SEKAI NO OWARI、誰も信用していなかった…紆余曲折経た10周年「“売れなくていい”は逃げ」

SEKAI NO OWARI、誰も信用していなかった…紆余曲折経た10周年「“売れなくていい”は逃げ」

 今年、CDデビュー10周年を迎えたSEKAI NO OWARI。現在放送中のドラマ『この恋あたためますか』(TBS系)主題歌の「silent」は、“10年目の覚悟”を持って挑んだ初のクリスマスソング。今や日本を代表するバンドに成長した彼らが、音楽シーンの最前線を走り続けることの意味と原動力、コロナ禍のストレスで殺伐さが増すSNSとの向き合い方、そして今後のバンドのあり方について語った。



【動画】セカオワ、真夏に制作…初のクリスマスソングで『恋あた』の主題歌「silent」MV



◆覚悟を持って挑んだクリスマスソング、ポップソングの究極のテーマに向き合えたドラマ主題歌



──新曲「silent」をTBS系ドラマ『この恋あたためますか』主題歌に提供するにあたって、ドラマの制作サイドから何か要望はありましたか?



【Fukase】 「王道ラブソングを書いてほしい」ということくらいでした。特にクリスマスソングとは言われなかったんですが、僕が書きたくなっちゃったんですよ。

【Saori】 でもクリスマスソングにしようって決まるまでにはかなり時間がかかったよ。

【Nakajin】 話し合いをしているなかで珍しく長い沈黙があったよね。僕らこれまで作ってきたなかで、明確に「クリスマス」というフレーズを入れた曲はなかったんです。

【DJ LOVE】 「イルミネーション」(2018年)には「緑や赤の綺麗な光」という仄めかすような歌詞があるけど。

【Fukase】 でもあれは逃げだった。クリスマスソングの怖さというものをわかっていたが故のね。

【Nakajin】 クリスマスソングは、DNAに刻まれるレベルに親しまれている名曲がいくつかあって、しかも何年も更新されてないじゃないですか。そこにあえて挑んでいくには、並々ならない覚悟が必要なのは、きっとどの世代のミュージシャンも感じていると思う。

【Fukase】 でも、もう逃げてちゃダメなんじゃないかって覚悟を決めたんですよね。10周年のこの時期に主題歌の話をいただけたのも、クリスマスソングというポップソングの究極のテーマに向き合えるいいチャンスだったんだと思う。

【Nakajin】 長い沈黙を破って、Fukaseが「クリスマスソングの新定番を作る」って断言した時には、武者震いする感覚がありました。簡単じゃないぞってわかってることに、あえて挑戦するワクワク感というか。しかも誰も反対しなかった。それはやっぱり、ずっと同じ方向を向いて共同作業をしてきた信頼関係があったからだと思います。

【Saori】 結果、歌詞と曲にはものすごく時間がかかってしまったんですが。

【Fukase】 それは僕が映画『キャラクター』を撮ってたからというのもある。2ヵ月くらい、撮影現場に出ずっぱりだったので。

【Nakajin】 しかも殺人鬼の役をやりながら、よくぞこの歌詞を書けたなという感じでしたね(笑)。



◆「売れなくていい」って言うのは、逃げだと思う ヒットを目指さないなら試行錯誤する必要がない



──CDデビューをした10年前、現在の自分たちの姿をイメージできていましたか?



【Fukase】 インディーズでリリースした当時の社長が、「お前ら10年は大丈夫だよ。俺が保証する」って言ってくれたんです。「その代わり11年目以降は、この10年で決まるからな」って。僕はけっこうその言葉が腑に落ちたし、その時その時のやるべきことから(自分たちが)逃げなければ今日現在はあると思っていました。



──やるべきことのなかには「ヒット曲を生み出す」も含まれているのでしょうか?



【Fukase】 ヒット曲を出そうと思ってこのバンドを始めたわけではないんです。だけど「売れなくていい」って言うのは、やっぱり逃げだと思う。ヒットを目指さないんだったら、試行錯誤なんてする必要ないんですよ。誰が理解してくれなくても、自分はこの曲が好きだからいいんだってことですから。

【Nakajin】 自己完結でいいのなら、共同作業もしなくていいしね。衝突や意見のぶつかり合いもなくて済んでしまう。

【Fukase】 でも、それがないとどんどん孤独に陥りそうじゃない? 自分しか信じられなくなって。「売れなくてもいいや」っていう言霊って本当にメンタルに悪い気がする。実際、そういう人も何人か見たことあるし。

【Saori】 SEKAI NO OWARIは4人だけじゃないしね。スタッフも含めてのチームだから。

【Fukase】 そうだよ。自分だけがわかればいいなら、これだけ大勢のスタッフや家族の生活を巻き添えにしてやることじゃない。いろんな人にとっての大切な曲、それが1曲でも多いほうがいい。ヒットというものはそういう考えや意見交換の結果で生まれていくんだと思う。とにかく僕は寂しがりやなので、皆で大きな目標に向かっていたい。高い山だって皆で登ったほうが楽しいですしね。



──10周年の今年は予定されていたドームツアーが中止に。SEKAI NO OWARIがこれだけライブをやらないのも珍しいのでは?



【Fukase】 はい、でもライブに関してはあまり焦ってないです。その分、曲作りに集中する時間もできました。

【Saori】 今はライブが普通にできる日を粛々と待っている感じですね。一時期はテクノロジーを駆使したバーチャルライブを模索したこともありました。だけどそれは今じゃない。この10年で築いてきたライブの世界観は、配信では再現できないということがわかったので。

【Fukase】 できたとしてもライブの代替ではない、別物になると思う。どんだけ栄養価の高いサプリがあっても、お腹が減ったときにサプリだけで満足できるかっていうと、人間の欲求ってそんなことじゃないと思うし。また僕らのベーシックである「音楽を作って発信すること」はコロナ禍でも奪われてないので、Saoriの言うようにライブができる日を待っているという状態ですね。



◆大事なことはSNSやネットには書かない、実像をイメージしロジカルに向き合うことが大切



──コロナ禍のストレスで、SNSの殺伐さも増しているように感じます。皆さんのSNSとの付き合い方を教えていただけますか?



【DJ LOVE】 僕はわりと怖いもの見たさを面白がれる方なので、エゴサーチをしちゃうほうなんです。だけど、ショックなことが書かれていても笑い飛ばせる精神状態じゃない時はしないです。

【Nakajin】 気になると調べちゃうのが人間の性質なので、難しいところではあります。でも何を書かれていても、別に全人類の意見じゃないし、というのが僕の受け止め方ですね。

【Saori】 私もそれと似ていて、統計的に考えると精神衛生上いいなって思うんですよ。例えばアンチコメントをするのはSNS利用者の数パーセントの人で、それくらいわずかということ。そこに心を囚われるのも合理的ではないと、わりとロジカルに捉えていますね。あとネットでコメントを書くのは40代以上の男性で年収も高いとか…。

【Nakajin】 実像をイメージする感じ?

【Saori】 そうそう。ということは「会社で嫌なことがあったからこんなこと書くのかな?」とか、アナライズしてみるのも面白かったりしますね。

【Fukase】 大事なことはSNSやネットには書かない、というのが発信する側の僕の言い分です。昔は夜中にわーっと書いて、自分が思っているのと違う反応がくるとショックで、「なんでわかりあえないんだ!」ってまた書いて…ということを繰り返していた頃もありました。でも、こんなのなんか不毛だなって気づいて。今の僕のツイートは、めちゃくちゃ適当ですからね(笑)。

【Saori】 本当にしょうもないことばっかり書いているよね。100万人以上いるフォロワーに向けてさ。

【Fukase】 ってSaoriにいつも怒られています(笑)。でも、やっぱり本当に伝えたいことは直接、面と向かって言ったほうがいいなと思うんです。ライブのMCも含めてね。というくらい、引いた距離感が僕のSNSとの付き合い方です。



◆デビュー当時は誰も信用していなかった…それが防衛本能でもあった



──この10年の間、現時点の決定的だった出来事を教えてください。



【Fukase】 やっぱり一番はいわゆる“セカオワハウス”を手に入れたことだったと思います。その少し前に(共同生活をしていたライブハウス兼住居の)club EARTHを出て、実家に帰っていて。活動は普通にしていたけど、なんとなくバラバラになりかけていたんです。

【Saori】 自分たちらしい音楽ができてない感じがしていました。

【Fukase】 結局、各々が自宅で曲を作っていたから、共作になってなかった。これじゃダメだ、もう一度自分たちの場所を作ろうというSaoriの提案で、スタジオと居住空間が一緒になった“セカオワハウス”ができました。

【Saori】 今はもうFukaseしか住んでないけど、曲作りは今もそこでしていますし、まずはそこに4人集合してから一緒にその日の仕事場所まで行くようにしています。



──この10年で培ってきた、11年目以降のSEKAI NO OWARIの財産のようなものを教えてください。



【Fukase】 優秀なスタッフに恵まれたことかなと思います。一歩進むごとに『ドラゴンクエスト』みたいに仲間が増えていって、いい仕事ができるたびに僕らもその人たちをすごく信頼できるようになって。

【Saori】 自分たちが信頼できるようになったことは大きかったと思う。デビュー当時は近寄ってくる人をある種、敵みたいに疑ってかかるところがあった。

【Nakajin】 その当時はそれが防衛本能みたいなものでもあったんだよね。

【Fukase】 誰も信用していなかった。「ラブソングを書かなきゃ売れないよ」と言われて、「嫌だよ」って言ったこともありました(笑)。だから最初のアルバムには1曲もラブソングが入っていないんですよ。

【Nakajin】 だけど4人だけで意思決定するのではなく、スタッフや周りの意見も取り入れることでいい方向に進むこともわかった。僕らがスタッフを信頼することで、連携もよりうまく回るようになったしね。

【Saori】 特にライブチームは1年のうち数ヵ月はサーカス団のようにずっと一緒に過ごしていることもあって、揺るぎない阿吽の呼吸みたいなものがありますね。

【Fukase】 だけど、僕はその阿吽の呼吸が足かせになるときがくるかもしれないとも思っています。それはスタッフだけじゃなくて、僕らの音楽スタイルや届け方すべてに言えることなんだけど、心地よい船に乗って順調に進んでいるが故に思考停止してしまうのはすごく嫌なんです。本当にこの方向で合っているのか? ということを毎日きちんと確認して話し合い、間違っていたらいつでも船を降りる勇気を持っていたい。それが11年目以降のSEKAI NO OWARIの歩み方だと思っています。



(文/児玉澄子)
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