ドラマヒットの鍵を握る“芸人俳優” 中堅&若手だからこそ可能な立ち位置

ドラマヒットの鍵を握る“芸人俳優” 中堅&若手だからこそ可能な立ち位置

 先ごろ発表した年末恒例の『2020年 ブレイク俳優ランキング』(オリコン調べ)に新たな潮流が生まれている。それが“芸人俳優”の台頭だ。近年、表現力に長けた演技派芸人たちが、俳優としての才能を開花させる流れが増加傾向にあり、今年のランキングでも3位にハナコ・岡部大、4位にずん・飯尾和樹がランクイン。本業の俳優顔負けの演技を見せる“芸人俳優”の需要と視聴者からの見え方は、確実に変化を遂げている。



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■「芸人知名度」先行による起用とは異なる“芸人俳優”の今



 ドラマや映画などのエンターテイメント作品に、専業役者以外が出演するのは古くからの通例として捉えられてきた。劇場で客を前にネタを披露する芸人と俳優の親和性は高く、客の反応を生で感じ、瞬発力が求められる芸人(特に手練れのコント師ならば尚更)は、自ずと洗練された演技力を持っている。



 ビートたけし、明石家さんま、とんねるず、ダウンタウン、ウッチャンナンチャン・内村光良……など、かねてからお笑い芸人がドラマや映画等に出演するケースはあった。それぞれ脇役としてではなく、主役を務めることも多く、古くはクレージーキャッツの植木等、ザ・ドリフターズの面々なども含めテレビの創成期からその流れはあった。だがそれは、芸人としてのネームバリューが先行した者たちだからこその俳優活動であり、結果としてそこからヒットにもつながったと言える。



 だが、昨今の“芸人俳優”ブームは、それまでの流れとは趣を異にしている。2015年にヒットした『下町ロケット』(TBS系)では、立川談春や恵俊彰、元キングオブコメディの今野浩喜らが出演し、話題を集めた。ほかにも、ドランクドラゴン・塚地武雅やネプチューン・原田泰造、我が家の坪倉由幸、板尾創路、ラーメンズ片桐仁ら、必ずしも芸人としてのネームバリューや地位の確立に伴う俳優起用ではない芸人たちが、現在のドラマ界を盛り上げているのだ。



■冴えない“普通の人”を演じるには芸人がマスト? ドラマの反響からCM起用につながるケースも



 芸人といえば、誇張したひとクセあるキャラクターをネタで演じることが多いが、今年はドラマ『半沢直樹』(TBS系)にアンジャッシュ・児嶋一哉、東京03の角田晃広、『この恋あたためますか』(同局系)の東京03・飯塚悟志と、イケメンでなもく、どこにでもいそうな“普通のおじさん感”溢れる芸人が今年は活躍を見せた。



 昨年から俳優としての活動が急増している、ずんの飯尾もその1人だ。今年はドラマ『私の家政夫ナギサさん』(同局系)にレギュラー出演、『MIU404』(同局系)第8話、映画も『スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼』、声優としても劇場アニメ『映画 えんとつの町のプペル』と話題作に次々と出演。その影響もあってか、CMへも多数起用され、明治『TANPACT「TANPACTな夫婦」編』では、田中みな実の夫を演じるまでに至った。



 ドラマで注目されると同時に、CMへの起用も増える。消費されがちなブレイク芸人とは異なる流れをそこには感じさせる。特に飯尾は“ぺっこり45度”などのフレーズが示すように、昨今の“誰も傷つけない笑い”の先駆者的存在とも言える。その穏やかな人柄で、どこの撮影現場での一服の清涼剤として、機能している様子もうかがえる。演者としての力量はもちろん、やはり長丁場の撮影が続くドラマだけに、芸人が現場に1人いる効果は大きいはずだ。



■第7世代も名演技で注目 芸人俳優は番宣バラエティでも本領発揮



 中堅芸人だけではなく、ブレイク中のお笑い第7世代もヒットドラマで活躍。ランキングでTOP3入りしたハナコ・岡部は、ドラマ『私の家政夫ナギサさん』(TBS系)、NHK連続テレビ小説『エール』に出演し、登場シーンも多く視聴者からも好評を得た。



 『エール』では主人公・古山裕一(窪田正孝)に弟子入りする田ノ上五郎を演じた。岡部の起用に同作の制作統括・土屋勝裕氏は「純朴な地方の青年という五郎役にふさわしいキャストを探していた時に、岡部大さんにお会いして、弟子入りしたいと願う場面を試しに演じて頂いたのですが、顔を真っ赤にしながら涙を浮かべての迫真の演技に演出陣も納得、その場で出演をオファーしました」と説明。「エールに新たな風を吹き込んで頂けると思います」と化学反応を起こしてくれる期待値を込めてのキャスティングだったと明かしている。



 また、『テセウスの船』(TBS系)出演の霜降り明星のせいやは、終盤のキーパーソンとして注目の的に。同じく霜降り明星の粗品は月9『絶対零度~未然犯罪潜入捜査~』(フジテレビ系)で怪演ぶりが耳目を集めた。



 このように、異業種からの起用は作品に新たなスパイスを加えるという意味においては、確立されたと言える。加えて、ブレイク中であれば話題性やフレッシュ感も担保でき、中堅どころであれば、芸人としての“色物感(大物であるというフィルター)”がないという、制作側の思惑も見え隠れする。



 そして、役柄が話題となれば、バラエティ等で出演や劇中のセリフがイジられるなど、フリとして使われ、芸人としてもシナジー効果が見受けられる。ひな壇で芸人の枠が苛烈きわめる中、ドラマの番宣として登場する可能性も広がる。俳優にシフトするのではなく、きちんと芸人が本分としつつ活動し、作品の枠を超えても、芸人の本領を発揮しうまく作品をアピールしてくれれば、制作側のメリットにもなる。



 お笑いの注目が集まっている今だからこそ、“芸人俳優”たちの活躍は来年以降もさらに需要が高まることが予想される。暗い話題が先行しがちな昨今だが、笑いのみならず、エンタメ界全体を明るく導くためにも“芸人俳優”の活躍は必須と言えるだろう。
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