なぜオードリーは輝き続けるのか? 『オドぜひ』『あちこち』での“引き出す力”と主戦場の“ラジオ”

なぜオードリーは輝き続けるのか? 『オドぜひ』『あちこち』での“引き出す力”と主戦場の“ラジオ”

 結成20周年という節目の年にふさわしく、2020年のオードリーはまさに“第2の黄金期”を感じさせる活躍ぶりとなった。コンビ・ピンそろって、レギュラー番組でもゲストでも出演が相次ぎ、『2020テレビ番組出演本数ランキング』では、若林正恭が4位(496本)&春日俊彰が7位(433本)とコンビそろってベスト10入りを達成。その人気の秘密はどこにあるのか。冠番組の中から、2人の自由な空気感が好評な中京テレビ『オードリーさん、ぜひ会ってほしい人がいるんです。』(通称:オドぜひ 毎週月曜 深0:59 日本テレビでは毎週木曜 深1:29)と、テレビ東京『あちこちオードリー』(毎週火曜 深1:35)を通して、魅力を探っていく。



【写真】『2020テレビ番組出演本数ランキング』コンビそろってトップ10入り



■ぺこぱ、TAIGAなど独自企画が光る『オドぜひ』 プロデューサーのオードリー評は「粋な芸人」



 オードリーと中京テレビの磯貝初奈アナが出演する『オドぜひ』は、オードリーに会いたい人、会わせたい人がクチコミを応募し、オードリーとトークをするという「おそらく視聴者がテレビに出るハードルが一番低いバラエティー番組」。スタッフはたった数文字の「自薦・他薦のクチコミ情報」をきっかけにしてオードリーに会わせる素人=“ぜひらー”を選んでいく。オードリーが面白いと思えばトークが続き、ギブアップだと思うと退場口へと誘導するという「オードリー×素人」ならではの予測不能なトークが展開される。名古屋地区で2012年から放送されてきたが、昨年4月から中京テレビに加えて、全国29局(日本テレビ系28局+TOS)での放送をスタートし、同年12月には番組公式YouTubeチャンネルにおいて、チャンネル登録者数10万人を突破、「YouTubeクリエイター表彰プログラム」のシルバークリエイターアワードを受賞した。



 2人が“活動のベース”と公言するラジオ『オードリーのオールナイトニッポン(ANN)』の雰囲気にも近いものが堪能できる『オドぜひ』への注目は高く、今年4月17日発売の雑誌『クイック・ジャパン149』の第2特集としてフィーチャーされた。コロナ禍で以前の映像を特集する放送も行われたが、初代アシスタントの市野瀬瞳が緊急参戦し、若林大好きぜひらー、春日が仲間内で使う「春日語」に魅了された大学生ぜひらーを回顧する企画を実施。さらに、『M-1』出場に悩むぺこぱが相談しにきたり、オードリーが若手時代からお世話になっている先輩芸人のTAIGA企画など、『オドぜひ』ならではの視点が光る内容となった。



 演出・プロデューサーを務める富田恭彦氏は『オドぜひ』について「ぜひらーのネタは『こんなことをテレビでやるな!』と言われるようなもので、起承転結の『転』と『結』に、無限の選択の余地がありますよということを、オードリーに感じてもらえるようなものがふさわしいと思っています。演出面で心がけていることが透けて見えないようにというのも気をつけています。ガードも下がり切っていますので、オードリーさん思い切って撃ってくださいというスキだらけの番組作りを心がけています」と語る。



 番組を通して感じるオードリーの魅力については「あくまで個人的な印象ですが、『粋』な芸人だと思っています。苦労してきた分、達観しているところもあり、素直じゃないところもほほえましく感じます」と分析し、2人に次のような言葉を贈る。「ダメな人間、弱い人間、レールから外れてしまった人間、世間の端っこを歩く人間、いつまでもそんな人たちのことを、愛をもってイジリ続けてください」。



■今のオードリーだから面白い『あちこち』 ゲスト選定は「若林くんの質問が湧き出てくるような人」



 一方の『あちこちオードリー』は、春日が店の大将、若林がその店の常連客となり、いま注目の芸能人をゲストに迎えて、本音で語り合うトーク番組。春日と若林の自然体のトーク、そしてリラックスしたスタジオの雰囲気で、ゲストが本音を“うっかり”漏らしてしまうところも番組の魅力だ。今年10月、パンサーの向井慧をゲストに迎えてオンラインイベント『祝!あちこちオードリー開店1周年パーティー~春日の店、今夜は完全予約制ですよ!~』を行ったところ、アーカイブを含めると4万2千人以上が視聴するほどの大盛況となった。この番組も“ラジオっぽさ”を感じさせる内容だが、オンラインイベントにあたってインタビューを行った際、2人はこのように語っていた。



【春日】少人数ということで、形はラジオに似ていますね。ゲストが来ても私がノビノビできるギリギリの最大人数ですから。私は6人以上だと厳しいので(笑)。ゲストの方もボケようと思ってないから、自分も“ツッコミ役”になろうという意識はなくて、トークの流れで変な発言にはツッコミを入れるし、しょうもない話には「しょうもねえなぁ!」って言っているだけです。



【若林】台本がないし、事前に何も決まってないし、話が盛り上がると用意していたフリップを出さないこともよくあるので、改めて考えるとラジオに近いなって思います。逆に「なぜカメラがあるのか?」っていうくらい(笑)。



 さらに、若林が自身の芸能界における立ち位置を、野球のポジションと打順を例えにして“守備はうまくて当たり前で、守備のうまさは褒められないが、ひとたびエラーすると叩かれてしまう”という意味で、「7番セカンド」だと表現。これがフジテレビ系『ワイドナショー』でも取り上げられた。豪華ゲスト、オードリーの仕事論が聞ける番組としても好評を博している。



 番組を手がける佐久間宣行氏は、演出のポイントについて「若林くんとよく会話して、彼からいろんな質問が湧き出てくるような人って誰かなーと考えることです」と明かす。「キャスティングの時点で演出はもう終わっているようなものなので、ギリギリまで、この人は1組のほうがいいかなーとか、真逆の人組み合わせたほうがいいかなーとか悩みます。収録の時は、カメラ横の一番近い場所で楽しむだけです(笑)」。



 オンラインイベントについては「放送尺の30分って本当にあっという間なんですよね。なので、お金を払って来ていただける熱い熱量のあるお客さんたちの前で、120分近くトークするのはとても良かったと思います。反響もすごかったです」と振り返る。早くも次を期待する声もあるが「連発するつもりはありませんが、また通常回で熱を持った流れができたら開催したいと思っています」としながら、オードリーに「この番組は『今のオードリー』がやるから面白い番組だと思っています。なので、2人がこの番組を楽しんでもらえているのが伝わってくるのが一番うれしいです。そのためにスタッフも頑張ります!」とのメッセージを寄せた。



■深夜に花開くオードリーの魅力 絶好調『ANN』はリスナー層に変化も



 オードリーが“ホスト”としてゲストを迎えてトークを繰り広げる『オドぜひ』と『あちこち』。コンビでインタビューに応じる際、普段は若林が率先して話す印象があったが、『あちこち』でのインタビューでは、春日のコメントも多く、番組を楽しんでいる様子が伝わってきた。それは『オドぜひ』においても同様で、富田氏の言葉を借りれば個性的な“ぜひらー”に対して、2人が「愛をもってイジリ続ける」ことで魅力を引き出していき、ボケに回った若林に春日がツッコミを入れるなど、ゴールデンのバラエティー番組では見られない姿がそこにはある。



 結成20周年を迎えてキャリアは若手から中堅となり、テレビでは引っ張りだこ、ラジオでも多くのコアなファンに支えられているオードリー。エッセイ本も評価も高く、作家としての飛躍も期待される若林だが、実はライブにも力を入れている。実際、今年10月にはネタライブ、11月には大喜利ライブを開催。コロナの影響がなければ、もっと大規模なライブを開催していたかもしれない。



 若林がライブへの意欲を高める大きな要因は、2019年に3月に開催した『オードリーのオールナイトニッポン 10周年全国ツアー in 日本武道館』だろう。360度が観客席となった会場には1万2000人、そして全国41の映画館で行われた生中継「ライブビューイング」に1万人のファンが駆けつけ、一日限りの有料イベントとしては“芸人史上最大規模”の観客を集めた。内容も3時間以上にわたって爆笑の連続で、番組リスナーの高田文夫氏も「しゃべりだけで3時間半ずっと笑っていて、すごかったよ。最後の漫才のネタも完璧にできていた。俺は10年間ファンで良かったよ!」と最大級の賛辞を送った。



 2人にとって大きな“ホーム”である『ANN』は今年も絶好調。10月19日から25日に行われた『ビデオリサーチ首都圏ラジオ聴取率調査』は0.7%で、2016年2月度調査以来、28回連続で単独首位を獲得(※19年10月調査は台風特番のため含まず)。多くのリスナーの心をつかんでいる要因について、同局コンテンツプロデュースルーム所属のプロデューサー・冨山雄一氏は「オードリーさんのフリートークに尽きると思います。『ANN』は、番組それぞれにトークから始まったり曲を流したり、番組ごとにスタイルがあるのですが、オードリーさんの番組は、25時台はタイトルコールをしてから45分以上、オープニングトークを話しっぱなしです。このスタイルはオードリーさんだけです。本当に面白いです」と分析する。



 直前に放送されている『SixTONESのオールナイトニッポン(ANN)サタデースペシャル』、直後の『ANN0』など、前後の番組との関係も深まった1年となったが、冨山氏も「ここ数年、芸能人の方でリトルトゥース(リスナーの愛称)と言ってくださる人がものすごく増えたような気がします。もちろん朝井リョウさんやDJ松永さんなど、これまでもいらっしゃいましたが、SixTONESのメンバー、日向坂46のメンバーなど、一気に若くなった印象はあります(笑)。そういった方々は『ANN』のことをよく知ってくださっているので、ラジオをやる時に非常に飲み込みが早いような気がします。この1年で、佐藤栞里さんや高橋ひかる(※高ははしごだか)さんといったリトルトゥースが、オードリーさんの後ANN0を担当いただいたのも、オードリーさんのご縁あってだと思います」と感謝を伝えた。



 活躍し続けているオードリーが、2021年はどんな輝きを見せてくれるのか。コロナが1日も早く収束し、若林が理想とするライブを楽しめる日が来るのを待ちながら、冨山氏が「40代になったお2人がどんなトークを展開していくか、ひとりのリトルトゥースとして引き続き楽しみにしています!」と言葉にしている通り、これからも「膝に爆弾を抱える若林」と「住所を言わなくなった春日」のトークを引き続き楽しみたい。
カテゴリ