル化の波…LINEが作るトレーディングカードの新しい形

ビックリマンにもデジタル化の波…LINEが作るトレーディングカードの新しい形

 日本のデジタルコンテンツ産業の市場規模は12兆円を超え、年々増加傾向にあるなか、LINEは写真・イラスト・音声・映像をカードとしてコレクションできるデジタルトレーディングカードプラットフォーム「VVID」をローンチ。ビックリマンシールなどの販売を開始し、トレーディングカード市場に参入した。オークションサイトなどでは希少アイテムが高騰するなどコアなコレクターが多い同シーンで、新たな付加価値を提供するデジタルトレカは浸透していくのだろうか。



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◆コレクター心をくすぐる物理的なモノを上回る、デジタルならではの付加価値の提供が必須



 LINEが同事業に参入した背景には、さまざまなエンタテインメントに関わるサービスを提供しているなか、それらと連携させるトレーディングカードのデジタル化により、エンタテインメント業界の新たな収益源を生み出したいという思いがある。LINEのVVIDチーム プロジェクトマネージャーの佐々木章子氏は「昔からニーズが高く、流通量や売上的にも大きな実績のあるトレーディングカードには、以前から目をつけていました。コロナの影響で、ライブやイベントを開催できないなどエンタテインメント全般が大きな打撃を受けているなか、新しいマネタイズのツールを生み出すサービスを提供したいと考えスタートしました」と語る。



 デジタルトレカは、そのジャンルや種類によって、キャラクターの画像が動く、アイドルのオリジナル自撮り写真や動画メッセージが付く、ジャイロ機能を使ったシール演出、漫画の名セリフからそのシーンが現れるといった、デジタルならではのメリットをふんだんに盛り込むことにより、従来のコアなコレクターとともに、新たなライトユーザー層の取り込みをねらう。



 しかし一方で、トレカとは手に取るモノ(残しておけるモノ)だからこそコレクターの心をくすぐるアイテムであって、デジタル化されたカードがコレクターたちの欲求を満たせるのかという疑問も残る。それに対して佐々木氏は「紙とデジタルの差別化を図っていかなければならない」とする。



「カードにおける動く演出が、紙とは異なるVVIDらしい楽しさになっています。紙で何度見ても楽しいカードが、デジタルでは動きを加えることで、よりユーザーの想像を膨らませ、プラスアルファのおもしろさを提供します。そこでは、キャラクターの性格やスキルを感じさせる要素を企画していますが、それがデジタルならではの仕掛けであり、優位性になります」(佐々木氏)



◆シーンの行方を占う試金石となりうる「ビックリマンシール」のデジタル化



 このほど発売がスタートしたビックリマンシールは、コレクターズアイテムとして往年のコアファンがついている人気トレカのひとつだ。VVIDでは、現在は売られていない1985年当時のシールを昔の順番でリリースし、シリアルナンバー入りや何が当たるかわからない『ビックリマンチョコ』と同様の仕掛けを行っている。その懐かしさや当時のワクワク感を再び呼び起こすことで、コレクターたちをデジタルへ振り向かせることができるのか、まずは注目される。



 ビックリマンシールの発売元であるロッテの本原正明氏は、「時代の流れも変わり、デジタルで集めることができることで、より幅広い世代に楽しんでいただけるのではないでしょうか。新しい収集の仕方として価値はあると考えます」としながら、デジタル化されたシールがコレクター心をくすぐるアイテムとして十分な満足度を得られるかという点に関しては「デジタルならではの楽しみ方で満足させられる」とコメントする。



 また、オークションサイトで高額転売されるなど、その希少性から高値がついているトレカもある。ビックリマンシールもそのひとつだが、デジタルで復刻されることでその希少価値が下がることも考えられるが、それについて本原氏は「収集の仕方がちがうのでデジタル展開をしても価値が下がるとは考えていない」との見解を示す。



◆高額転売、二次流通における権利者への利益還元…従来の機能性や市場性は損なわない施策を



 VVIDではトレーディングシステムもスタートしたが、そこではファン同士のトレードにおける価格の市場原理と流通性を担保しながら、二次流通における権利者への利益還元の問題も解決し、さらに不正コピーなどへのデジタルセキュリティ対策も施されている。



「従来のカードでは高額転売が問題になっています。VVIDでも希少価値が高いものほど高値でトレードできるのは同じですが、多くのユーザーにとって不利益にならないように高騰し過ぎない価格制限をかけることができます。VVID上ではユーザー同士の希少価値を高めるコミュニケーションもうまく機能しています。また、トレードが発生するたびに権利者へ手数料が還元されます。コンテンツホルダーは、たとえば1ヶ月しかカードを販売していなくても、時間が経てば経つほど希少価値は高まっていきますので、トレード(二次流通)の収益も積み上がります。中長期的な収益となるのがVVIDの仕組みです」(佐々木氏)



 従来のトレカの機能性や市場性は損なわずに、コンテンツホルダーならびにユーザーにとってのデジタルならではの新たな付加価値をプラスしているのが、VVIDが展開するデジタルトレカになるようだ。機能面ではデジタル化のメリットしか見えてこないが、それが成功するか否かはやはりユーザーが物理的なアイテム以上の満足度を得られるかという点だろう。



「コロナ禍でイベント限定グッズや特典などの販売が制限されるなか、VVIDで限定レアカードを入手できたり、デジタルによるプラスアルファのオリジナル表現が加えられたグッズの提供などができれば、よりリアルとの一体感をもって訴求できます。ただ、紙とデジタルそれぞれの良さがあり、デジタルが紙に取って代わるのではなく、両方が相互作用を生んでいくのが理想的だと思っています。物理的に手元に置きたいファンももちろんいますし、だれも持っていなかったような新しい表現のカードが欲しいというファンもいます。エンタテインメントにはさまざまな切り口が必要。両方が共存し、それぞれを楽しんでいただきたいです」(佐々木氏)



 現在はエンタテインメントコンテンツのトレカからスタートしているVVIDだが、ゆくゆくはデザイナーやイラストレーターをはじめ、一般からの作品をトレカとして販売していくことでマーケットを拡大していくことも視野に入れる。ただし、セキュリティ保護の観点から、それをユーザー同士がSNSなどでシェアするという楽しみ方はなじまないようだ。所有するカードの一部となる複数枚や、コレクション詳細が掲載されたウェブページをシェアする機能はすでに有しているが、そこでのコミュニケーションのみになる。



◆モノからデジタルへの過渡期に起きる反発、エンタメ業界の新たなマネタイズモデルの確立へ



 音楽や映画、漫画をはじめ、さまざまなエンタテインメントに怒涛のようなデジタル化の波が押し寄せているなか、トレカにも新たなシーンが生み出され、市場は変遷を遂げていくのだろうか。



 LINE エンターテイメント事業推進室 室長の上遠野大輔氏は「音楽でもサブスクサービスが始まるとき、CDの売上が下がるからとなかなか一歩を踏み出せませんでした。過去の歴史を見ると、モノからデジタルへの移行においては、いろいろな反発が起きるなかで、徐々に動き出して成功させてきています。同じようなデジタルシフトをカードでも進めていき、物理的なモノとは市場が違うということを示していかなければならない。新しいマーケットという認知を今年中に作っていくことに使命感をもっています」と力を込める。



 エンタテインメントにおけるさまざまなデジタルサービスを展開してきているLINE。そのエコシステムのなかでのデジタルコンテンツという文脈における連動により、VVIDにはLINEならではの付加価値が生まれてくる。上遠野氏は「デジタルにおけるC to Cのユーザー間コミュニケーションの一環となる、コロナ禍のエンタテインメント業界の新しいマネタイズをLINEの役割としてなにができるのかが、VVIDの肝になっています。デジタルにしかできない良さや利便性をしっかり活かして足場を作っていきたい」と意気込んでいる。



(文/武井保之)
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