“ブレイク女優=朝ドラ出身”の定石を壊せるのか? カギを握るのは“声優との両輪”

“ブレイク女優=朝ドラ出身”の定石を壊せるのか? カギを握るのは“声優との両輪”

 年末に差しかかり、毎年恒例の『2020年ブレイク女優ランキング』(オリコン調べ)が先ごろ発表された。首位に輝いたのは、現在放送中のドラマ『この恋あたためますか』(TBS系)に出演中の森七菜。昨年は清原果耶、2018年は永野芽郁と、朝ドラヒロインを務め、瑞々しい演技を見せる若手女優たちが1位を飾ってきた。朝ドラとブレイク女優が対として語られることが定着して久しいが、その定石を覆す新たなブレイクポイントは生まれるのであろうか?



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■“朝ドラ出身”の影響力 定着したレールに乗るのがブレイクへの近道に



 『ブレイク女優ランキング』だけのことではないものの、近年ブレイク女優としてピックアップされた女優は、朝ドラの主演、助演、脇役での演技が注目された人が多い。今回の『ブレイク女優』TOP10を見てみても、5位の伊藤沙莉は『ひよっこ』、7位の小芝風花は『あさが来た』、9位の奈緒は『半分、青い。』など、それぞれ朝ドラの助演で注目を集め知名度を集めてきた。



 今回1位となった森七菜はというと、NHK連続テレビ小説第102作目の『エール』でヒロイン・関内音(二階堂ふみ)の妹である関内梅役を演じた。1人の人物のほとんどの人生を演じることが多い朝ドラ。初出演の森にもその重圧はあり、収録上、同じ日に女学生の梅と30歳の梅を演じることがあり、まだ女優デビューから3年の森には大きな壁となったはず。



 しかし、演じきれた際には視聴者からの反響は凄まじい。感情を表に出さない不器用な文学少女だった梅を通じて、さまざまな挑戦を乗り越え確固たる信頼を勝ち得た。本人もインタビューで、「ほかの仕事の現場で会う人にも『梅ちゃん』と呼ばれ、“朝ドラ”の影響力を実感した」と語っている。



 2000年代は朝ドラ低迷期とも言われたが、現在は好調。それは、作品自体のクオリティはもちろん、『あさイチ』(NHK総合)のドラマ受けやSNSでの“援護射撃”が功を奏し、ブレイクに繋がる流れを強固なものとしている。



 幅広い世代に名前と顔を覚えられる絶好の機会となる朝ドラ。朝だけでなく昼の再放送もあり、職場などで会話のきっかけになることも多く、その影響力は絶大。確固たる“朝ドラブランド”がブレイクのレールを形成し、若手の新陳代謝を起こす一つの指標的立ち位置となっている。



■ヒロインに必然な“少女性”と“儚さ”



 朝ドラ助演で知名度を上げた森だが、若手女優がヒロインを演じる上で必要な“純粋無垢”も持ち合わせている。TBS系ドラマ『この恋あたためますか』では、主演を務め、井上樹木を演じる森。彼女の演技を共演者は絶賛しており、同作制作発表会見で中村倫也は「本当に魅力的な森七菜がそこにいる」と讃えており、仲野太賀は「森さんは独特の情報量の多い芝居をするんですが、伝わり方がすごいです」と褒め称えた。コンビニ店員から急にスイーツ開発を任される役柄で突然連ドラ主演を任された本人ともリンクして話題に。



 かつてブレイクしていった女優たちがそうであったように、ブレイクには純粋無垢さ、いわゆる“少女性”が求められる。朝ドラでも、恋愛ドラマのヒロインでも、そういったピュアさを表現できるというのは重要なファクター。過去にブレイク女優に選ばれた上白石萌音、永野芽郁、有村架純、高畑充希らも、彼女たちが形容される際には、純粋無垢、透明感のような言葉で表現されてきた。



 純粋さを表現することは、年を重ねていくにつれ実年齢との誤差が生じる。少女性は永遠に表現できるものではなく、いつか消えていってしまう“儚さ”を秘めているからこそ美学がある。清純派女優が、ヌードシーンを披露することで“演技派女優”と呼ばれるケースもあるが、やはりCMなどの契約も考えると、それは“最後の切り札”的なもの。



 森七菜や清原果耶らは、その切り札を使わずとも、資質として“少女性”も“儚さ”も持ち合わせており、それが年齢を重ねても失われないことを予感させる。



■“聴覚”がブレイクスルーに? 女優による必然性を帯びた“声優業”



 森は女優デビューから3年経過しているが、年々活動の幅を拡大させている。そのきっかけになったものに2019年公開の新海誠監督によるアニメーション映画『天気の子』ヒロイン・天野陽菜役への抜擢がある。ミステリアスな役柄の魅力と相まって、一躍注目の的となった。同作で、第14回声優アワードで新人女優賞を受賞した点も拍車をかけた。



 声優業には、アニメ映画『バケモノの子』などの広瀬すず、『二ノ国』の永野、12月25日公開の『ジョゼと虎と魚たち』の清原らも挑戦し、話題を呼んできた。声だけで感情を表現することを学ぶことは若手女優にとっては女優として深みを与えてくれる。



 森は声優を経験したことについてウェブメディア・シネマトゥデイのインタビューでで「『天気の子』で陽菜という快活な女の子の役を声だけで演じるという経験をしたことによって、声量が大きくなり調整ができるようになった気がします」と、自身にとって大いにプラスになったと語っている。



 また、森は歌手活動も行い、大塚製薬『オロナミンC』CMで歌っているホフディランの「スマイル」も話題となり同曲はYouTubeで1600万回以上再生を記録。1月に映画『ラストレター』の主題歌「カエルノウタ」でソニーミュージックからデビューし、カップリングでは小泉今日子の「あなたに会えてよかった」、荒井由実の「返事はいらない」もカバーしている。森のブレイクは、歌声も含めた“声での演技”も大きな要因となり、聴覚でもファンの心をつかんでいることがわかる。



 森以外にも、昨年の1位の清原や上半期1位の上白石も歌手活動をしており、声も女優として重要な要素のひとつであることがうかがえる。松たか子、柴咲コウなど多くの女優が歌手との両輪で活躍してきたが、シンガーとして身につけた表現力も演技にフィードバックされれば、単なる人気だけではない息の長い女優としての活躍が期待できるのだ。



 朝ドラがブレイクの登竜門というのは、主演でなくとも変わらない。しかし、その確固たる道筋に、変化の兆しが見えてきている。果たして「女優としての声優業」が今後さらに重要な指針となるか否かは、森七菜による今後の活躍にもかかってくるだろう。
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