『仮面ライダー変身ベルト』が50年間“男子の憧れ”であり続けるワケ 開発陣に伝わる教訓「その武器で地球が救えるのか?」

『仮面ライダー変身ベルト』が50年間“男子の憧れ”であり続けるワケ 開発陣に伝わる教訓「その武器で地球が救えるのか?」

 1971年4月の放送開始以降、多くの男子を魅了し続けている『仮面ライダー』シリーズ。なかでも主人公が腰に巻き、ポーズを決めるとライダーに変身する「変身ベルト」は、玩具としても発売され、データの残る平成以降だけでも累計1400万本を出荷する大ヒットを記録している。ではなぜ『仮面ライダー変身ベルト』は、世代を超えて50年もの間、子どもたちの憧れであり続けるのか。販売するバンダイのブランドデザイン部に話を聞いた。



【貴重写真】初代をはじめV3、クウガ、龍騎、最新作セイバーまで歴代「仮面ライダー変身ベルト」



■失敗してもいいから新しいことに挑戦する社風が初代の大ヒットに



 『仮面ライダー』放送開始当初から、玩具として発売されていた「変身ベルト」だったが、最初は、バンダイではない他社が制作・販売を担っていた。だが、あることがきっかけで、バンダイの子会社でキャラクター玩具を専門に扱うポピーが取り扱うことになったという。



「ポピーの企画担当者が、他社様から販売されていた仮面ライダーの変身ベルトを自分の子どもに買い与えたところ、『テレビに出てくるのと違う!』と言われたそうなんです。そのベルトは、番組に出てくる変身ベルトのように中心が光らないし回らなかったんですね。そこで、番組を制作している東映に話を持ち掛け、光って回る変身ベルトを開発、販売することになったのがすべての始まりでした」



 テレビの中の仮面ライダーと“同じ”ベルトを着けて、ライダー気分を味わいたい。そう思った子どもたちの期待に応え、ポピーが制作した初代変身ベルトは、実に380万本を売り上げる大ヒット商品となった。



「今とは子どもの数の分母が違いますし、視聴率が高かったこともありますが、担当者のお子さんと同じような思いを抱いていた子どもたちがたくさんいたことが大ヒットにつながったのかもしれません。ただ、開発には苦労したようです。電動で回って光るものを作ろうとすると、やはりコストがかかります。でも、子ども向けの玩具ですから、価格はある程度抑えなければなりません。ただ弊社には、失敗してもいいから新しいことに挑戦して、常に新しいものを世に送り出していこうという社風があるので、果敢に挑んだと聞いています」



■変化とトレンドを取り入れる姿勢が進化につながる



 初代の大ヒットを皮切りに、その後も続々と誕生する仮面ライダーに合わせて「変身ベルト」を発売。光と回転だけだったギミックも、時代と共に進化していく。



「当初はベルトの中心に円盤があって、モーターで回って光るモデルが主でしたが、『仮面ライダーBLACK』(1987年)では、映像の変身シーンでテレビ画面がフラッシュのように連続的に白く点滅する演出を行い、その光をベルト側が受けて、自動で光って回るベルトを誕生させました。その翌年、『仮面ライダーBLACK RX』(1988年)では、腕輪をつけて変身ポーズをとる(腕を振る)と、電波送信により自動的にベルトが光って回るというギミックで、自分の動きにベルトが反応するという点が子どもたちにとても楽しまれたと聞いています」



 新作が作られなかった期間(1995年~99年)を経て誕生した『仮面ライダークウガ』(2000年)以降は、進化の加速度が増し、革新的なシステムが取り入れられた。



「『クウガ』ではフォームチェンジと言って、ボタン操作によって一つのベルトで能力の違う4種のライダーに変身できる変身ベルトを発売しました。このときはまだ以前のライダーと同じ「光る・回る」変身ベルトだったのですが、その後ベルト玩具のギミックはどんどん新しい魅せ方に発展していきます。例えば『仮面ライダー龍騎』(2002年)では、「光る・回る」という変身ベルトの既成概念を破壊し、ベルトにカードデッキを差し込むことで変身、さらに異なるカードデッキによって、共通する一つのベルトで13人の仮面ライダーに変身できるという、全く新しいことに挑戦しました」



 『仮面ライダー555(ファイズ)』(2003年)では、携帯電話をモチーフにした変身ベルトを開発。時代の流行を取り入れると共に、その念頭にあったのは、「子どもが憧れるようなものを作ること」だったという。



「『555』では、携帯電話に変身コードを入力してセットすると、変身サウンドが鳴り響くというベルトを発売し、大ヒットしました。子どもが携帯電話を持つことがまだ無かった時代、背伸びして大人の使っている道具で変身するという趣向が子どもたちを夢中にさせたのだと思います。それ以降も、光る回るに関係なく、カードをスキャンして変身したり、SuicaやPASMOのようにタッチして変身したり、時代の流行や最先端を取り入れ、毎年、既成概念にとらわれずに、子どもたちが憧れて飛びつきたくなるような新たな取り組みに挑んできました」



■時代は変わっても、子どもたちの“原始的な欲求”は変わらない



 約半世紀という長い期間、ロングヒットを続ける理由。それは時代と共に技術が進化し、完成したものの形が変わっても、作り手の変わらない思いがあるから。



「子どもたちに驚きを提供できるよう、新しい技術を取り入れていくことも積極的に考えてはいるのですが、ただ、技術ありきで作ろうとは思っていません。留意しているのは、『今、変身ベルトを通して一番子どもたちに届けたい・伝えたい楽しさは何か?』ということです。そのために新しい技術が必要なのであれば採用しますし、その必要がなく、これまでに使ってきたギミックを、魅せ方を変えて伝えられるのであれば、以前も使用した技術・手法も用います」



 子どもたちファーストの考え方は、開発陣に受け継がれている信念にも現れている。



「開発陣は、そのプロジェクトごとに変わっていきますが、受け継がれているのは、ホンモノ志向であること。弊社に残る逸話なんですが、かつて、ある担当者が武器のデザインを上司に見せた際、『お前、その武器で本当に地球が救えると思うか?』と問われたと。ただ派手でカッコいいおもちゃではなく、そのヒーローが本当に悪を倒し地球を救うことができると信じられる武器になっているかを真剣に考えて作れ、という教訓なのですが、それはヒーローアイテム作りの考え方の根底に根付いています」



 開発陣の時代を超える変わらぬ熱い思いに対し、それを受け取る子どもたちは、時代によって変化しているのだろうか?



「今は携帯電話やパソコンが身近にあり、子どもにとっての“当たり前”は時代によって変わってきています。ですが、変身ベルトが対象にしている3~6歳の子どもたちの、ものごころが付き始めたときに触って遊ぶおもちゃに対する物理的な興奮や、人間の根源的な面白い面白くないという感情は、変わらない部分があると思っています。

 最新作の『仮面ライダーセイバー』も、ベルトに刺さっている剣を抜いて遊べるようになっていますが、昔から木の棒を振り回して遊ぶのが好きな子どもは多いですよね。そういう戦い遊びに代表されるような、遊びに対する原始的な欲求は変わらないと思って、開発に当たっています」



 来年50周年を迎える『仮面ライダー』。記念すべきアニバーサリーイヤーには、「今までどおり、歴史として新しいことに挑戦したいという気持ちで開発していくつもりです」といつも通りを装いながら、「50周年にふさわしいものをお届けできるように、今、頭を絞っている最中です(笑)」と、期待をあおるコメント。“挑戦と進化”を伝統に、変わり続けることをやめない開発陣がいる限り、これから先もずっと“男子の憧れ”であることはまず間違いなさそうだ。



文/河上いつ子
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