文化庁芸術祭賞発表、ドラマ部門大賞は松田龍平主演『ストレンジャー』

文化庁芸術祭賞発表、ドラマ部門大賞は松田龍平主演『ストレンジャー』

 優れた芸術作品に贈られる文化庁芸術祭の受賞作品が25日に発表され、テレビ・ドラマ部門でNHKのスペシャルドラマ『ストレンジャー~上海の芥川龍之介~』(2019年12月30日放送)が大賞に選ばれた。



【写真】優秀賞の3作品のビジュアル



 同ドラマは、およそ100年前の中国の姿を、新聞社の特派員として訪れた芥川龍之介の視点から描いたフィクション。芥川龍之介役を松田龍平が演じた。演出、8K技術をもって厚みのある頽廃美(たいはいび=デカダンス)を表現した映像、芥川の紀行文をもとに洒脱な断章の物語を構想した渡辺あや氏の脚本、飄々と芥川を演じる松田の演技などが高度な調和を果たしたと評価された。



 テレビ・ドラマ部門では、CBCテレビの『スナイパー時村正義の働き方改革』(20年3月12日・19日・26日)、カンテレ(関西テレビ)の『U-NEXT presents あと3回、君に会える』(20年3月31日放送)、NHKの『完本怪談牡丹燈籠』(2019年12月7日〈因の巻〉・14日〈果の巻〉)が優秀賞を受賞。



 『スナイパー時村正義の働き方改革』は、日本そして世界の平和を守るスナイパーが働き方改革を実行する過程で「仕事」とは何か?を知っていくハードボイルドなヒューマンコメディ。ワンシチュエーションで、登場人物はスナイパーの時村正義役の高杉亘と、彼に働き方改革を告げる情報機関の人事部若手職員・早川カオリ役の高田夏帆、2人だけ。人影や音、タブレットの中でだけ外の世界を匂わせるという演出を行い、世界平和にかかわる大規模なテロ事件を解決していながら、本当の事件は「社内」で起こっているというメッセージを表現。「巨大な予算と人を投入した大アクション場面を視聴者に想像させる脚本・演出の知恵と腕」が評価された。



 『あと3回、君に会える』は、山本美月演じる小さな映像制作会社に勤める主人公・玉木楓と、眞栄田郷敦演じる謎めいた男性・征史郎とのラブストーリーで、イケメンシェフで有名なキッチンカーの短期バイトとして働く征史郎と、シェフの密着取材中に出会った楓が、「大切な人との時間の尊さ」というテーマを軸に繰り広げていく、淡く切ない恋愛物語。4人組ピアノポップバンド・Official髭男dismの主題歌「最後の恋煩い」が2人のラブストーリーを盛り上げ、ドラマファンだけでなく音楽ファンからも高い支持を受けた。



 「ふだん意識せずに過ごしていても、家族や知人との別れは突然訪れることがある。もし、一生涯にあと何回会えると前もってわかっていれば、その人との時間をどのように過ごすか。会える回数が背中に浮かび上がるとの設定はSF的だが、登場人物の心情変化を丁寧に描くことで、人と人の出会いの意味を考えさせられるドラマだった」と評された。



 カンテレと動画配信サービス「U-NEXT」がタッグを組んで制作し、ヒロイン・楓目線の物語であるドラマの放送直後に、征史郎目線で描かれたもう一つのドラマ

『U-NEXT presents 君と会えた10(じゅう)+(と)3回(さんかい)』がU-NEXTで独占配信され、地上波×配信の組み合わせで、ひとつの物語を、視点を切り替えて描くことによって、ストーリーをより立体的にとらえることができる取り組みも行われた。



 『完本怪談牡丹燈籠』は、恋焦がれて死んだ美貌の娘の幽霊が、カラン、コロンと下駄の音を響かせ、夜ごと愛しい男を訪ねる、という幻想的なシーンが有名な『怪談 牡丹燈籠』。初代三遊亭圓朝による全二十二段におよぶ壮大な原作は、20年にわたる壮絶な仇討、因果応報の物語で、「幽霊より人間が怖い」と感じさせる長編愛憎劇の全編映像化に初めて挑んだ。時代劇ファンをもうならせる本格チャンバラも随所に取り込んだ和製ホラーの決定版。



 「三遊亭圓朝が作り上げた陰鬱な世界が見事に映像化された。神田松之丞(現在は伯山)の語りで見る人を一気に引き込み、愛憎と欲望に満ちた人間の業をまざまざと見せつける。VFXなどの映像技術、音楽、音響も怪談の再現に効果を上げ、全体的な完成度が非常に高い。上質なドラマならではの充足感を与えてくれる秀作である」と評価された。



 今年度の文化庁芸術祭はテレビやラジオ、演劇など8つの部門で253の作品や公演の応募があり、審査が行われた。
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