『鬼滅の刃』グッズはどこまでがOK? 氾濫する偽物、地域振興…その境界を弁護士に聞く

『鬼滅の刃』グッズはどこまでがOK? 氾濫する偽物、地域振興…その境界を弁護士に聞く

 『鬼滅の刃』の大ヒットを受けて、関連グッズも数多く出回っている昨今。だが、その陰で横行しているのが、偽物グッズや海賊版だ。偽物フィギュアを無許可で販売した疑いで、逮捕者が出たとの報道もあった。ファンならば、様々なグッズを揃えたくなるのは当然。だが、その心理を悪用されないためにはどうしたらいいのか? 本物と偽物の見分け方など、著作権法に詳しい、レイ法律事務所の舟橋和宏弁護士に話を聞いた。



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■あなたのグッズは大丈夫? 本物と偽物の見分け方



――『鬼滅の刃』のグッズは数多く出回っていますが、中には偽物も含まれているようです。本物との見分け方を教えて下さい。



 「まずは、(C)〇〇とある、クレジットを確認してください。作家名の吾峠呼世晴、出版社である集英社、またグッズ販売権を持つアニプレックス、映像を担当したufotableなどの表記がしっかりなされているか。ただ、場合によってはクレジットまでコピーした偽物グッズもあり、正規品と細かく見比べないと判別できないこともあります。たまに、クレーンゲームなどの景品で、なんとなく造形が崩れたものがありますが、そういったものにも注意が必要です。巧妙な偽物に騙されないように、公式ショップなどで購入することをお勧めします」



――最近では、偽物グッズ販売による逮捕者も出ています。これはどんな刑罰になるのでしょうか。



 「まず、考えられるのは、著作権法違反です。刑罰としては10年以下の懲役、または1000万円以下の罰金(両方とも科される可能性もあります)。窃盗罪が10年以下の懲役、または50万円以下の罰金ということと比較すると、罰金面では重めの刑罰と言えますね。著作権をはじめとした知的財産保護を強化するべく、平成18年に現在の刑罰まで引き上げがなされました。



 また、完全なコピー品も存在しますが、この場合は不正競争防止法違反も考えられます。グッズを真似て、集英社やアニプレックスが作ってきた作品やキャラクターを丸パクリするのは、その企業の努力にタダ乗りすることになるため、刑罰が課せられる可能性があります。そして、刑事裁判だけではなく、民事訴訟として損害賠償請求をする可能性もあります。企業としても本来なら自分たちが得られたであろう利益を奪われたとして、裁判を考えることも十分あり得ます」



――消費者が偽物を入手することは、犯罪になるのでしょうか?



 「買った人がそれを偽物(著作権侵害)だと知らなかったならば、入手すること自体は犯罪になりません。また、著作権法では私的利用目的でのコピーが認められていて、“個人”が“家の中”で楽しむ分には問題ないというニュアンスがあります。仮に、コレクターが棚に偽物を含めたグッズを陳列しておいても、何かを侵害するということにはなりません。ただし、それを偽物だと知りながら転売するなどの場合は、著作権侵害で刑罰の対象となりえます」



――このようなエンタメ作品の権利関係は、昔より厳しくなっているのでしょうか?



 「著作権侵害について、被親告罪にするかどうかなど改正の議論はありましたが、極端に法律が変わったり、厳しくなったりしたわけではありません。それよりも、ここ10年くらいの間で、著作権違反について一般ユーザーの考え方や認識が高まったのではないでしょうか。これはSNSの発展が背景にあるように感じます」



――そのあたりをもう少し具体的に教えて下さい。



 「昔は、個人が作品を発表したり、発信したりする方法は限られていました。ですが現在は、インターネットやSNSを通して、誰もがクリエイターとして発信できる時代。そうすると、自分が作った作品を勝手に使われたり、コピーされると当然いい気がしません。そういった被害を防ぎたいとの思いから、『著作権法』という法律が注目されていったのではないでしょうか。こうして母数が増えた分、権利を主張する人々も増加し、結果として『権利に厳しい時代になった』と見えているのではないかと思います」



■聖地巡礼も盛んな『鬼滅』、「町おこし」への利用は?



――一方で、「町おこし」のような形で、作品の関連地域で鬼滅を思わせるグッズが販売されたりもしています。この場合、地域振興につながるということで、目をつぶることも多いのでしょうか?



 「権利元に明確に許諾を得ていなくても、社会的な意義がある場合や、作品自体の盛り上がりに貢献する場合、なかば黙認することも多々あります。『黙示の許諾』と言うもので、ざっくりいうと知っていながら敢えて放置している状態を許諾したと考えるのです。そもそも、著作権侵害は『親告罪』。著作権を侵害された側が『侵害されました』と訴え出て初めて、刑事罰となるものです。著作権を持っている側が何も言わないということは、黙認しているということも多いようです。もちろん、実はしっかり許諾を取っているという場合もあります」



――以前、キャラクターたちの着物の柄が商標出願され物議が起こりましたが、これに関する見解は?



 「商標とは、コカ・コーラのロゴや瓶の形など、その会社をイメージできるようなマーク等を登録することで守る法律です。ですが、着物の柄のような『地模様』は、それが会社を想像させるかというと、確かに疑問が残ります。以前、アパレルメーカーが絵文字の『ぴえん』の商標を出願して話題になっていましたが、こちらも同様です。着物の柄の場合、市松模様などは昔から広く使われている地模様なので、認められることは難しいと思います。ただし、商標を取るということ自体は権利を守るために大切な考え方ですので、これを否定するものではありません」



――なるほど。一般ユーザーはこれらを受けて、どのようにしたらよいのでしょうか。



 「アニメの制作にかかわる人にお話を聞くと、アニメを作るだけではプラス収益にならないと言います。グッズやDVDを作る、玩具会社とコラボしておもちゃを作る。日本のアニメではそうして収支を安定させていくことが多いので、ぜひ正規品を買っていただいと思いますね。確かに、偽物グッズを入手しても罪に問われません。ですが、公式・正規のものを購入することが、作品の応援、また日本のアニメの発展につながると考えてもらえればと思います」



(文:衣輪晋一)



<プロフィール>

舟橋和宏弁護士:レイ法律事務所所属。アニメ・映像コンテンツの権利保護に力を入れており、知的財産保護(特に、著作権・商標権保護)に精力的に取り組んでいる。自他ともに認めるアニメオタク。近年の推し漫画は主にグルメ系。
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