音楽ストリーミングシーンで存在感増すインディーズ作品 活躍をデータで検証

音楽ストリーミングシーンで存在感増すインディーズ作品 活躍をデータで検証

 新型コロナウイルス感染拡大防止のため、外出の自粛が要請されるようになった4月以降、ストリーミングランキング上位には、瑛人「香水」、Rin音「snow jam」、YOASOBI「夜に駆ける」など、短尺動画プラットフォーム「TikTok」で話題になった楽曲が続々とランクインするようになった。それらの共通点は、インディーズレーベルからリリースされている作品であること。それから半年が経過し、今やその状況はすっかり定着した感がある。ここでは、インディーズ作品のTOP100内のランクイン数や再生数の推移を追い、市場の拡大を検証する。



【表】2020年インディーズ作品 再生数TOP10



■わずか2ヶ月でTOP100圏内のインディーズ作の再生数シェアが6倍に



 表「ストリーミングTOP100内のインディーズ作品数の推移」は、今年1月に入ってからの、ストリーミングランキングTOP100圏内に入ったインディーズ作品数の週間推移である。ここで言うインディーズ作品とは、インディーズレーベルからリリースされた作品であるため、Official髭男dismやあいみょんのインディーズ時代の楽曲も対象となる。



 1~3月中旬までは、TOP100圏内にランクインするインディーズ作品は毎週5作前後という状況が続いていた。しかし、3月に入るとその数は徐々に増え始め、緊急事態宣言が全国に拡大した4月中旬には10作を突破(4/27付 集計期間:4/13~4/19)。その後も右肩上がりにランクイン数を伸ばしていき、8月にはついに20作に達した。今もTOP100圏内の約2割をインディーズ作品が占める状況が続いている。



 インディーズ作品の存在感が増しているのは、再生数の推移の方がより明らかに認められる。表「ストリーミングTOP100内 メジャーとインディーズの再生数比較」を見ると、TOP100総再生数のうち、インディーズレーベルのシェアは3月中旬までは5%以下であったが、ランクイン数の増加に比例する形で3月後半より再生数のシェアも伸長し、5月後半からの約1ヶ月間は、約3割を占めるまでに成長している。



 TOP100圏内のランクイン数の伸長は、コロナ禍で新譜のリリースを延期したメジャーレーベルが多かったことも影響しているものと考えられるが、ランクイン数の増加よりもむしろ再生数の伸びが上回っていることから、これら楽曲に対して、リスナーが熱狂的に視聴を繰り返している様子が伝わってくる。



■TOP100内に5作を送り込んだYOASOBI



 今年に入って、ストリーミングTOP100圏内にランクインしたインディーズ作品は44作(32組)。そのTOP10は表「インディーズ作品 再生数TOP10」の通り。1位はコンポーザーAyaseとボーカリストikuraによるクリエイターユニットYOASOBIの「夜に駆ける」(期間内累積再生数:12,892.3万回)。登場週数28週の半分の14週で1位を獲得しており、5位に「ハルジオン」(同3,952.5万回)もランクインしている。2位はシンガー・ソングライター瑛人の「香水」(同10,283.2万回)。3位は19年に大ブレイクしたOfficial髭男dismのインディーズ時代の楽曲「115万キロのフィルム」(同6,653.3万回)、4位の新世代ラッパーRin音「snow jam」(同4,610.4万回)と続く。



 前述のYOASOBIは、上記2作を含む計5作がTOP100圏内にランクインしており、「夜に駆ける」の大ヒット以降、ファン層を拡大している様子が見てとれる。次いでOfficial髭男dismの3作(インディー作のみ)、ヨルシカ、yama、もさを。、山猿、Vaundy、SUPER★DRAGONの各2作と続く。他の24組は1作のランクインとなっていることから、次なる課題としては、いかにして複数作をTOP100内に持続的にランクインさせるかだろう。



■インディペンデントアーティストに特化したデジタル配信サービス強化の動き



 インディペンデントアーティスト活躍の背景には、自分で作った楽曲を利用者であれば誰でも手軽に世界に向けて配信できる、音楽デジタルディストリビューションサービスの存在がある。その代表的なサービスが、TuneCore Japanだ。前出のランキングでも、瑛人、Tani Yuuki、空音らが同サービスを利用している。約45の配信ストア・185ヶ国以上へ配信でき、利用者への“収益の100%還元”が大きな特徴の1つ(楽曲の売上から配信ストアの手数料を除く、すべての収益をアーティストに還元)となっており、利用者にとっては大きな魅力だ。今年6月には、2012年に日本でのサービスを開始して以来、累積で利用アーティストへの還元総額が100億円を突破したと発表している。



 こういった流れのなか、インディペンデントアーティストに特化したデジタル配信サービスを強化する動きが続いている。5月には、レコチョクとタワーレコードが2015年から展開するインディーズアーティスト活動支援のための「Eggsプロジェクト」で、楽曲を登録(無料)するだけで、Apple Music、Spotify、LINE MUSIC、レコチョクなど世界167ヶ国と地域の音楽配信ストアで楽曲を販売することができる「TOWER CLOUD(タワークラウド)」のサービスをスタート。6月には、米ユニバーサルミュージックグループがグローバルで展開するインディーズアーティストのデジタル配信サービス「Spinnup(スピンナップ)」を、日本でも正式に開始した。



 コロナ禍で音楽のデジタル配信シーンにも大きな変化が起きている。上記のような動きが、インディペンデントアーティストの動向にどんな影響を及ぼしていくのか、ここからどんなヒットが生まれていくのか、今後も注視していきたい。
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