Perfumeオンラインフェスの高い完成度 温かなハイテク感

Perfumeオンラインフェスの高い完成度 温かなハイテク感

 3人組テクノポップユニットのPerfumeが、結成20周年とメジャーデビュー15周年を記念し、デビュー日の9月21日に7時間に及ぶオンライン・フェス『“P.O.P” Festival(Perfume Online Present Festival/以下、POP Fes)』を開催した。タイムテーブルのどこを切り取ってもPerfumeの魅力と世界観を堪能できる“Perfumeのお祭り”といった内容で、当日は、ABEMA、ニコニコ生放送、U-NEXT、LINE LIVE-VIEWINGの国内4プラットフォームに加え、海外へ向けてはLive Fromとbilibili(中国向け)により、ワールドワイドに展開された。



【写真】オンライン・フェス会場で一部公開されたPerfume初の衣装本



■ “人間Perfume”の魅力と“アーティストPerfume”の凄みを楽しめるフェス構成



 会場となったのは、オンライン上に用意された特設Webサイト。そのトップページには、点描で観客が表示され、総来場者数が増えるたびに点も増えていく。さらに、来場者がそこにある4色の「EMOTION」ボタンを押すと、点が色づいていくという視聴者参加型の仕掛けも為されていた。こうした細かい演出によって、単にライブ配信を受動的に観るだけではなく、自分はこのフェスに参加しているんだという能動的な感覚へと導いてくれる。



 フェス会場内には、計11の多彩なエリア(ブース)が用意され、そのほとんどが無料開放されていた点も驚きであった。詳細は後述するが、こうして間口を広げようという姿勢からも、Perfumeに少しでも興味をもってくれた人とつながっていきたいというメンバー3人のピュアな想いが伝わってくる。



 そして、より深く「POP Fes」を楽しみたいというファン向けに用意されたのが、有料エリア「メインブース」である。ここでは、オープニングに3人が登場して、生配信で各エリアの見どころを紹介した後、のっちが公式ファンクラブのメンバーらとオンラインゲームを行う「のっちは◯◯とゲームがしたい!」、かしゆかは、いとうあさこと伝統工芸である江戸切子作りを体験する「かしゆかの のんびり しっぽり」、そして、あ~ちゃんは、ゲストのきゃりーぱみゅぱみゅらと女子会トークを展開する「あ~ちゃんプレゼンツ“恋愛ドラマなトークがしたい”女子会スペシャル」と、各人をフィーチャーした事前収録のソロ番組を配信。さらに、メンバー3人が部屋着でフリートークを行う「あ~ちゃん×かしゆか×のっちの女子部屋 ガールズトーク」などを通して、パブリックなイメージとはひと味違う、プライベートに近いであろう3人の素の表情やキャラクターを垣間見ることができ、改めて“人間Perfume”の魅力を存分に味わうことができた。



 これらの番組が終わると3人の表情はパブリックなものへと切り替わり、イベントを締め括ったのは、“アーティストPerfume”の圧倒的な凄みが凝縮されたPOP Fesのメインイベント「Perfume Imaginary Museum “Time Warp”」であった。



■止まった“時”を未来へと進めたPerfume Imaginary Museum “Time Warp”



 パフォーマンス配信は、最新シングル「Time Warp」のミュージックビデオのラストシーンと同じセットから始まった。 “2020/2/26”とラベルが貼られたビデオテープを再生すると、ブラウン管テレビの画面には、同日の東京ドームの様子がモノクロで映し出される。これは、アニバーサリー・イヤーを迎えた彼女たちが、約6年ぶりに行ったドーム・ツアーのファイナル公演の日。そして、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、開演数時間前に急遽中止の判断が下されてしまった、“あの日”のものだ。



 やがて、ライブ中止のアナウンスに戸惑う人々の映像がワイヤーフレームのCGへと変わり、さらに光の粒子となって宇宙へと拡散していく。まるで、やり場のない悲しみを抱えて宙を彷徨う魂のように。その粒子が再び東京ドームに集結すると、あの日と同じステージセットがグラフィカルに再構築され、どこからともなく3人の声が聴こえてきた。「もう一度あの日から始めよう…」。すると、バーチャルな東京ドームのステージ上で、ドーム・ツアーとまったく同じパフォーマンスを行うPerfumeの姿が視聴者の視界に飛び込んでくる。「GAME」のスタートだ。



 ここで多くのPerfumeファンは悟ったはずだ。思い出したくなかったあの日の映像も、幻となったファイナル公演のデジタルによる再現も、未来に向かうためのものである、と。そして、ここに集結した何万もの粒子、その1つひとつが自分たちであり、今一度あの日に戻り、未来へと時を進めるための「Time Warp」なのだ、と。オープニングとエンディングで、ブラウン管テレビの上に置かれていた時計の針が2月26日のあの時から、リアルタイムの今の時間へとタイム・ワープしていたように、Perfumeが歩んだ7ヶ月のすべてが、点と線でつながった瞬間だった。



■10年間に渡るライゾマティクスとのコラボが生み出した“温かなハイテク”感



 “過去へ戻る”という行為を、後ろ向きに感じさせることなく、未来へ進むものとして表現し得た大きな要因として、3人の強い想いと同じくらいに、真鍋大度をはじめとするライゾマティクスの力量を挙げておきたい(特設Webサイトで、「EMOTION」によって視聴者が“粒子”として参加できる仕組みも、ライゾマティクスにより実装されたものである)。



 ライゾマティクスは、最先端のAR/VR技術を駆使した視覚表現で知られているが、彼らがもっとも優れている点は、技術力と同等、あるいはそれ以上に、芸術性やエンタテインメント性を重視したクリエイティブを行っているところにある。だからこそ、Perfumeという生身の人間が行うパフォーマンスを最大化させる視覚表現を作り出せる。対してPerfumeは、そのテクノロジーに操られることなく、むしろテクノロジーをまるで衣装のように着こなすことで、自らをアンドロイド化させ、完璧なパフォーマンスを行う。このシンクロによって“温かなハイテク”感が生み出されているのだ。中でも今回のメインイベント「Perfume Imaginary Museum “Time Warp”」は、こうしたタッグを10年間に渡って組み続けてきた両者だから到達できた、現時点での集大成と呼ぶに相応しい内容であった。



■配信だからこそ生み出せた“リアル”なPerfumeの世界観



 もう1つ、Perfume独自の世界観を表現するうえで追い風となったのが、ライブ配信というスタイルだ。通常のライブでは避けられない照明の影や、ステージ機材の物質感がもたらすリアリティを完全に排除した仮想現実空間でパフォーマンスを行うことで、多くの視聴者は、自分が観ている映像がリアルなものなのか、あるいはノンリアルなものなのか、その境界線が分からなくなる瞬間が幾度となく訪れたはずだ。配信だからこそ生み出せた“リアル”なPerfumeの世界観。だからこそ、MC時に息が上がっている様子や、全パフォーマンスの終了後にグリーンバックの空間をあえて視聴者に伝えることで、リアルさが逆説的により強く印象づけられる。そしてその瞬間、視聴者の想いは、テクノロジーから、あ~ちゃん、のっち、かしゆかという“人”へと寄せられ、画面越しにPerfumeとつながる感覚を持つことができるのだ。



 ラストの「Time Warp」直前のMCで、かしゆかが「私たちの可能性ってまだまだあるし、みんなとつながれる方法って探せばたくさんあるんだと感じた」とコメントしていたが、まさに世界中のファンと、ライブ空間だけでなく、ライブ配信空間でもつながっていける可能性を十分に示してくれたパフォーマンスだった。



■ライブ・エンタテインメントが新たなステップに移行するためのアイデアが凝縮



 これほどまでに多彩かつ手の込んだコンテンツの制作は、誰にでも真似できるものではない。しかし、Perfumeの“周年記念”を彩った個々のアイデアをよく見ていけば、そこには参考となるヒントはたくさん散りばめられている。



 例えば、オンライン・フェス会場「POP Fes」では、ライブ・ヒストリーを振り返る「Live Memories」や、10月に発売される衣装本『Perfume Costume Book 2005-2020』の一部が先行公開された「Costume Booth」、リアル脱出ゲーム「Real Escape Booth」、メンバーのソロ企画や著名人によるPerfumeトークの動画を楽しめる「Variety Talk Booth」などが無料で用意され、フェスの盛り上げに一役買っていた。



 そのポイントは3つある。1つめは、無料コンテンツを充実させることで間口を広げ、ファンの熱量の度合い以前に、ライブ配信自体に馴染みのない人など、“たまたま通りがかった人”でも入ってきやすい環境を作り出していたこと。2つめは、いずれのコンテンツも、コア・ファンはディープに楽しめると同時に、ライト・ファンでもPerfumeのこれまでも活動を一望できる内容に練り上げられていたこと。これによって、視聴者がそれぞれの目線で楽しむことができると同時に、特にライト・ファンに対しては、Perfumeの魅力をより踏み込んで知ってもらおうという工夫が随所に感じられた。そして3つめは、メインのライブ配信に向けてのプレ・イベントとして視聴者の気分を盛り上げる役割も果たした点だ。



 この見事なフェス構成は、個々のアーティストに適した内容と規模感に落とし込むことができるだろうし、さらにいえば、リアルなライブにおいても、配信を活用することで “周年”イベントを立体的に盛り上げていくものとして導入可能だろう。

ライブ配信が進化する一方で、有観客のリアルなライブも少しずつ再開しつつある今、満を持して開催された「POP Fes」。それは、Perfumeの魅力を存分に楽しむフェスであっただけでなく、ライブ・エンタテインメントが新しいステップに移行するための、アイデアの種がたくさん詰まった一大イベントでもあった。

(文:布施雄一郎)
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