『ジャンプ』若手作家が群雄割拠の“新時代” 呪術廻戦、チェンソーマン…異才輝く

『ジャンプ』若手作家が群雄割拠の“新時代” 呪術廻戦、チェンソーマン…異才輝く

 今年に入って『鬼滅の刃』、『ゆらぎ荘の幽奈さん』、『約束のネバーランド』、『ハイキュー!!』など、人気漫画が続々と連載終了した『週刊少年ジャンプ』(集英社)。しかし、アニメが放送中で累計1500万部を突破した『呪術廻戦』やアニメ化が決まった『チェンソーマン』(14日発売号で第1部完結したが、第2部が少年ジャンプ+で掲載予定)など、編集部で“異才”“奇才”と呼ばれる若手作家たちの作品が人気だ。10年以上続く長期連載は『ONE PIECE』と『HUNTER×HUNTER』の2作品だけとなっており、今、『ジャンプ』が新時代を迎えようとしている。



【写真】ついに1500万部突破!「呪術廻戦」発売前の14巻カバー公開



■約20作品中、半分以下が連載1年未満 鬼滅、ハイキュー!!…人気作続々終了の1年



 まず、『週刊少年ジャンプ』の連載の現状だが、10年以上続いているのは、『ONE PIECE』(ワンピース)と『HUNTER×HUNTER』(ハンターハンター ※長期休載含む)の2作品だけ。次に長く続いていた『ハイキュー!!』が今年7月に8年半の歴史に幕を下ろし、『僕のヒーローアカデミア』(2014年7月~連載中)、『ブラッククローバー』(15年2月~連載中)と続いている。



 そんな中で今年印象的だったのは、5月に『鬼滅の刃』、6月に『ゆらぎ荘の幽奈さん』と『約束のネバーランド』、7月に『ハイキュー!』…と約2ヶ月でテレビアニメ化もされた人気作品が続々と終了したこと。特に長期連載が少ない同誌の中で『鬼滅の刃』(16年2月~20年5月)、『ゆらぎ荘の幽奈さん』(16年2月~20年6月)、『約束のネバーランド』(16年8月~20年6月)の“連載4年組”が続けて終了したことは大きな話題となった。



 14日に発売された最新号の『ジャンプ』2号では、掲載23作品中(読切含む)8作品(※)が1年以上の連載作品で、半分以上が今年スタートした新連載。その中でテレビアニメ化もされた人気作品が立て続けに雑誌から名前が消えることは、「部数や売り上げに響かないのか?」と気になるところだ。※第1部完結&2部がスタート予定の『チェンソーマン』含む、読切の『約束のネバーランド』は除外。



 その中で紹介する2作品『呪術廻戦』は18年3月~、『チェンソーマン』は18年12月~と同年に連載がスタート。まだ歴史が浅い点、作者にとって同誌での初連載という点で共通点があり、若くして才能を開花させている1992年生まれの若手作家だ。



■編集部が満場一致で連載決定『呪術廻戦』 異才の新人作家として異例の売上を記録



 『呪術廻戦』は、ある強力な「呪物」の封印が解かれたことで、主人公の高校生・虎杖悠仁が、呪いをめぐる戦いの世界へと足を踏み入れるダークファンタジー。その人気は高く、コミックス累計発行部数は、テレビアニメ化が発表された昨年11月時点では累計250万部、アニメが放送された10月2日時点では850万部、29日時点で1000万部、そして12月16日に1500万部を突破。累計1億2000万部を突破した『鬼滅の刃』が、アニメ化発表時(18年6月)に250万部、放送された19年4月時点で350万部(※3日後に発売された15巻で500万部)、放送終了の19年9月時点で1200万部だったことを考えると、すでに多くのファンがいることがわかる。 さらに『全国書店員が選んだおすすめコミック2019』で1位、『みんなが選ぶTSUTAYAコミック大賞2019』で大賞を受賞し、今年10月よりテレビアニメが放送されると、TBS系の『NEWS23』などで特集が組まれるなど今、注目されている。



 だが、注目されたのは連載前からだった。編集部によると、連載を決める会議で、オリジナリティーのあるストーリー、キレのあるセリフ、独特のキャラクター造形などが評価され、“編集部が満場一致で連載決定した”という鳴り物入りのエピソードを持つ。驚くのは、第1巻発売後に即重版がかかり、第2巻が発売された18年9月に25万部を突破したことで、2巻の発売までに2度の重版を記録。デジタル版でも新人作家としては異例の売れ行きだと当時、説明していた。



 ジャンプの公式サイトにて「異才が拓く、ダークファンタジーの新境地!」と紹介される作品を描いているのは1992年生まれの作者・芥見下々氏。14年に『神代捜査』(少年ジャンプNEXT!!)でデビューし、『ジャンプGIGA』(2017年)で短期連載していた『東京都立呪術高等専門学校』が、『呪術廻戦』のプロトタイプ及び正式な前日譚となっており、18年12月に『呪術廻戦 0巻 東京都立呪術高等専門学校』として発売した。



■バイトせず“読切”の漫画賞金で生活費稼ぐ 奇才が描く『チェンソーマン』



 一方、『週刊少年ジャンプ』で2018年12月より連載がスタートした『チェンソーマン』は、チェンソーの悪魔・ポチタとともにデビルハンターとして暮らす少年・デンジが主人公。親が残した借金返済のためド底辺の日々を送る中、デンジはポチタと契約し、悪魔の心臓を持つ『チェンソーマン』として世の悪魔を狩るダークヒーローアクションが展開されている。 唐突に明かされる謎や衝撃の展開が話題を呼び、『ジャンプ』が発売される度に、最新話の内容がツイッターでトレンド入りする人気作品で「みんなが選ぶTSUTAYAコミック大賞2019」9位、「第5回次にくるマンガ大賞」コミックス部門2位、「このマンガがすごい!2020」オトコ編4位、そして先日発表された「このマンガがすごい!2021」オトコ編1位にランクイン。コミックスは現在9巻まで発売されており、累計発行部数500万部(電子版含む)を突破している。



 そんな物語を描くのは、芥見下々氏と同じ1992年生まれの藤本タツキ氏。読切『恋は盲目』で2013年11月期第「クラウン新人漫画賞」佳作を受賞し、同作が2014年に『ジャンプSQ.』に掲載されデビュー。その後、代表作となった初連載作品『ファイアパンチ』を16年~18年まで漫画アプリ『少年ジャンプ+』で連載し、独特な世界観と絵のタッチが話題となり、『チェンソーマン』連載時では同誌にて“『ファイアパンチ』の奇才が放つ”と称されていた。



 また、芥見下々氏と同じく逸話もある。ファンの間で話題となったのは、ジャンプの月例新人漫画賞「JUMP新世界漫画賞」において、漫画家を目指す人に向けてのアドバイス講座にての持論だ。(※現在ジャンプ公式サイトのJUMP新世界漫画賞講座アーカイブスで見ることができる)



 それは「数多く発表されている読切作品ですが、それぞれどのようなステップとして捉えて執筆されていましたか」という質問に、藤本タツキ氏は「大学生の時にバイトなどをしていませんでした。なので家賃や生活費などの為に読切を描いていました。大学卒業後は奨学金を返済しなければいけません。読切を描かなければバイトをしなければいけないのでそれが嫌で読切を描いていました。ステップアップという目線からみると、描けば描くほど賞金額があがっていき生活に彩りが出てきたのでよかったです」と回答。バイトが嫌で漫画賞の賞金で生活費を稼ぐという、駆け出し漫画家らしからぬ“奇抜な発想”で、ネット上では「バイトしたくないから漫画描くって化け物だろ」「賞金稼ぎというのは彼のこと」など驚きの声があがった。



■ジャンプ新時代が到来か 初連載作家のヒット作が続々



 人気絶頂の中で完結したのが記憶に新しい『鬼滅の刃』作者・吾峠呼世晴氏は、24歳の時に『鬼滅の刃』の前身となった読切り『過狩り狩り』で、『第70回 JUMPトレジャー新人漫画賞』(13年)佳作を受賞。その後、16年に自身初連載となる『鬼滅の刃』をスタートさせた。『呪術廻戦』と同じく20代の新人作家が活躍した格好だ。実は今、先にあげた『呪術廻戦』『チェンソーマン』のほかに、『週刊少年ジャンプ』は有望な若手が躍動している。 今年1月に連載がスタートしたばかりの『アンデッドアンラック』は、情報誌『ダ・ヴィンチ』と『niconico』による「次に流行るであろうマンガ」を決める『次にくるマンガ大賞 2020』のコミックス部門1位に選ばれたほか、同時期にスタートした『マッシュル -MASHLE-』も根強い人気。また、両作品の作者ともに同作が初連載で、7日に発売された同誌1号でセンターカラーを飾った『アンデッドアンラック』のページには「『アンデッドアンラック』&『マッシュル -MASHLE-』ジャンプ新時代BOOSTキャンペーン特報!!』と同誌を引っ張っていく作品として紹介した。



 『鬼滅の刃』、『約束のネバーランド』、『ハイキュー!!』など大型タイトルの連載が終了した『週刊少年ジャンプ』。掲載タイトルが心配になるが、テレビアニメが放送中でコミックスを売り伸ばしている『呪術廻戦』、テレビアニメ化も決まりこれからさらに注目を浴びる『チェンソーマン』、さらに編集部が注目する『アンデッドアンラック』&『マッシュル -MASHLE-』などと、才能あふれる若手が集う“ジャンプ新時代”が到来しつつある。今後もヒット作品の誕生に注目したい。
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